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岩山田と鈴木は、林家を後にした。ドアを閉めるなり「何かありそうですね」と、鈴木が目を細めたまま静かに言う。
「ああ。名前は本当に知らないという顔をしていたが、写真を見せたときの反応は明らかに違った。名前は知らないが、顔だけ知っているとは、どんな場面だ?」
「やはり、藤田が強盗をしたときに、遭遇した……」
「そうだな。それが一番大きそうだな」
「強盗犯の名前なんていちいち聞きませんし、それでも顔を覚えているほどのインパクト。やはり藤田と林家の間には、十年前に何かありそうですね」
「そうだな」
帰り際、林家の庭にある無数の花々が、岩山田の目にやけに鮮やかにうつった。
「それにしてもすごい花だな」
「そうですね。ひまわりもでかいし、庭いじりが好きなんですかね」
「そうだとしても、普通花壇を作らないか? こんなに庭一面に花がびっちりというのは、あまり見たことがない」
「まあ、たしかにそうっすね」
うーん……岩山田は顎を撫でながら歩き出す。
庭に一面の花。何かを隠すかのような一面の花……
行方不明になっていて最近死んだ、強盗犯の藤田まもる。横浜と八王子で別人のようになった林克之。悲しそうな顔をした息子の行斗。克之から暴力を受けていた喜美子と行斗。
喜美子と行斗が十年前、強盗犯の藤田まもると出会っていたとしたら……。
岩山田の頭の中で、一つの仮説が導き出された。
まさか……そんなことが?
「まさかな」
岩山田は、自分が行きついた答えが突飛で、納得はいかなかった。でも、辻褄はあう気がした。
「なあ、敬二。ちょっと思いついたことがあるんだが、聞いてくれるか?」
「あ、はい」
岩山田は、自分が導き出した答えを、鈴木に聞かせた。
翌日。
「出ました! こっちです!」
鑑識の一人が大きな声を出し、岩山田と鈴木は駆け寄った。
「あった……」
「岩山田さんの考え、当たってましたね……」
まさか、という口調で鈴木が言う。岩山田の仮説を聞かされたとき、鈴木は本当に「まさか」と思った。しかし、今現在、こうして眺めてみると、これが現実であり、辿り着いた答えだったのだと信じるしかなかった。
林家の花いっぱいの庭から、白骨化した男性の遺体が掘り起こされたのだ。
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