第25話

「ほら、行くよ」

「ちょっと待って。まだ食べてるから」

「あわてて食べるとのどにつまるよー」

 パンを慌てて口に詰めこむ姿を、ひとりは呆れて、もうひとりは笑顔で見ている。

「んぐ、んぐ。ぷはー。食べたよ」

「まったく、アンタはいつもいつも……」

「今日も元気にがんばりましょー」

 三人はまだ少女と呼べる若さだ。彼女たちは革の胸当てをつけ、剣と槍に盾といった武具を持っていた。

 彼女たちだけではなく、まわりの人間たちも鎧や武器を持っていた。全員が同じ方向へ向けて歩いている。

「今日は稼げるといいねー」

「美味しいもの食べたいな」

「さっき食べたばっかりでしょ」

 雑談しながら歩いていくと、巨大な石造りの砦へたどり着く。多くの人々がその中へ入っていく。少女たちも巨大な門を潜り中へ向かう。

 砦のなかは広い空間だった。太い石の柱が何本も立つなかに、多くの武装した人間の姿があった。

 三人は人が並んでいる最後尾に向かう。五列の並びのなかで、早そうだと思った所の最後尾へ並ぶ。

「もう。遅くなったから、けっこう並んでるじゃない」

「ごめんごめん」

「イライラしないでー」

 しばらくすると彼女たちの番となった。

 そこは横に長い木製のカウンターだった。そこに何人もの人間が立っている。その一人が彼女たちを見る。若い女性だ。

「パーティーとリーダーの名前を教えてください」

「パーティーはトライアングルで、リーダーはカルラです」

「はい。パーティーの人数は?」

「三人です」

 カウンターに小さな金属製の板が三枚置かれた。穴があって長い紐が通されている。それを少女たちは首にかける。

「通行証を無くさないようにしてください」

 少女たちが次に向かったのは、砦を抜けた先だ。そこは岩山が巨大な壁となっている場所だった。

「行くよ」

 岩山に巨大な穴があった。ただの穴ではなく、石でつくられた門だ。扉はなく、暗闇が見えた。

「通行証を」

 門の前には鎧を着て武器を持った騎士が並んでいた。三人はそれぞれ首から下げた通行証を見せる。

「通ってよし」

 三人の少女は迷うことなく、暗闇に向かって門をくぐる。

「気合い入れていくわよ」

「うん」

「がんばりましょー」

 門の向こうへ数歩進んだだけで、三人の姿は闇のなかに消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソード・オブ・アジュディケイター  剣神の裁定者 山本アヒコ @lostoman916

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ