「幻想種とか会ってみたいよなぁ」「ああ、そうだね」

真っ黒目に森に送られた

と、考えるのが自然だろう

それにしてもあいつ

名前名乗ったら「え、飲み水?」とか言ってきやがってふざけてる。

まあいい、今は状況の整理だ。

今、俺を取り囲んでいるのはうっそうと生い茂る変な匂いをさせてる青空が似合いそうな綺麗な色をさせてる花や草、俺の何十倍もある木だ。

お陰様で太陽なんて少ししか届かないし暗く少し肌寒い。

しかしずっとここで棒立ちという訳にも行かないだろう。

1ヶ月経てば迎えに来るとやつも言っていたので取り敢えずサバイバルをするしかない。

幸い、俺は前世でサバイバルしないといけない状況になってしていた経験もあるし、手元には愛用の剣もある。

自分の足元から胸くらいまでの刀身の剣

とても重くて子供の体にはあっていないように感じるが、父が「男の子はそれくらいできなきゃ」とか言ってきたのでこれを使っている。

多分諦めるとでも思っていたのではないだろうか。

こなくそという気持ちで振り続けていたので今ではこいつ以外考えられないが。

まずは水と食料、そして眠れる場所だ。

食料問題は比較的何とかなった。

その辺に生えてる変な実とか、そこら辺にいる獣を剣で殺して食べたりしていた。

獣どうしの殺し合いに術はいらない。

思い知った瞬間だった。

よく雨も降ってきたので水はまあ死なない程度には飲めたし。

腹壊すけど。

寝るのは、まあ普通に獣とか強いから攻撃が一発でも入ったら体がまだ幼いので死ぬし、浅い眠りで起きたり寝たりを繰り返していた。

しかし、不思議だった。

何故か獣たちは必死になって逃げようとするのだ。

諦めてしまえばいいのに。

確かに詰んでないならその一手をつかみ取ればいいが、詰んでいてもやってくるのだ。

最後まで噛み付こうと、首に剣を当てていても、切れることを恐れず噛み砕こうとしてくる。

そしてある時、追い詰めた獣に最後の最後に噛みつかれそうになり、顔の目の前で剣を大きく開かれた獣の顎の間に挟んでそのまま切った時。

確かに見た。

「生きたい」という炎。

生物ならば誰でも持っている炎が獣の瞳の奥に確かに見た。

魅せられた。

「これか」と得心がいった。

そして同時に、自分は、生物として大事なものを失っているという実感も得られた。

そしてその獣は丸焼きにして食べた。

思い返してみると前世ぶりに食べ物に心から感謝をして食べたような気がする。

まあ、そんな生活を続けて適当に歩きながら続けて、慣れてきた時、全く獣が出ない範囲に出くわした。

試しにそこに何故か人間に好意的な人間を小さくしたみたいな毛だらけの生物をおびき寄せてみたら、そこの範囲には絶対に入らず、何とかして範囲内の果物を取ろうとしてた。

つまり、一目で異常ということが分かる。

何を思ったのか俺はその奥に進んでしまった。

いや本当になんでなのか分からないのだが

多分眠たすぎて、獣が入ってこないなら眠れるのでは?とか考えていたんだと思う。

そして気になっていたのだろう。

そちらの方向が太陽で照らされているように薄く光っていることに。

そうして進んでいくと、いつの間にか木が消え、太陽に光に久しぶりに晒された俺は眩しくて目を閉じた。

そして開くと、そこには石でてきた壁と、奥に続いている洞窟があった。

この状況で、その洞窟に入るなという方が難しいと思う。

空気が澄んでいる。

1歩目の感想がそれだ。

そして奥に進むにつれ、足音が響くようになり、空気は重く、いや威厳か?まあなんというか、空気が深くなり、どんどん暗くなって言った。

木を取りに行き、火をつけもう一度進む。

そうして洞窟の中に、大きなドーム型の広場を見つけた。

いかんせん暗いので進むのを躊躇った瞬間、奥から音がした。

明らかに人では無い。

なにか大きなものを引きずる音。

鉄のようなものが擦れる音。

なにか大きなものが起き上がる音。

何かを広げる音。

自発的に薄く黄金にひかり、

宝石のような鱗

と大きい瞳と縦に開かれた瞳孔

紛れもない。

特徴的に確実に龍だ

竜ではなく龍

ワイバーンではなくドラゴン

紛れもない幻想種、おとぎ話でしか語られない存在がそこにはいた。

蛇をそのまま大きくしたヤツらではなく

四足歩行のおとぎ話に出てくるようなヤツら。

選ばれし者の前に現れ、そして時には知恵を、時には力を、そして時には厄災をもたらす存在。

しかし同時に、違和感。

感じない。

この生物から、炎を感じない。

「して」

と、空気揺らして響いてくる凛とした意思。

「ここに何の用だ、下等生物」

は?なんだこいつ人間様舐めやがって

俺が戦ってきた獣たちとあいつをバカにするような発言についカチンときて、勢いよく返答した。

「ァ、、アノ、、エトォ」

したはずだった。

いや俺よ。

確かに声を出す機会も人と話す機会もなかったし、目の前にいるのが憧れの存在だとしてもそれは無いだろう。


そうして俺の不思議な経験のご本龍との初対面は終わったし終わった。



運命は狂い出す。

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昨日のことを消した先 黄色いハンカチと赤い薔薇 @adjmtw

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