第116話
「くっ……今の状態ではわたしは勝てないのか……」
という国王。
国王は悔しそうな顔をしていた。
国王はどうやったらオレに勝てるのか、それだけを考えているようだ。
どうやったら勝てるのか。
どうやったらオレに勝てるのか。
そしてなにかを思いついたのか、やがてにやあとにやけた顔をするのは国王。
国王は何かいいアイデアでも思いついたのだろうか。
オレは余裕の顔をして、言った。
「なんだよ、国王……何かオレに勝ついい方法でも思いついたのか?」
オレは余裕の顔をしている。
にやあと笑っているのは国王。
「そうだ。異世界召喚者を一人でも捕食すれば、わたしの勝ちだ。サトウ」
国王は突然笑い出した。
「ふはははは、ふはははははははっ。これでわたしの勝ちだっ。サトウ」
という国王。
「や、やめろっ」
国王は異世界召喚者であるリュウノスケを吸収しようとする。
国王の体が何かのエネルギーで包まれたような気がした。
「ふはははははははははっ、これが最強へと進化するということか……あと異世界召喚者は四人。四人の異世界召喚者を食えば、わたしが最強だ。サトウ、お前以上の最強になれるっ。ふははははははははっ」
と笑うのは国王。
「あと四人。あと四人だ」
四人の異世界召喚者である女子高生のミコト、幼女のミコト、アヤノ、ショウヘイを見る国王。
国王は今までとはまるで違うエネルギーへと進化していた。
だがその程度では、俺とまだ同等でしかない。
その程度だったら、俺は今の状態でも十分に敵を倒すことができた。
俺はやはり強くなりすぎてしまっているようだ。
異世界召喚者というものを食えば、強い相手というものを食えば、もっともっと強くなることができるのだろうか。
だがそれは人間をやめるということ。
これ以上人間をやめる必要などあるのだろうか。
もうそんな必要はないのではないだろうか。
もう強さは十分に手に入れたのではないだろうか。
「異世界召喚者の一人を捕食しても、そんなもんか」
俺は成長した国王を吹っ飛ばしていた。
リュウノスケの体を吸収し、強くなったはずの国王は驚いた顔をして、こちらを見る。
「どうやら全員を食わないと、オレより強くなることはできないようだな」
国王はせっかく強くなったというのに、その実力が俺を追い抜いてはいなくて、驚いた顔をしている。
「な……なぜだ……私は異世界召喚者を吸収し、世界最強へと進化したはずなのに……まだ吸収する異世界召喚者が足りなかったということか? 全員の異世界召喚者を捕食しないと、最強にはなれないというのか? なら、残りの四人を食うまでのこと」
「がっかりだよ。国王。俺はもっと強い奴と戦いたかったというのに……お前程度では……俺の相手にはならない。残り四人を捕食させる気もおきない」
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。異世界召喚者を食っても、こんなものかあっ。あと四人の異世界召喚者を食ったら、本当に強くなれるのだろうか」
という国王。
国王はほかの四人の異世界召喚者を捕食しようとするが、オレに邪魔され、とても悔しそうだ。
悔しそうな国王はぶち切れ、言った。
「わかった。なら……わたしごとすべてを破壊する」
「すべてを破壊する?」
にやりと笑うのは国王。
こいつは何を言っているんだろうか。
頭がおかしくなってしまったのだろうか。
すべてを破壊する?
何が目的か。
だが国王は突然、全エネルギーを体に集め始めた。
国王の体からは風が強く吹き出す。
国王のエネルギーにより、大地が揺れ、冒険者たちが風で飛ばされそうになる。
エネルギーの固まりと化した国王の体を見て、オレは思った。
こいつ、全員を道連れにして、死ぬつもりなのだろうか?
それは国王が自爆をするためのエネルギーだろうか。
オレは自分の周辺に魔法障壁を張った。
四角い長方形くらいの魔法障壁を自分の周りにはる。
異世界召喚者が風に吹き飛ばされそうになっている。
だが今更異世界召喚者を吸収するつもりはなくなっているのか、気にしていない司祭。
国王はすべてを破壊するつもりだっ。
自爆をするつもりだっ。
まずいな。
このまま国王が自爆をすれば、どれだけの被害が出るのかわからないぞ。
大地が吹き飛ぶ可能性があるし、山が吹き飛ばされる可能性がある。
こいつ、まさか自分の国ごと滅ぼす気なのか?
自分が生き残るために、自分の国を吹き飛ばすつもりなのか?
自分は体の一部さえあれば、自分の体を再生できるとそう思っているのか?
大賢者、国王を止める方法はあるか?
オレは大賢者にそう聞いた。
イエス。
という大賢者。
大賢者は言った。
魔王であるアークスライムだけがここから国王のことを止める手段を持っています。
その方法とは、国王が使うことができる捕食に似たスキルです。
それは吸収というスキルです。
吸収か。
俺も国王の肉を食ったら、捕食だとか、吸収というスキルを手に入れることができるのだろうか。
すでに世界最強の力を手に入れているこの俺が、もっと強くなる必要があるのかは、すでにそれは疑問ではあるのだが。
アークスライムか。
オレは異世界召喚者と戦闘をしていたはずの、アークスライムがアイテムボックスの中にいるかを確認した。
いたっ。
もう異世界召喚者との戦闘は終わっていたからだろうか。
そこにはアークスライムが入っている。
こいつはアイテムボックスの中に入り、ゲームでもしていたのだろう。
アークスライムはアイテムボックスの中が好きな魔王なのだ。
アイテムボックスの中で四六時中ゲームをやっているスライムなのだ。
大賢者は言った。
オレはアイテムボックスの中にいるアークスライムに声をかける。
「おい、アークスライム。アイテムボックスから出てこい」
というオレ。
「きゅううううう」
アークスライムはどうせアイテムボックスの中でゲームをしているのだろう。
魔王であるアークスライムがアイテムボックスからぽよんという音がして出てきた。
国王はアークスライムが出てきた瞬間、
「え?」
と信じられないものが出てきた目をして、つぶやいた。
国王は目の前にいるアークスライムを見た瞬間、そんな言葉を発していた。
目を丸くしているのは国王。
「なんでここに魔王がいる。魔王は確かにダンジョンの奥に封印されていたはず……!」
アークスライムが出現した瞬間、国王はアークスライムに対しておびえ震えている。
オレは言った。
「ああ。こいつは魔王だったのか。オレは魔王を、ダンジョンの奥底から救い出したんだよ。ダンジョンの奥に封印されているこいつを、そこから助け出したんだ」
「なんてことをしてくれたのだっ……サトウよ。お前は魔王を救い出し、これから何をする気だ。戦争でも起こすつもりなのかっ」
という国王。
「戦争? 俺にそんなつもりはない。俺はただ、最強の力を手に入れたいだけだ。少しでも強い仲間を仲間にしただけだ」
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。今の私では魔王を倒すことはできない。自爆……自爆したところで……同じ再生能力を持つ魔王を倒すことなど……なら、ほかのものだけでも吹き飛ばすか……」
国王はどうすればいいのかわからなくなっている。
「異世界召喚者を捕食しようにも、サトウに邪魔され……どうすればいい、どうすればいい」
さっきまで自爆するためのエネルギーを集めていたのに、どうすればいいのかわからなくなり、ただその場に立ち止まってエネルギーをためている国王。
アークスライムは国王に向かっていく。
「来るなあ。来るなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と叫ぶのは国王。
オレは言った。
「国王、お前、今までさんざん人間を捕食してきたんだろう? 自分よりも優秀な人間を何人も捕食してきたんだろう? だったら、国王、お前が捕食される立場になったということくらい、わかるよな? それともまさか国王、お前は自分だけは最強だから、捕食されない立場だとでも思っていたのか? まさかそんなわけないよなあ?」
というオレ。
「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ、やめてくれええええええええええええええええええええええ」
という国王。
オレはアークスライムにいった。
「やれ、アークスライム」
アークスライムはスキルを発動する。
「スキル、吸収」
「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
と叫ぶ国王。
アークスライムはスキル吸収を使い、国王を食らう。
国王はアークスライムに吸収されて、消失する。
「!」
「!」
「!」
「!」
「!」
「終わった……の?」
「オレたちは……かったのか?」
異世界召喚者たちがその戦闘に勝利したことを、まだ信じられない顔をして見つめている。
だが俺は思った。
そう。
オレたちは勝ったのだ。
オレたちは国王を倒したのだ、と。
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