第115話

 国王は言った。

「わたしは何十年というときをかけても、大賢者というユニークスキルだけは取得できなかったというのに。あのユニークスキルである大賢者をよくも取得できたものだな」

「大賢者スキルは、運が良ければ取得できないこともないだろう。まあその取得の仕方の詳しい方法までお前に教えてやるつもりはないがな」

「それはそうだな。大賢者というユニークスキルを取り方を、ほかのものに教えるわけはないか」

 国王は言った。

「わたしはお前を捕食し、大賢者のスキルを手に入れるっ。わたしが求めていたユニークスキルは大賢者だっ」

 という国王。

「そうか。だが国王、お前はオレには勝てない。お前は大賢者スキルをオレとは違って、持っていないんだからな」

「それはどうかな」

 という国王。

 そんな国王にオレは言った。

「こい、国王。実力の差を見せてやるっ」

「ほざけっ。今まで無能だった奴が、そんなきゅうに有能になるわけが……」

 国王は笑った。

 そして国王は魔法の詠唱を始めた。

 それは火の魔法の詠唱。

「ファイアーボール」

 国王は火の魔法を使ってくる。

 オレはその火の魔法をファイアーボールを、右手を使って、どこかに飛ばす。

 吹き飛ばされたファイアーボールによって、山が吹き飛んだ。

 オレは自分の右手の人差し指に魔法のエネルギーを集中させて、魔法を使った。

「ファイアーボール」

 それは火の魔法だった。

 小さいが威力は高いファイアーボールが、国王の右腕を貫く。

「ぐぎゃあああああああああ」

 悲鳴を上げるのは国王。

 国王の右腕には穴があいている。

「ファイアーボールっ」

 国王の左腕を貫く。

 国王の左腕には穴が開く。

「ぐぎゃあああああああああああああ」

「ファイアーボール」

 国王の右足を貫く。

 国王の右足には穴が開く。

「ぐぎゃああああああああああああああ」

「ファイアーボール」

 国王の左足を貫く。

 国王の左足には穴が開く。

「ぐぎゃあああああああああああああああ」

 と、悲鳴を上げるのは国王。

「はあはあはあ……」

 国王はヒットポイントが減少し、息を切らしている。

「国王、お前は弱すぎるなっ。お前の実力はこんなものか。そんなお前の下で働いていた時期があったとはな……俺も人を見る目がなかったようだな」

「わたしの実力はこんなものではない。サトウ、それはお前にもすぐにわかる」

 という国王。

 国王はそういうが、国王は魔物の再生スキルを使っても、その傷の戻りは遅かった。

 国王は言った。

「異世界召喚者をすべて捕食していないこの体では、まだ勝てないか。なら、すべての異世界召喚者を捕食すれば、お前にだって勝てるはずだ」

 国王ははあはあと息を乱したあと、

「サトウ、だから少しだけ待ってくれ」

「少しだけ、とは?」

「今のわたしではお前には勝てない。だから少しだけ待ってくれ。わたしが最強へと進化するのを少しだけ待っていてくれ。わたしは今から異世界召喚者たちを捕食し、最強へと進化する。わたしは異世界召喚者を捕食すれば、お前よりも強くなれるはずだっ。最強の男へと進化することができるはずだっ」

 という国王。

 この国王は最強へと進化したいのだろうか。

 そんなにも最強へと進化したいのだろうか。

 オレに勝ちたいのだろうか。

「私はミコトを捕食する。そして最強へと進化してみせる」

 司祭は異世界召喚者である女子高生のミコトを見ている。

 異世界召喚者であるアヤノのことを見ている。

 どうやら国王はこの二人のことを食って、最強へと進化したいらしい。

 ほかの三人のことも見ている国王。

「サトウよ、お前も、最強へと進化したわたしと戦いたいのだろう? 魔物の肉を食べ、最強へと進化したお前ならばわかるはずだ。このわたしの気持ちがっ」

 という国王。

 女子高生のミコトは言った。

「おっさん、だめよ。国王にわたしたちを捕食させるなんて絶対にだめだよ。そんなことをしたら、取り返しがつかないよっ」

 という女子高生のミコト。

「そうだよっ、おっさん。早くそいつを倒してっ。今がチャンスっ」

 というアヤノ。

 どうやら捕食する側と、捕食される側が、オレのことを必死に説得しているようだ。

 まあ最強に進化した国王と戦いたいか戦いたくないかと聞かれれば、オレはまあ最強へと進化した国王と戦いたいのだが。

 大賢者、どっちがいいと思う?

 と大賢者に聞くことにした。

 まあたいていのことは大賢者さんに聞いておけばいいのだ。

 大賢者は言った。

 主様、国王を最強へと進化させてはいけません。

 国王は主様以上の力を手に入れてしまう可能性があります。

 国王を最強へと進化はさせないほうがいいでしょう。

 なるほど。

 まあゲームとかでもそういう展開はあるし、わざわざ国王を最強へと進化させる必要はないか。

 なんだか女子高生のミコトとアヤノが必死にオレのことを説得しているし、まあそれでもいいだろう。

「国王、そんなにも最強へと進化したいのか?」

「もちろんだっ」

 国王は最強へと進化できると思って、にやあと笑っている。 

 そして女子高生のミコトとアヤノのことを捕食できると思って、彼女たちのことを見ている。

 彼女たちはオレが裏切るだろうと思ったのか、冷や汗をかいていた。

 青い顔をしていた。 

 司祭は一瞬で女子高生のミコト、そしてアヤノのところへと向かった。

 だがオレもまた一瞬で彼女たちの前へと立つ。

 彼女たちは今度こそは捕食されると思ったのか、目をぎゅっと閉じていた。

 いや、戦闘中に目を閉じる奴があるか。

 ちゃんと防御の姿勢を取らないとダメだろう。

 オレは左手で国王のことを吹き飛ばす。

 国王は向こうへと吹き飛んでいた。

 国王は吹き飛ばされるときに、大地を破壊していく。

 国王は口から血を流し、言った。

「頼む。私は最強へと進化したいのだ。そこの異世界召喚者たちを捕食し、そして次にサトウ、お前を捕食したいのだっ」

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