第114話

「おっさん」

「おっさん」

「おっさん」

「おっさん」

「おじさん」

「サトウ……」

 異世界召喚者、そして国王がみんな俺の名前を呼んでいる。

 みんなが困った顔をして、俺の顔を見つめている。

 なんでかはわからないが、国王と異世界召喚者が戦っている。

 こいつらは味方ではなかったのだろうか。

 何かがあって、今は敵同士になっているのだろうか。

 大賢者、どうなっている。

 イエス、主様、今、異世界召喚者とあの男は戦闘中です。

 戦闘中?

 何が理由かはわからないが、俺はこいつらのことを助けてやりたいと思った。

 敵だったら倒すが、敵でないのなら助けてやる。

 味方ならばオレのこの命をかけて助けてやる。

 異世界召喚者には、このままだと死ぬというような、このままだと国王にやられるというような、そんな弱気な顔はしないでほしかった。

 異世界召喚されたあと、オレはお前らのことが憧れだったのだから。

 まあ勝手にあこがれていただけなんだけどな。

 オレもあんなふうに強かったらと、そんなふうに思っていたときもあったのだからな。

 国王は言った。

「サトウか……わたしはお前のことを待っていたぞ。わたしがほしいのは……この五人のメンバーよりも、お前だっ」

 という国王。

「そうなのか。そんなにもオレの力が欲しいのか」

「わたしはオークディザスターを討伐した、お前の力が欲しい……」

「追放される前だったら、この力を貸してやってもよかったんだけどな。だが今はもうその気はない。俺のことを追放しなければ、一緒にやっていた道もあっただろう」

 というオレ。

「なら、無理やりにでもお前の力を奪い取るまでのことっ。お前のことを手に入れるまでのことっ」

 という国王。

 国王がほしいのはオレの力らしい。

 国王が欲しいのはオレのどの力なのだろうか。

 大魔法使いの力なのか。

 大賢者の力が欲しいのか。

 それとも光魔法の力が欲しいのか。

 それとも魔物の肉を食って手に入れた、この最強の力が欲しいのか。

 それともそのすべてが欲しいのか。

 つうか国王、お前、なんだかゲームみたいなことになってんのな。

 この国王はオレの推測によると、人間ではなく、魔物だったのではないだろうか。

 こいつは国王ではなく、国王に成りすました、魔王の配下だったのではないだろうか。

 ゲームとかでそういうの見たことあるのだ。

 ゲームの設定でそういった設定を見たことあるのだ。

 これってあれだろ。

 魔王の配下が国王のふりをして、国王に成りかわっていたとかいう展開だろう。

 そして本物の国王は、牢屋に閉じ込められているんだ。

 ゲームをプレイ済みのオレにはすべてお見通しだった。

 オレはなんでも知っているのだ。

 ふははははっ。

 と心の中で笑いながら、オレは大賢者に聞く。

 大賢者、こいつって魔物なんだよな?

 実は国王に成りすましていた、魔王の配下なんだよな。

 ゲームとかで言う、魔物が国王に成りかわっていたとかいう展開なんだよな。

 その展開見たことあるっ。

 とオレは大賢者にいった。

 そう。

 そして国王は牢屋に閉じ込められているに違いない。

 そう思ったオレは大賢者にそう聞いたのだ。

 大賢者は答える。

 ノー。

 主様、それは違います。

 主様、目の前にいる男は、魔物ではありません。

 魔王の配下でもありません。

 くそっ。

 間違っていたか。

 オレの予想はどうやら外れだったようだっ。

 ここは絶対にゲームの設定どおりかと思ったのに、違うようだ。

 じゃあ国王ってことか?

 LV97の国王ってなっているし、そうなのだろうか。

 大賢者は言った。

 目の前にいる男は魔物ではありません。

 目の前にいる男は魔王の配下ではありません。

 能力の高い魔物や人間を捕食をすることによって能力を上げた人です。

 ん?

 なんだって?

 国王でもなければ魔王の配下でもないって。

 そしてただの人間だって。

 国王は言った。

「サトウよ、その力を……わたしによこせっ。わたしにはお前の力が必要だっ」

 という国王。

「だまされるな、おっさん。こいつは敵だぞっ。しかもオレたちだけじゃなくて、おっさんのことまで捕食しようとしているっ。信じられるか、味方だと思っていたのに、オレたちのことを食うっていうんだぞ。最低だよ、こいつらは。本当に信じられない奴らだ」

 というリュウノスケ。

 リュウノスケは国王の行動が信じられないようだ。

 リュウノスケよ、そんな必死な顔をしなくても、オレには大賢者さんがついているのだ。

 つまりオレはなんでも知っている。

 大賢者は言った。

 なんでもは知りません。

 知っていることだけです。

 という大賢者さん。

「おっさん、だまされないでっ。こいつは敵よ。わたしたちを捕食する気なのっ。わたしたちを助けて、おっさん。こんな奴にだまされないでっ」

 という女子高生のミコト。

「おっさん、敵はこいつだよっ」

 と、すがるような顔をしてくるアヤノ。

 アヤノがあんな顔をすることもあるんだな。

 そんなに困った状況なのか。

 まあいい。

 オレは目の前にいるこいつを倒せばいいだけだろう。

 もともとそのつもりでここに来たのだ。

 オレは大賢者に聞いた。

 国王の目的を。

 大賢者は言った。

 国王の目的は己が最強へと進化することです。

 国王は異世界召喚者を捕食し、最強の力を手に入れるつもりでした。

 国王は自らの手によって、最強の国を作ろうと思ったからです。

 という大賢者。

 なるほど。

 国王は最強の国を作ろうと思ったのか。

 だがオレがあらわれたせいで、最強の国づくりに失敗し、己自身だけでも最強になろうとそう思っているのか。

 己自身が最強になり、この場を逃れ、またあとからでもいいからと、最強の国づくりをまたしようとそう考えているのか。

 イエス。

 という大賢者。

 オレは国王にいった。

「なるほどな……国王、つまりお前はオレの力を狙っていたってことなのか? そんなにオレの力がほしいのか。国王よ」

「ああ。ほしい」

 という国王。

 オレは言った。

「だがお前にはオレの力はやらん。なぜならお前は、オレのことを城から追放しているからな」

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