第112話

 異世界召喚者であるショウヘイ、アヤノ、幼女のミコト、女子高生のミコトはとぼとぼ大地を歩いていた。

 異世界召喚者たちは国王がいる場所までやってくる。

 そこは城側の陣地である。

 異世界召喚者たちの陣地である。

 そこには干し肉などの食料が置かれていて、テントまである。

 異世界召喚者たちは負けた。

 おっさんに負けた。

 村人に負けた。

 紅蓮の炎に負けた。

 そんなことを考えながら異世界召喚者たちは自分たちの陣地へと戻ってきた。

 そしてそこに待っているのは国王である。

 軍団長である。

 忍者である。

 国王はいった。

「お前たち、あのおっさんがいないようだが……?」

 あのおっさんを連れてくるのには失敗した。

 なんでもあのおっさんを連れてくるために、村人たちの命を奪おうとしていたらしい。

 そこまでするとは、この国王はなんて恐ろしい男なのだろうか。

「すまない。任務に失敗してしまった」

 というのはショウヘイ。

「任務に失敗したのか」

 というのは国王。

 国王はなんだかすっきりとした顔をして、言った。

「よくやった。異世界召喚者たちよ、今までご苦労であった」

 という国王。

 そして国王は何を思ったのだろうか、異世界召喚者たちに攻撃を仕掛けてきた。

 アヤノの足元に魔法陣が出現する。

 その魔法陣から炎が飛び出し、アヤノのことを足元から燃やしつくそうとする国王。

 ショウヘイは叫んだ。

「よけろ、アヤノ」

「!!!」

 アヤノは魔法陣からジャンプをし、魔法陣の炎をよけることに成功した。

 アヤノは国王をにらみつける。

「どういうことよ、国王。あなたはわたしを殺す気なの? わたしたちは同じ魔人族を討伐するという目的を持った、仲間なんじゃないのっ」

「すまない。アヤノよ、役立たずの命はいらないと、息の根をとめるつもりだったが、どうやら失敗したようだ」

 国王は今度は女子高生のミコトに攻撃を仕掛けてくる。

「なんでこんなことをするんですかっ」

 それを魔法障壁を張って防ぐのは、女子高生のミコト。

 国王は静かに言った。

「なんでこんなことをするのかっ。それはすぐにわかるっ」

 国王はそういって、隣にいる軍団長の首をつかんだ。

 軍団長の体を持ち上げる国王。

「軍団長、今までごくろうであった。軍団長はわたしの一部となり、わたしの中でこれから生きていくのだ。最強へと進化するために必要なこと。スキル、捕食」

 国王は軍団長をスキル捕食で食らった。

 軍団長の姿はなくなった。

 軍団長は死んだ。

 軍団長は国王に捕食された。

「!」

「!」

「!」

「!」

「!」

 忍者はそれを見て、その瞬間に撤退する。

 国王は言った。

 だが忍者が逃げても気にしない国王。

 国王にとっては忍者よりも、異世界召喚者のほうが大事なのだろう。

「今わたしが欲しているのは、最強へと進化するための餌」

 と、国王は言った。

 異世界召喚者たちは国王の行動に驚いている。

「異世界召喚者よ、わたしが欲しているものは力だ。わたしは欲しているものを手に入れるために、異世界召喚者を呼ぶことにした。異世界召喚者に魔人族の討伐をさせるというのは、あくまで建前だ。まあ本当に異世界召喚者が魔人族を討伐してくれたら、魔王を討伐してくれたらうれしいとは思っていたが」

「そんなことのために、わたしたちをこの世界に召喚したの?」

 というのは女子高生のミコト。

「そんなことのために呼び寄せるなんて、ふざけるなよっ」

 というのはリュウノスケ。

「やはりそういうことだったのかっ」

 ショウヘイは眼鏡がないが、その部分をくいっとおさえて、そう言った。

 国王は言った。

「だがなにも心配はいらない。君たち異世界召喚者は、これからもわたしの一部となり生きていく。君たちはわたしの一部分となり、最強へと進化するための餌として、これからもわたしの中で生きていくのだっ。お前たちは最強になるための素材となれるっ。どうだ、素晴らしいだろう。お前たちは最強へと進化するわたしの糧となることができるのだから。これは素晴らしいことだぞっ、喜べっ、もっと喜べ、異世界召喚者たちっ」

「喜べるわけがねえだろうがっ」

 というのはリュウノスケ。

 そして勝利条件が出現する。

 異世界召喚者の戦闘の勝利条件が変更になる。

 それは紅蓮の炎の討伐から、国王の討伐へと変わる。

 戦闘の敗北条件もまた変更になる。

 敗北条件が味方の全滅から、プレイヤーの死亡に変化する。

「なんだよ……この敗北条件は」

「わたしたち……この戦闘で負けたら……死ぬっていうの?」

 というのはアヤノ。

「え……そんなの嫌だよ」

 というのは女子高生のミコト。

 女子高生のミコトは言った。

「待って、なんでわたしたちがあなたの餌にならなきゃいけないの? なんでわたしたちがこんなところで死ななきゃいけないの? わたしたちは魔王を討伐するために呼ばれたんじゃないの? 捕食されるなんていやっ。国王になんかに食われるなんていやっ」

 という女子高生のミコト。

 国王は笑った。

「ふははははははっ。お前たちはわたしの話をまるで理解していないようだなっ。お前たちはもともと餌だったのだ。わたしを最強へと進化させるための、レベルを上げるためだけの餌だったのだ。スキルを上げるための餌にすぎなかったのだ。ふははは、ふはははははははっ、異世界召喚者よ、これはお前たちの最後の戦いだっ。お前たちはつかえなさ過ぎたっ。もっと有能だったなら、もっと先まで大事に取っておくつもりだったが……もう必要がないっ」

 リュウノスケは言った。

「許さねえ。許さねえぞ。国王」

「異世界召喚者たちよ、この戦いで、お前たちは死ぬ。お前たちを捕食したら、次はあのおっさんを捕食するっ。あのおっさんは有能だったが、わたしのもとにつかえるつもりはないようだからなっ」

 という国王。

 国王は異世界召喚者に向かっていった。

 ショウヘイは言った。

「くるぞっ」

 と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る