第111話
仮面の女LV255
「魔王、お前をここで倒しておく」
と、仮面の女LV255がいった。
「きゅううう」
困った顔のアークスライム。
アークスライムはここで仮面の女LV255に出会いたくはなかったのだろう。
それほどまでに仮面の女LV255という女は強いのだろうか。
アークスライムが困った顔をしていると、自分たちなら仮面の女を自分たちなら倒せると、グレア、エルマがアークスライムの横に並ぶ。
「なんだ、魔王を討伐する邪魔をする気か。だがお前たち程度では……わたしの相手にはならない」
「きゅうううう」
「本当にそうなのかしらねっ」
「わたしたちは……オークディザスターとだって、互角に戦ったんですよ」
「きゅううううう」
「オークディザスターと互角に戦ったからと言ってなんだというのだ。このわたしは、魔王を討伐するだけの力を持っている。魔王ですらないお前たちに、このわたしを倒すだけの力はないっ。今のお前たちに、このわたしにかなう力などないっ」
「そんなことないです」
「そうよ。わたしたちはオークディザスターとだって互角に戦ったんだからっ」
「そんなことはないか。ならやってみるがいい。このわたしと戦い、少しでも戦えるように全力を尽くせ」
「わかりました。いきます。ウインドカッター」
「サンダーボルト」
「くらえっ」
右手を構えただけで、複数の剣が空中に浮かぶ。
「きゅうううう」
その剣はグレア、エルマ、アークスライム、紅蓮の炎のメンバーであるサック、アレク、エレンに飛んでいく。
アークスライムは飛んでくる剣にビビっている。
その剣の数はかなりの数。
無数の剣はノスカーとゾーイにだって飛んでいく。
致命傷を受けるのはサック、アレク、エレン。
「きゅううううう」
アークスライムもダメージを受けている。
グレアとエルマも予想以上に敵が強く、驚いた顔をしている。
オークディザスターと互角以上の戦いをした自分たちが、こんな相手にこんなにも苦戦することに驚いている。
「強い……」
「わたしたちがまったく相手にならない敵がいるだなんて」
「くそっ……たった一回の攻撃でこんなにもダメージを受けるなんて……」
「いてえ……いてえよ」
「オークディザスター戦からあんなにも体を鍛え上げたこのオレが……まったく相手にならない相手だと……」
というサック、アレク、エレン。
「きゅううううう」
「やはり今のお前たちでは……このわたしの相手にもならないか。それはそうだ。今のわたしは魔王と同等の力を持っている。魔王を討伐できるのは、このわたしだけだっ」
「魔王? 魔王って何を言っているんだ? こいつは」
何を言っているのか、わからないという顔をするアレク。
「今のお前たちにすべてをわかる必要はない。いずれわかるさ。いろんなことがな」
という仮面の女。
仮面の女は言った。
「これ以上の戦いはもうやめておけ。これ以上の戦いを続けても、お前たちにいいことなどない。私はそろそろ去ろう。わたしの目的は、戦争を止めることだったのだから。これ以上の戦いはもう必要ないだろうからな。じゃあな。お前たち」
「待てっ。魔王ってのはなんだ」
アレクはそういうが。
仮面の女LV255は去っていった。
エルマ、グレアは仮面の女LV255が去って行って、その姿を見送る。
こんなにも強い女がいたのかと、自分たちよりも強い冒険者がいたことに、彼女たちは驚きの表情を浮かべるのであった。
オレは宿屋の娘ユイカを助けることに成功した。
オレは冒険者ギルドの美人受付嬢ミリカを助けることに成功した。
スライムスレイヤーの二人を助けることに成功した。
あとはゴブリンスレイヤーのリョウコを助ければいいだけだ。
リョウコは確か宿屋の近くで敵兵と戦っていたはずだ。
オレはもう一度宿屋の前を目指して、飛んでいく。
「おっさん、スピードがはやいです」
「サトウさん、もう少しだけでいいので、スピードを落としてもらえますか?」
というユイカとミリカ。
ユイカ、ミリカは落ちるのが怖いのか、オレの体に前から後ろからぎゅっとつかまるように抱きついてくる。
スライムスレイヤーの二人もまた、光の翼から振り落とされないように頑張っていた。
「おい、翼をばさばさと動かすのやめろよ。落ちるだろっ」
「ひええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
というような悲鳴を上げて、スライムスレイヤーの二人が悲鳴を上げている。
片方はスライムスレイヤーのリュウはオレに文句まで言ってきた。
モデルみたいにかわいい女の子は地面を見下ろして悲鳴を上げている。
んなことを言われても、オレはこれでもゆっくりと飛んでいるつもりなのだ。
ゆっくりと飛んだうえでこのスピードなのだ。
仕方ないな。
もっとスピードを落とすか。
できるだけゆっくりと空を飛ぶって結構難しいんだぞ。
スピードを出すほうが簡単なんだぞ。
オレはもうちょっとだから頑張ってくれよと思いながら、ゴブリンスレイヤーのリョウコがいる宿屋を目指す。
とそこにはリョウコがいた。
ゴブリンスレイヤーのメンバーがいた。
ゴブリンスレイヤーのメンバーは村娘よりも人気があるのか、兵士たちがそこにはたくさんいる。
たくさん集まっている。
ゴブリンスレイヤーのメンバー、特にリョウコが敵の兵士を倒しているようだけれど、敵の兵長を倒しているようだけれど、敵の兵士たちも負けてはいない。
敵の兵士たち十七体は、ゴブリンスレイヤーのことを囲むようにして、じわりじわりとその距離を詰めていく。
いつの間にこんなに敵が増えているのか。
リョウコはといえば、その敵兵士を一体ずつ魔法を使って倒してはいるのだが、前から後ろから横から近づいてくる兵士に焦っているようだ。
兵士はぐへへへへへと気持ち悪く笑っている。
兵士に槍で攻撃されるゴブリンスレイヤーのメンバー。
ゴブリンスレイヤーのメンバーは敵からの近距離攻撃に弱い。
なぜならゴブリンスレイヤーのメンバーは全員魔法使いだからだ。
「なんで……なんでこれだけ敵を倒しても、次から次へと敵が出現してくるの?」
と、リョウコは困惑しながら言った。
リョウコは言った。
「もうだめだ。もうマジックポイントがなくなる……わたし死ぬのかな。このまま敵の兵士に無残に殺されちゃうのかな」
というリョウコ。
ゴブリンスレイヤーのメンバーがリョウコを励ます。
「リョウコ、あきらめちゃダメ。あきらめなければ、必ず助けが来る」
「でも……もうマジックポイントがつきるっ」
「リョウコ、あきらめなければ、きっとサトウさんが助けに来てくれるっ。リョウコが好きなサトウさんが助けに来てくれるよっ」
というゴブリンスレイヤーの仲間たち。
「なっ、さ、サトウさん……」
リョウコはそんなことを仲間に言われて、助けに来てくれるサトウのことを想像し、顔を真っ赤にしていた。
オレは兵士と戦闘中のリョウコに声をかけた。
「おい、リョウコ。大丈夫か?」
「あ、サトウさん」
なんだかすっごくうれしそうな顔をしているリョウコ。
リョウコはオレが現れてうれしすぎるのだろうか、目がきらきらと輝いていた。
「サトウさん、あまりにも敵が多すぎるんです。わたしではこれだけの敵の数は倒しきれませんっ。助けてください」
というリョウコ。
「なんだよ。リョウコ。せっかく特訓したのに、お前の特訓の成果はそんなもんなのか?」
「で、でも……わたしは十分に頑張ったんですけど。あまりにも敵の数が多くて」
というリョウコ。
リョウコはしょぼんとした感じでいった。
お、おう。
なんだかリョウコが犬がしょぼんとした感じに見える。
仕方ないな。
ここはオレが倒してやるか。
というわけで、オレが襲い来る敵兵を一撃で全部倒してやった。
「!」
「!」
「!」
「すごい。敵兵士を一撃で倒しちゃうなんて……」
というリョウコ。
オレはゴブリンスレイヤーのリョウコに向かって手を差し出す。
「リョウコ、行くぞっ」
「えっ?」
「リョウコ、オレはお前も助けるっ」
というオレ。
リョウコは嬉しそうな顔をして、オレの手を取ってくる。
その手を取るのに時間はかからなかった。
躊躇はまったくなかった。
「はい。サトウさん、わたし、サトウさんと一緒にいきます」
というリョウコ。
リョウコは迷わずにオレの手をつかんできた。
リョウコを助け終わると、敵兵士の攻撃はもうやんでいた。
敵兵士はもうすべて地面に倒れこんでいた。
追撃してくる兵士の攻撃ももうなくなったようである。
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