第104話
目の前には異世界召喚者がいる。
リュウノスケ、ショウヘイ、アヤノ、幼女のミコト、女子高生のミコトがいる。
兵長、兵士までいる。
こちらのメンバーはグレア、アークスライム、エルマ、エレン、サック、アレク、ノスカー、ゾーイ、ゴブリンディザスター、トール、ゴブリンスレイヤーのリョウコ、ゴブリンスレイヤーのメンバー、スライムスレイヤーの二人だ。
異世界召喚者LV70
異世界召喚者LV72
異世界召喚者LV74
異世界召喚者LV76
異世界召喚者LV78
兵長LV52
兵士LV44
兵士LV45
兵士LV46
兵士LV47
幼女のミコトは言った。
「おじさん、おひさしぶりです」
「久しぶりだな。ミコトちゃん」
「おげんきでしたか? おじさん」
「ああ。オレは元気だったよ。ミコトちゃんは元気だったか?」
「あたちはげんきではありません。おじさんがわるいおじさんになったので、あたちはしょっくです。わるいわるいおじさんのことをとうばつするのはいやなきぶんです。あたちはおじさんとたたかうことになって、とてもしょっくです。おじさんがわるいにんげんになってしまって、とてもかなしいかなしいなのです」
「そうか。オレもみことちゃんとは戦いたくなかったんだけどな。異世界召喚者とみんなでダンジョン攻略できたらよかったんだけどな。残念ながらそうはいかなかったみたいだな。だってお前ら異世界召喚者は、ここに住んでいる村人を皆殺しにするつもりなんだろ? オレはこの村に住んでいるやつらを殺されるなんて嫌だよ。この村に住んでいるものたちを皆殺しにされるところを見逃すなんてできねえよ。ここはオレにとって大事な村なんだ。追放されたあとに、オレのことをここまで成長させてくれた場所なんだ。そんな大事な場所を壊させるわけにはいかない」
「おじさん、なにをいっているんですか? はなしがながいです」
「オレたちはおっさんと紅蓮の炎とかいうパーティーを討伐しに来ただけだぜ?」
「皆殺し?」
「?」
「?」
異世界召喚者たちはこの村に住んでいる人たちを皆殺しにするという話は聞いてはいなかったのだろうか、はてな顔をしていた。
眼鏡をくいっと押さえながら、ショウヘイが言った。
「なるほど……だから国王は俺たち以外にこんなたくさんの兵をよこしたのか。別に必要はないといったんだがな……。確かにそれにしては、兵士どもの士気が高すぎるとは思ってはいたが……そういうことだったのか」
「え? わたしたち、村人まで倒すなんて話はきいていないよっ。おっさん、わたしたちはそんな話きいていないよっ」
というのは女子高生のミコト。
幼女のミコトは周りの人たちの顔を見て、なんだかこれは話がおかしくなってきているぞ、とそんな顔をしていた。
「え? なに? 皆殺し? わたしたちが同じ人間を殺すわけないじゃん。おんなじ人間なんだし」
というのはアヤノ。
これはどういうことだろうか。
オレは大賢者に聞いた。
大賢者、異世界召喚者の説得はうまくいく可能性はあるか?
イエス。
という大賢者。
だが今回のクエストで異世界召喚者たちが仲間になるわけではないらしい。
敵兵士が言った。
「おっさんが言っているのは戯言だ。追放されたやつの言葉など信じるな。こいつは悪いおっさんなんだよっ」
というのは敵の兵士。
だが周りにいる兵士たちはにやにや顔をしている。
兵士たちは小声で言った。
「村にいる女は、オレたちの好きにしていいらしいぞ」
「男は皆殺しにしろ。女は好き放題にしていい」
という兵士たち。
「なにあいつら……なんか怖いんですけど」
というアヤノ。
「サトウさん、いいんですか? 敵を殺してもいいんですか? 敵は同じ人間です、それでも本当に敵を殺してもいいんですか?」
と聞いてくるグレア。
相手はオレと同じ人間だ。
オレは同じ人間を殺したくはないが、だからといって村に住んでいる人たちを殺されたくない。
村の人たちの命を奪われたくはない。
村人に住んでいる女たちのことだって彼らに好きにさせるわけにはいかないっ。
こいつらは敵だ。
敵は殺せばいい。
敵は倒せばいい。
周りにいる敵兵たちはやる気満々になっている。
オレは村人が死ぬ姿を想像する。
ひどい目にあっている姿を想像する。
男は死ぬ姿を。
女が兵士たちに凌辱される姿を。
そんなことはさせない。
そんなことには絶対させない。
バッドエンドには絶対にさせないっ。
さて、戦闘開始だ。
「お前たち、それ以上先には進むな。4マス以上先へと進むなら、それらの行動は戦闘行為とみなすぞ。それ以上先に進むのなら、殺す」
「ちっ、うるせえな」
リュウノスケが四マス以上突っ込んでくる。
ショウヘイ、アヤノ、幼女のミコト、女子高生のミコトまで突っ込んできた。
そのあとに兵長、兵士まで突っ込んでくる。
オレの村に住む人たちに手を出すというのなら、皆殺しにするつもりだというのなら、相手が異世界召喚者とはいえ、殺すしかないだろう。
「光魔法、光の玉っ」
これは敵の行動を3ターン行動不能にする技。
前は敵の行動を1ターンしか行動不能にできなかったが、今では3ターン行動不能にすることができるようになっている。
「これが光魔法か?」
異世界召喚者、兵長、兵士たちの行動を3ターン封じた。
まぶしすぎる光の玉が辺りを包み込んでいる。
だがリュウノスケは余裕の笑みを浮かべている。
「おっさん、オレたちは異世界召喚者だってことを忘れちまったか。3ターン行動を封じられたのは痛いが、その程度は何の問題にもならないぜっ。だってオレたちは異世界召喚者なんだぜ?」
「3ターン行動不能か……」
眼鏡をくいっとおさえるのはショウヘイ。
「げっ、行動できなくなった」
「うわっ、ずるい、このスキル」
「おじさん、ひどいです」
という女子高生のミコト、アヤノ、幼女のミコト。
「!」
「!」
「!」
「!」
「!」
驚いた顔をしているのは紅蓮の炎のメンバーである。
グレア、エルマ、エレン、アレク、サックの五人である。
ゾーイ、ノスカーもそんな顔をしている。
アークスライムもまた感心したような顔をしている。
そして敵の兵士はさっきまで変な笑みを浮かべていたのに、突然焦りだす。
「か、身体が動かないぞ」
「行動不能になるなんて」
「しかも3ターンも行動不能だと」
「なんだ、この敵は……敵がこんなに強いだなんて、オレは聞いていないぞっ」
さっきまで薄気味悪い顔をしてぐへへへ、ぐへへへへと笑っていた敵の兵士たちが驚きの声を上げている。
理解できない敵がいると、慌てている。
「正々堂々と戦えっ、化け物がっ」
「卑怯な魔法を使いやがって」
「すぐ目の前に女がいるのに」
といってくる敵の兵士たち。
そんなことを言っても、戦闘というのは勝つのが重要なのだ。
戦闘にかち、さらに村人たちを全員守ることが重要なのだ。
村人のことを好き放題にするつもりだったくせに、急に自分たちの身が危なくなったら、焦りだしたらしい。
自分たちはやられるつもりはなかったのだろうか。
自分たちは殺されるつもりはなかったのだろうか。
そんなことを今更いっても、もう遅い。
お前たちは4マス以上先へと足を踏み入れたのだから。
「だが……こっちには異世界召喚者がいるんだぞ。今に見ていろ」
だが兵士たちはそれでも自分たちの勝ちを信じているようだ。
兵士たちは村人、男、を皆殺しに、女は自分たちの好きにできると思っている。
ゴブリンディザスターは光の玉の範囲外の敵に向かって言った。
「立ち去れ、ごみどもがっ。それ以上動いたら、殺す」
「はっ。今更引けるかよっ。そこにいる村娘はオレのものだっ」
兵士たちは村娘に向かって移動した。
そしてそこにはゴブリンディザスターが立っている。
さっきまで女をいたぶる相談をしていたというのに、男であれば皆殺しにするつもりであったというのに、兵士たちは目の前にいるゴブリンディザスターの攻撃に悲鳴を上げている。
ゴブリンディザスターの大剣によって、兵士が一人、二人、三人と死んでいく。
ゴブリンディザスターは言った。
「死にたくなければここから立ち去れ。死にたい奴だけかかってこいっ」
だが兵士も今更逃げることなどできないらしい。
それほど村人を殺すことを目的としていたのか、村娘がかわいいからか、その理由はわからないが、相手がゴブリンディザスターであっても、兵士たちはゴブリンディザスターに立ち向かっていく。
そして聞こえるのは悲鳴。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
兵士が兵長が死んでいく。
兵士が次々と死んでいき、兵士は言った。
「オレは聞いていないぞ。女を好き放題できると聞いていたのに……こんな化け物がいるなんて聞いていないぞっ。異世界召喚者、お前たちはやく行動しろ。お前たちがこの化け物を倒せっ」
「うるせえな。すぐに行動するってえの」
というのはリュウノスケ。
兵士LV45が死んでいく。
敵兵が死んでいく。
ゴブリンディザスターによって殺されていく。
だが兵士が死んでいくのに、人間が死んでいくというのに、オレは何も感じなかった。
魔物の肉を食べて、心まで魔物になってしまったからだろうか。
これが魔物に近づいていくということなのだろうか。
「こいつさえ……こいつさえ倒せば……」
という兵士たち。
兵士たちは無謀にもゴブリンディザスターに突っ込んでいき、ゴブリンディザスターの大剣によって次々と殺されていく。
ゴブリンディザスターはあまりにも強すぎた。
兵士たちはこんな展開になるはずじゃなかったと、一人一人地面に倒れていった。
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