第103話

 後ろから五万の軍勢が来る。

 その中には異世界召喚者たちがいる。

 リュウノスケ、ショウヘイ、アヤノ、幼女のミコト、女子高生のミコトがやってくる。

 ほかの兵士たちとともにやってくる。

 俺は大賢者に異世界召喚者の少女や少年たちがどこまで話を聞いているのかを聞いてみることにした。

 村人を皆殺しにするという話を聞いているのだろうか。

 主様。異世界召喚者たちはそのことについての話は聞いてはいません。

 国王にいいように操られているだけです。

 国王にいいように利用されているだけです。

 そうか。

 利用されているだけなら、異世界召喚者たちを倒したくはないが、今は相手が誰であれ戦うしかないだろう。

 誤解を解くためには時間がかかることが多いから、戦うしかないだろう。

 ゲームとかでも相手を説得するのには、やたら時間がかかることが多いのだから。

 ゲームとかで敵を説得しても、すぐにその戦闘で仲間になってくれるわけではないのだから……。

 でもまさか、あのとき一緒に召喚されたものたちと、異世界召喚者とここで戦うことになるとは思わなかった。

 だってそれは、同じ異世界召喚者なのだから。

 オレはみんなを同じ仲間だと思っていたのだから。

 人間同士で戦うことになるなんて思っていなかったのだから。

 だがオレの住んでいる村の人たちを皆殺しにするつもりなら、オレの住んでいる村の人たちを倒すつもりなのなら、オレはみんなを守るために異世界召喚者とだって戦わないといけない。

 こちらを攻撃してくる相手、異世界召喚者だって倒さないわけにはいかないのだ。

 国王は言った。

「サトウよ、まあそんなに強きでいられるのも今のうちだ。今に五万の軍勢がやって来る。異世界召喚者たちがやって来る。サトウよ、お前がいくら有能でも、異世界召喚者が相手で、五万の軍勢が相手で、お前一人で生き延びられるかな? いや、お前一人なら確かに生き残ることができるかもしれないが、ほかのものたちはどうだ? ほかの村人たちはどうだ? この五万の軍勢の中、異世界召喚者たちが襲い掛かってくる中、果たして何人が生き残ることができるかな? 一人でも多くの村人が生き延びられるといいな。一人でも多くの仲間が生き延びられるといいな」

 にやにや顔で言う国王。

 大賢者に聞くと、ここは攻略難易度がかなり高いらしいステージらしい。

 失敗したら何人かが死ぬステージらしい。

 なんだかゲームみたいになってんな。

 兵士たちがこの村に攻め入ってきた理由がオレにあるのならば、オレは敵の兵士から、異世界召喚者から全員を助ける責任がある。

 全員を助ける義務がある。

 誰が死ぬことになるのかは、誰が死ぬ可能性が高いのかはわからないが、そんなルートになんてさせない。

 オレが目指すのはハッピーエンドなのだから。

 オレが目指すのはトゥルーエンドだけなのだから。

 きたっ。

 きたぞっ。

 異世界召喚者たちがやってきたっ。

 その周りには馬に乗った敵兵がいる。

 歩いてくる魔法使いがいる。 

 歩いてくる僧侶がいる。

 馬に乗った剣士がいる。

 敵の数は五万前後。

「国王。敵をすべてを倒したら、次はお前の番だからな。覚悟しておけっ」

「ほざけっ。そんなことを言っていられるのも今のうちだ、サトウ。村人全員が皆殺しにされ、泣き叫ぶがいい。サトウ、お前は異世界召喚されて、この村に逃げたという自分の行いを悔い改めるがいい。お前は異世界召喚されて追放され、この村に来なかったら、一人で野垂れ死んでいたのだろうから。この村にいる人々がこんな目にあうことはなかっただろう。この村に住むものがむごたらしい死に方をすることもなかった」

 という国王。

 国王、軍団長、忍者は去っていった。

 だが後ろから来るのは異世界召喚者たち。

 そして後ろから来るのは敵の兵士五万だ。

 さて、オレも予定の場所につくかな。

「たった一人の異世界召喚者なら特に問題にはならないだろう」

「こっちは異世界召喚者が五人。相手は一人だからな」

「お前たちあの異世界召喚者であるサトウ以外の村人は、好きにしていいからな。男は皆殺しにしてかまわん」

 というようなことを、兵士たちは話していた。

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