第102話
作戦会議が終了した。
オレは村に仲間を配置すると、一人で村の外へと向かった。
背中にあるドラゴンの翼を羽ばたかせて、村の外へと向かった。
仲間を連れて行かないのは、敵が村の中に進入した時にすぐに戦闘状態にしておくためだ。
村人にはそのことは知らせてはいない。
村人にそのことを知らせたら、混乱が起きるかもしれないからな。
村人が村から逃げ出しても危ないからな。
ばらばらに村人が逃げられると、みんなを助けられるかはわからないからな。
村の外に出ると、そこにいるのは国王、軍団長、忍者、そして数人の兵士だった。
その国王の後ろからは、異世界召喚者たちの気配が伝わってくる。
五万という大軍がやってくる気配が近づいてくる。
国王は言った。
「久しぶりだな。サトウ。ずいぶん元気そうじゃないか」
という国王。
「そっちこそ。今頃になってオレに戻ってこいとは、ずいぶん調子のいいことを言ってくれるじゃないか」
「サトウよ。そんなことを言うな。そんなことを今更いっても仕方があるまい。あのときはわたしはお前には戦いの才能がないとそう思っていたのだ。そう勘違いをしていたのだ。わたしはサトウの本当の力を見抜くことができなかった。すまなかったサトウ。わたしにはお前の力を見抜く力がなかった。もしその力があったなら、こんなことにはならなかっただろう。お前は異世界召喚者以上に、本物の才能を持つ異世界召喚者だった。お前の力を見抜けなかったわたしのふがいなさを許してくれ」
国王はほかの兵士がとめるのにも関わらず、頭を下げてきた。
というか、国王は土下座していた。
国王のその行為を誰かがとめるのを、国王は待っているのだろう。
その茶番をオレがとめるのを待っているのだろう。
だが、オレは気づいている。
これは演技だということを。
大賢者に教えてもらったから知っている。
これからの選択肢は二つ。
一つ目はこれで俺が城に戻れば戦争は起きない。
二つ目は城に戻らなければ、村人全員の皆殺しが計画されていることを。
オレは土下座している国王に向かって言った。
「国王、俺が城に戻ったら、どんなふうに俺の待遇を考えてくれるんだ」
「わたしはお前のために、なんでもしよう」
なんでもしてくれるのはうれしいが、今更俺は城に戻る気はなかった。
それよりも、俺が気になっていることは、城に戻らない場合であった。
「俺が城に戻らない場合、どうするんだ?」
「…………」
無言の国王。
「その場合、わたしはただ城へと戻るだけだ。サトウを仲間にできなかったのが残念だが、その場合、わたしはほかの異世界召喚者に魔王討伐の依頼をするだけだ」
大賢者に聞いたことだが、国王は俺が城に戻らないと、村に住んでいる人達を皆殺しにするつもりだ。
俺が城に戻るならば、特に何もする気はないらしい。
俺は首を横に振った。
今更国王のところに戻る気はないのだから。
村人たちには迷惑をかけることにはなるが、俺は全員を助けるつもりなのだから。
「サトウよ、お前が選ぶ選択肢次第で、皆が不幸になるぞ。サトウ、お前が城に戻ってくる道を選ぶつもりならば、みんなハッピーだ。みんなハッピーエンドだ」
だが俺は城に戻るつもりはなかった。
「俺は城に戻るつもりはない」
「! そうか。そうなのか。お前は本当に馬鹿だな。サトウ。その選択肢は、皆を不幸にする選択肢だというのに」
「やるつもりなのか。その最悪な選択を」
「わたしは手に入れたいものを手に入れるためならば、なんでもするっ」
「国王っ」
俺と国王はにらみ合っていた。
不敵な笑みを浮かべるのは国王。
「サトウよ、お前はもう終わりだ。お前ひとりが強くても、わが軍にはかなわない。わが軍を相手に、みなを救うことはできない。わが軍相手に、お前一人で何ができるというのだっ」
という国王。
「なら、こっちだって手加減をするつもりはないぞ」
「手加減? たかが一人で何ができるというのだ。やれるというのであれば、やってみろ。サトウ。一人でな」
「俺は一人じゃない。俺には大事な仲間がいる。大事な、俺のことを後ろから支えてくれる仲間がいる」
相手がやる気だというのなら、オレだってやるだけのことだ。
オレはゴブリンキングのスキルを使った。
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と、オレは叫び声をあげた。
風がふく。
それは少し悲しい風だった。
風が少し泣いていた。
そしてゴブリンが前後左右から出現する。
そのゴブリンはゴブリン。
そのゴブリンはホブゴブリン。
そのゴブリンはゴブリンキング。
そのゴブリンはゴブリンディザスター。
オレが今までに倒したことのあるモンスターが続々と出現してくる。
まあオレが倒したディザスター級のモンスターはオークディザスターだったが。
「な……なんだと……魔物を呼び寄せただと……」
という国王。
国王は驚いているようだった。
「ああ。お前が大軍を引き連れてくるなら、オレもまた大軍を呼び寄せただけだ」
「ば、化け物めっ」
という国王。
国王はオレのことを化け物といい、にらみつけてきた。
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