第100話

 そして忍者がやってきた。

 またか。

 忍者が何回やってきたとしても、オレの考えは変わらない。

 オレはもうあの城へと戻る気はないのである。

 そしてオレにはもう大事な仲間がいるのだから。

 この大事な仲間とともに、これからもずっと仲間とともにやっていくつもりなのだから。

 忍者は言った。

「サトウ様、これで最後の相談になります。お城へとお戻りください」

「オレは城になど戻るつもりはない」

「そうですか……なら仕方がありませんね。サトウ様、国王がサトウ様に会いたいとそうおっしゃっています。数時間後、村の外に来てください。そこでお待ちしております」

 忍者はそれだけ言うと、姿を消した。

 なんだと?

 国王が来るだと?

 国王は一体何をしに来るのだろうか。

 数時間後といったな。

 今すぐ村の外にいったら、そこに国王はいるのだろうか。

 とりあえず大賢者に聞いてみるか。

 大賢者、国王の目的はなんだ?

 それは主様を連れ戻すことです。

 大賢者、国王はオレを連れ戻すためにわざわざここまでやってきたのか?

 イエス。

 国王は主様を手に入れるために、わざわざここまでやってきました。

 と大賢者は答えた。

 大賢者は続ける。

 国王は戦争を仕掛けてでも、主様を連れ戻そうとしています。

 村人全員を皆殺しにしてでも、主様を自分の元へと連れ戻すつもりです。

 は?

 嘘だろ?

 オレを取り戻すために、村人全員を皆殺しにする?

 さすがにそこまではしないだろう……。

 いえ。

 主様、国王は全力で主様を叩き潰しにきます。

 主様の心まで全力で叩き潰しに来ます。

 おそらく主様が城へと戻らないといった場合、村人を皆殺しにするつもりでしょう。

 そこまでするか普通?

 つまりオレは城へと戻らないといけないのだろうか。

 大賢者、つまりオレは城へと戻ったほうがいいってことか?

 みんなのために、オレは城へと戻ったほうがいいってことか?

 いえ。

 と大賢者は言った。

 大賢者は続ける。

 国王の目的は今、主様に誘いを断れたせいで、主様の心を砕くことが目的となっています。

 主様の心を自分のものにするために、全力で主様の大事なものを壊しに来ます。

 村人を全力で皆殺しにきます。

 気を付けてください。

 国王は激おこです。

 は?

 つまりオレが城に戻っても、城に戻らなくても、村にいるみんなのことを国王は皆殺しにしにくるってことか?

 オレが城に戻るのを断ったから。

 たったそれだけのことで?

 それはおかしいだろう。

 それは絶対におかしいと思う。

 だが大賢者は言った。

 主様はそれほどの存在になったということです。

 それだけ絶対的な存在になったということです

 それだけ強い存在になったということです。

 村人全員を皆殺しにしてでも、ほしい人材になったということです。

 そしてこれからも気を付けてください。

 主様が活躍すればするほど、主様ご自身だけではなく、その周りにいる人間まで狙われるということを……。

 その周りにいる村人まで狙われるということを……。

 そんな。

 そんなことがあっていいのだろうか。

 こんなのってないよ……。

 こんなの絶対おかしいよ。

 オレだけが狙われるならともかく、ほかの村人まで狙ってくるだなんて……。

 そこまでしてくるやつがいるんだな。

 そんな奴がいるなんて、オレはそこまで考えてはいなかった。

 どんなにすごい冒険者になろうと、どんなにすごい冒険者になったとしても、狙われるのはオレだけだと思っていた。

 紅蓮の炎のメンバーくらいだと思っていた。

 まさか村人まで狙われるだなんて思っていなかった。

 これでエルマ、サック、アレク、エレン、グレア、リョウコ、ゴブリンスレイヤーのほかメンバー、トール、ゾーイ、ノスカー、ミリカ、ユイカまで狙われる可能性があるのか。

 なんでオレ以外の関係のないやつまで狙うんだよ。

 オレは全員が死ぬイメージを思い浮かべた。

 みんなが死ぬイメージを思い浮かべた。

 そんなことはさせない。

 そんなことは絶対にさせないっ。

 みんなをやらせるわけにはいかないっ。

 オレはこの力を使って、仲間の命を守るんだ。

 オレはこの力を使って、村人全員を守るんだっ。

 だがオレは力を手に入れてしまったがために、ここに住んでいる村人の命を危険にさらしている。

 つまりここに住んでいるものがこんなに危険な目に遭うのは、オレのせいだ。

 オレがここにいるからそうなるというのだろうか。

 異世界召喚者というのはいるだけで害悪な存在なのだろうか。

「サトウさん、どうかしたんですか?」

 というグレア。

「グレア、今から戦争が始まる。だから会議を始める。グレアも参加してくれ」

「はいっ。戦争ですか。人間は本当に戦争というものが好きですねっ」

 というグレア。

 今からエルマ、サック、アレク、エレンにもこのことは伝えておいたほうがいいのだろうか。

 ノスカーとゾーイにもこのことを伝えておいたほうがいいだろうか。

 ゴブリンスレイヤーのメンバーにもこのことを伝えておいたほうがいいだろうか。

 イエス。そのほうがよいでしょう。

 という大賢者。

 オレは紅蓮の炎のメンバーと、ゾーイ、ノスカー、ゴブリンスレイヤーのメンバーを集める。

 これから会議だ。

 宿屋の中での会議だ。

 宿屋の中でぎゅうぎゅうになりながら、オレたちは会議を始める。

「「な、なんだって? これから戦争が始まるだと……敵が攻めてくる?」」

「ああ。オレは異世界召喚者なんだ。で、オレが異世界召喚された城があるんだけど……そこの国王がさ……オレのことを狙っているんだ……オレの力を狙っているんだ」

「まじかよ……で、敵の兵力はどのくらいなんだ?」

 オレは大賢者に聞いた。

 敵は国王ただ一人なのかと。

 大賢者は言った。

 敵の兵力は五万です。

 五万?

 五万もかよっ。

 まあゲームでも、敵の兵力が五万くらいのときはあるからな。

 そのくらいならなんとかやれるか。

「敵は五万だ」

 と冷静にいったら、

「「敵は五万!?」」

 と、みんなが驚きの声を上げていた。

 戦力シミュレーションゲームとかだと、そのくらいの兵力は普通な気がするけれど、敵の兵力が五万というのは高いのだろうか。

 高すぎただろうか。

 それとも敵の兵力が五万というのは低すぎたのだろうか。

 よくわからない。

 ノスカーが焦りながら言った。

「やべえな。これはマジでやべえぞ」

 というノスカー。

「サトウの話が嘘であればいいんだけどな……敵は五万か……そしてオレたちを狙ってくるということか……」

 と、ゾーイは言った。

「戦争ってことは……当然わたしたちだけじゃなくて、ここに住んでいるだけの人たちも狙ってくるわよね……村人のことも……当然狙ってくるわよね」

 と、エルマは言った。

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