第87話

 地下迷宮92階層。

「確かにこのあたりのモンスターはちょっと違うな。敵のモンスターを一撃で倒すことができなくなった。やはりベヒモスは強い。この階層のモンスターは強い」

 オレは地下迷宮92階層を進みながら、そんなことを言った。

 前方を歩いているのはオレ、グレア、エルマの三人。

 そのあとを少しの距離をとりながら、だが後方からモンスターがこないかびくびくしながら歩いているのがアレク、エレン、サックの三人である。

 周りを見ながらおびえているのがこの三人である。

 そういえば前方からの敵さえ倒せば仲間は無事だろう、なんて甘いことを考えていたら、敵は横からくることもあれば、後ろから来ることがあることもあるのだった。

 天井からくることもあるのだった。

 とはいえ、すべての方向を気にしながら進むのは面倒くさい。

 大賢者に聞けば問題ないだろうが、仲間が震えあがっている姿を持て、ちょっと喜んでいるオレがいる。

 これが魔物になるということなのか。

 魔物に近づくということなのか。

 仲間が震えあがっている姿を見て、ちょっと喜んでしまうなんて、オレは最低の人間なのかもしれない。

 いや、魔物とはこういったものなのか。

 いちいち小さなことを気にしなくなってしまうのだろうか。

 たとえ部下の一人がやられても、

「あいつは四天王最弱……」

 とかそんなセリフですませてしまうのかもしれない。

 どうやら敵が出現したようである。

「また敵が出現したか」

「ミノタウロス」

 巨大な斧を持つミノタウロスを発見した。


 ミノタウロスLV123

 グリーンドラゴンLV84

 グリーンドラゴンLV85

 グリーンドラゴンLv86


 グリーンドラゴンは別に大したモンスターではないが、問題はミノタウロスである。

 とはいえ、オークディザスターの肉を食い、そしてベヒモスの肉を食った今のオレだったら相手がミノタウロスでも問題ない。

 オレは相手を見れば、敵の力がわかるのである。

 まあ相手のレベルは見ればわかるのだが、それ以外でも敵の強さは敵を見ればわかる。

 敵の周りにエネルギーが見えるようになったのである。

 赤い色をしたエネルギーが。

 その赤い色をしたエネルギーを見れば、相手が自分よりも強いのかそれとも弱いのかがわかる。

 つまりオレのほうが強い。

「グレア、エルマ、いくぞっ」

「はい」

「うんっ」

 というグレア、エルマ。

 後ろにいるアレク、サック、エレンの三人は言った。

「頼むからサトウ、はやく戦闘を終わらせてくれよ。こっちはこの階層を進むだけでどきどきものなんだよ。敵はオレたちよりも強いやつばっかりだから、敵から攻撃を受けて一撃でやられないか、それが心配なんだよ。いつもびくびくしていなくちゃいけないんだよ」

「怖いよー。この階層を進むの怖いよー」

 というアレクとサックの二人。

「ほんと、オレたちは足手まといだな」

 というのはエレン。

「ふんっ」

 オレは指の二本をくいっと上げる動作をする。

「サンダーボルトっ」

「サンダーボルトっ」

 それだけでミノタウロスに向かって風がふき、二つの風がミノタウロスの身体を切り裂いていく。

 サンダーボルトはミノタウロスを消し炭にしようと、天井から落ちてくる。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 という悲鳴を上げるのはミノタウロス。

 そしてミノタウロスは近づいてくると、オレに反撃を仕掛けてきた。

 その大斧を使って、オレに向かって攻撃を仕掛けてくる。

 オレはその大斧を右手を使って受け止めた。

「ふん、確かにミノタウロスよ、お前の攻撃はいい攻撃だ。だがそれは相手がオレでなければの話だ」

 オレは自分の右腕を巨大させると、巨大化させて筋肉ムキムキ状態にさせると、その巨大な大斧をバキバキバキと破壊する。

「!」

 という反応のミノタウロス。

 そしてグリーンドラゴンLV84はオレの隙をついて、オレに向かって襲い掛かってくる。

 とはいえ、オレはこのグリーンドラゴンLV84に反撃するだけで、このグリーンドラゴンたちを倒すことができるのだが。

 グリーンドラゴンLV84はオレに攻撃を仕掛けてくる。

 オレはグリーンドラゴンの攻撃を食らうが、すかさず反撃に出る。

 右手に持っているミノタウロスの大斧を壊し地面に投げ捨てると、グリーンドラゴンのあごを右手で持ちあげた。

 そして地面へと投げ落とすのはオレ。

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 グリーンドラゴンLV84は悲鳴を上げた。

 グリーンドラゴンLV84を倒した。

 そしてグリーンドラゴンLV85はオレにやられることも気にせずに、オレに攻撃を仕掛けてくる。

 オレに反撃をされればそれだけで死ぬというのに、自分の命がここでつきるというのに、ここで終わるというのに、討伐されるだけだというのに、こいつらはそれでもオレへと攻撃を仕掛けてくる。

 痛くないっ。

 だがオレはグリーンドラゴンのあごをつかみ、また宙へとその身体を持ち上げていた。

 そしてそのまま地面へと投げ落とす。

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 グリーンドラゴンLV85を倒した。

 そしてもう一体のグリーンドラゴンLV86も気にせずにオレに攻撃を仕掛けてくる。

 そしてオレの反撃。

 グリーンドラゴンの身体を持ち上げ、それを地面にたたきつけるオレ。

 グリーンドラゴンLV86を倒した。

 そして残り一体はミノタウロスLV123。

 ミノタウロスは武器を持っていない状態なので、攻撃力は大幅に低下している。

「ふんっ」

「ふんっ」

「ふんっ」

 オレは右手の人差し指と中指二本をくいっとさせて、ミノタウロスを攻撃した。

「サンダーボルト」

「サンダーボルトっ」

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 ミノタウロスは地面に倒れていた。

 オレはミノタウロスに近づくと、ミノタウロスの肉を手に入れた。

 ミノタウロスの肉を食い始めるのはオレ。

 うーん。

 どうだろうか。

 うまくはない。

 そしてまずくもなかった。

 魔物の肉を食ったことで、オレの味覚も少し変わってしまったのだろうか。

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