第86話

 ベヒモスLV104

 グリーンドラゴンLV83

 グリーンドラゴンLV84

 グリーンドラゴンLV85


 の四体のモンスターか。

 だが相手がベヒモスLV104とは言っても、今のオレにとっては特に問題になる敵とは思えなかった。

 オレはすでにオークディザスターの肉を食って進化しているのである。

 どんな敵が相手であろうと絶対に負けない。

 その自信がすでにあるのだ。

「お前らは後ろに下がっていろ。グレア、エルマ、いくぞっ」

 この後ろにいろお前らというのはエレン、アレク、サックの三人である。

 エレンはというと、

「ちっ、またオレたち足手まといかよっ」

 と舌打ちしたあと、なんだか悔しそうな顔をしていた。

 エレンはその目に大粒の悔し涙を浮かばせていた。

 壁をどかんとぶん殴っているエレン。

 だが痛かったのだろうか。

 少し痛そうな顔をしているエレン。

「いくぞっ」

「うん」

「わかっているわ」

 オレの声にそううなずくのはグレア、そしてエルマ。

 オレは遠距離からのベヒモスへの攻撃。

 オークディザスターの肉を食って、通常攻撃でも遠距離からの攻撃が可能となったのだ。

 そしてグレア、エルマは遠くからの魔法攻撃。

「ふんっ」

 ふんといって、指をくいっと二本上に突き出すような動作をする。

 それは風属性の攻撃。

 二つの風の刃がベヒモスへと襲い掛かる。

「サンダーボルトっ」

「サンダーボルトっ」

 サンダーボルトは空から稲妻が落ちてくる魔法。

 外でサンダーボルトを使ったら、黒い雲が集まってきて、そしてそこから落雷が落ちるのだが、ダンジョン内だとその雷は天井から落ちてくる。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 三人の攻撃を受け、悲鳴を上げるベヒモス。

 どうやらベヒモスにも結構なダメージを与えることができたみたいだ。

 よし。

 オレたちは確かに強くなっているな。

 魔物の肉を食べて、オークディザスターの肉を食べて強くなっている。

 グレアとエルマはオークディザスターを討伐した経験値を得てレベルが上がり、強くなっている。

 後ろにいる連中、アレク、サック、エレンもレベルは上がったはずだが、確かに今までよりは強くはなっているのだろうが、まだまだこの階層のボスモンスター級の敵を、ベヒモスを討伐するほどにはいたってはいないようだ。

 ベヒモスの反撃。

 ベヒモスはオレに向かって突進してきた。

 そのベヒモスの大きな身体を受け止めるのはオレ。

 オレはそのベヒモスの頭に生えているその二本の角を捕まえた。

 この右手で、この右腕で、この剛腕で捕まえ、そして持ち上げた。

 ベヒモスの身体が宙へと浮く。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 暴れ狂うベヒモス。

 だがオレはベヒモスを持ち上げ、

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 そして地面へとたたきつけた。

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 という悲鳴を上げるベヒモス。

 グリーンドラゴンLV83、グリーンドラゴンLV84、グリーンドラゴンLV85もまたオレたちの動きに気づき、動き出したようだ。

 三体のグリーンドラゴンはオレのことを囲み、通常攻撃を仕掛けてくる。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 だがグリーンドラゴンの攻撃を受けても、別に痛くはない。

 お前たちの攻撃はこの程度のものか。

 もっともっと強い相手はいないのか。

 オレのことを強くする、進化させるほどの実力のあるやつらはいないのか。

 オレはグリーンドラゴンの口を手でつかむと、それを宙へと浮かび上がらせる。

 そしてそれを地面にたたきつけた。

 グリーンドラゴンLV83を倒した。

 弱いな。

 グリーンドラゴンとはいえ、こんなものかっ。

 グリーンドラゴンLV84が攻撃を仕掛けてくる。

 だが痛くはない。

 お前の攻撃もこんなものか。

 弱い。

 弱すぎるっ。

 オレはグリーンドラゴンの口をつかむと、それを宙へと浮かび上がらせる。

 そしてそれを地面にたたきつける。

 グリーンドラゴンLV84を倒した。

 グリーンドラゴンLV85が攻撃を仕掛けてくる。

 だがグリーンドラゴンLV85の攻撃も痛くはない。

 お前の攻撃もこんなものかっ。

 つまらない。

 もっと強い敵はいないのか。

 オレを最強へと進化させるモンスターはいないのか。

 オレは渇望していた。

 最強のモンスターを。

 最強のモンスターの肉を。

 オレはグリーンドラゴンの口をつかむと、それを宙へと浮かび上がらせる。

 そしてそれを地面へとたたきつける。

 反撃終了。

 最後に残っているのはベヒモスだけである。

 ベヒモスLV104だけである。

「さて、ベヒモス、お前くらいはオレのことをもうちょっと楽しませてくれるのだろうな」

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 といって襲い掛かってくるベヒモスLV104。

 オレはベヒモスの身体をこの右腕で貫いていた。

 オレはベヒモスの身体からその心臓を引き抜いていた。

 オレはベヒモスの心臓をやつに見えるようにして、それからベヒモスの心臓を握りつぶす。

 ベヒモスのヒットポイントゲージが一気に減少していく。

 ベヒモスを倒した。

 オレはグリーンドラゴン、ベヒモスの肉を手に入れると、その肉を食った。

 まず……いというほどまずくはなかった。

 どうしてだろうか。

 今までは魔物の肉なんて、ものすごいまずいと感じていたはずなのに、今ではこのベヒモスの肉を食っても、まずいとは思わなかった。

 だからといって、うまいとも思わなかったのだが……。

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