第79話

「魔王級のモンスターの出現を確認しましたっ!」

 冒険者ギルドで働く職員が驚いたような声を上げた。

 それは魔王級のモンスターの出現を確認したからだ。

 こんなことは十年に一度あるかどうかの出来事だった。

 ほかの冒険者のギルド職員がその言葉を聞き、騒ぎ出す。

「なんだと? 魔王級のモンスターの出現が確認しただと!?」

「嘘だろ……魔王級のモンスターが出現したなんて……」

「嘘だ……そんなことがありえるわけがない」

「もし……本当なら……この国は滅びるぞっ」

「場所はどこだ? どこに出現したんだ?」

「地下迷宮、第90階層です!!!」

「地下迷宮の……下層……」

 地下迷宮の下層は上級の冒険者以上しかいかない場所である。

 だから今すぐに焦って対処する必要はないのだが……。

 だが魔王級のモンスターは一体が出現しただけで、たった一体の魔王級のモンスターの存在だけで国をも滅ぼす力を持っている。

 だからすべての冒険者の力を借りてでも、そのモンスターは必ず討伐しなければならない。

 この村の冒険者ギルドに登録している冒険者に、今はSランクの冒険者というのはいない。

 いてもそれは元Sランクの冒険者だったりする。

 Sランクのパーティー自体は存在するが、Sランクの冒険者がこの村にいるわけではないのだ。

 だから今集める必要があるのは、Aランクの冒険者だ。

 むしろAランク以上の冒険者は今この村にはいないのだから。

「冒険者ギルドに登録しているすべてのAランクの冒険者に伝えろ。緊急のクエストだと。討伐対象は魔王級のモンスターだ。ディザスター級のモンスターだと。腕に自信のあるもの以外はいらないとそう伝えておけ」

「は、はい。わかりましたっ」

 冒険者ギルドの職員は急いで緊急クエストをかける。

 そしてちょうど冒険者ギルドに来ていたゾーイが言った。

「魔王級のモンスターの出現かよっ。面白くなってきたじゃねえか」

 と。

 そしてもう一人、ノスカーまでが冒険者ギルドに現れる。

「ディザスター級の魔物が現れたか。さて、どうなることやら」

 というのはノスカー。

 困った顔をしているノスカーとゾーイ。

 だが二人は並んで、冒険者ギルドから出ていった。

 オレたちがそいつを討伐する、というように。

 そしてギルドマスターの部屋にいたギルドマスターにも、同じような話が伝えられる。

 それは魔王級のモンスターが出現したという話。

 それはディザスター級のモンスターが突如、ダンジョンに出現したという話。

 ディザスター級のモンスターとは、突如、ダンジョン内に生まれ出るものらしい。

「なん……だと? 魔王級のモンスターが、ディザスター級のモンスターが……ダンジョンに出現しただと!?」

 というギルドマスター。

 ギルドマスターは言った。

「これはまずい……これはまずいことになったぞ……うちに登録している冒険者たちでは……魔王級のモンスターはまず倒せないだろう……いや、待てよ。ちょっと待てよ。そういえばあの男がいたな……あのサトウとかいう男がいたな……あいつなら……サトウならば…………魔王級が相手でも……ディザスター級が相手でも……もしかしたら討伐できるかもしれん……あいつに……サトウに期待するしかないのだろうか……」

 というギルドマスター。

 ギルドマスターは部屋から外を見ていた。

 そのはるか先にあるのは地下迷宮。

 はるか先に見えるのは地下迷宮がある方向。

 魔王級のモンスターが出現したであろう、地下迷宮があるその方向を、ギルドマスターは見ていた。

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