第72話

 朝、オレは顔を洗うと、鏡を見ていた。

 ヒールという魔法のおかげか、今ではオレの髪は完全に復活している。

 グレアはというと、鏡を見て満足しているオレとは違って、オレがあげた指輪を見てにやにやしていた。

「グレア、そんなに指輪ばっかり見て。そんなに指輪が装備できて、嬉しいのか? 

まあ確かにその指輪には魔力上昇の効果があるけどさ」

「うん。嬉しい。サトウさんにもらったものならなんでも嬉しいよ、わたしは」

 というグレア。

 まあそんなにも喜んでくれたのなら、あげたこっちとしても嬉しい。

 オレとグレアはユイカが持ってきてくれた宿屋の朝ごはんを食べ、冒険者ギルドに向かった。

 そこには紅蓮の炎のメンバーがもうきている。

 オレたちはこれからギルドマスターから依頼されたクエストをやる。

 特別なクエストに挑戦する。

 クエストの内容は、ダンジョンの下層にいるモンスターの調査をすること。

 最近はダンジョンに出現するモンスターのレベルが上がっているようで、そのモンスターの調査をしてほしいとギルドマスターから依頼があったのだ。

 オレたちはエルマのテレポートで地下迷宮までやってくると、テレポートは一度いった場所にしかいけない、ダンジョンまでやってくる。

 そこは魔の森とは少し違う、異様な雰囲気のダンジョンだった。

 周りが壁。

 壁。

 壁。

 壁でできたダンジョン。

 そしてダンジョンはどこまでも続いていた。

 ダンジョンの奥からは風が流れてきている。

 このダンジョンは一体どこまで続いているのだろうか。

 オレは大賢者に聞いた。

 ダンジョンってどこまで続いているんだ?

 はい。地下迷宮は第百層まで続いています。

 大賢者、モンスターのレベルが上がっているっていうのは本当の話なのか?

 大賢者は答える。

 はい。最近は魔の森のモンスター、そしてこのダンジョンにいるモンスターのレベルが上がってきています。

 そうなのか。

 オレは異世界にはきたばかりだから、モンスターのレベルが普通はどれくらいなのかそれはわからなかった。

 モンスターのレベルは通常の約二倍上がってきています。

 という大賢者。

「二倍だって!?」

 と、驚きの声を上げると、エレンに、

「なんだよサトウ。急にどうした?」

 と声をかけられた。

 オレは、

「いや、なんでもない。ただのひとり言だ」

 と答えた。

 オレは大賢者に聞く。

 そもそもなんでダンジョンのモンスターのレベルが上がっているのかを聞いた。

 大賢者は答えた。

 それは魔人族のしわざです。

 魔人族。

 魔人族というのはオレが勇者召喚されたときに倒すべき相手だったはずだ。

 勇者召喚されたが追放されたからもう自分には関係ない話だと思っていたが、どうやら関係がない話ではないらしい。

 オレはエルマからも情報を聞き出すことにした。

「エルマ、ダンジョンの下層のモンスターのレベルが上がっている理由ってわかっているのか?」

「いいえ。まったくわからないわ。原因は不明よ」

「原因不明か」

 原因は魔人族のしわざらしいが、そのことをエルマに伝えるべきか。

 まあ伝えなくてもいいだろう。

 もともとダンジョンの調査をするのが目的だ。

 そう思っていたら、大賢者が言った。

 エルマ様にも伝えておくべきでしょう。

 魔人族はS級のモンスターです。

 魔人族と戦う前に準備をしておいたほうがいいでしょう。

 魔人族と戦うことには注意が必要です。

 という大賢者。

 大賢者がそういうのなら、エルマにも一応伝えておくか。

 そのことをエルマに伝えると、エルマは驚きの声を上げた。

「ええっ? ダンジョンのモンスターのレベルが上がっているのは、魔人族のしわざだってこと?」

 周りにいる紅蓮の炎のメンバーも、魔人族という言葉を聞いて、驚きの表情を浮かべていた。

 エルマは言った。

「そうね……でもその可能性はあるかも……サトウのいうとおりかも……そうか……だからダンジョンのモンスターのレベルが上がっていたんだ」

 と勝手に納得しているエルマ。

「相手が魔人族ならかなり注意しておいたほうがいいわね。とにかくダンジョンの下層に向かいましょう。魔人族と戦うならA級の冒険者が三人は必要だけど……」

 エルマはオレとグレアのことを見る。

「この二人がいるなら……大丈夫かしらね」

 というのはエルマは悩んだ末にこの二人がいれば問題ないかと納得しているようだった。

 と、ダンジョンの奥にさっそくモンスターが現れた。

 それはオーク。

 オークが二体。


 オークLV22

 オークLV24


 オレはエルマに聞いてみた。

「ちなみにエルマ、ダンジョンの上層にいるモンスターのレベルって、いつもはどんくらいなの?」

「まあ大体レベルレベル10くらいよ」

「レベル10?」

 レベル10の敵のモンスターにしては、第一層から出現するモンスターのレベルは上がりすぎではないだろうか。

 第一層なのにすでに敵のレベルが20をこえているぞ。

 地下迷宮の下層のモンスターのレベル一体どれくらい上がっているんだよ、とちょっと不安になっていたら。

 大賢者が答えた。

 おそらく下層のモンスターのレベルもあがっていることでしょう。

 おそらく敵のレベルは二倍、いや三倍、いや、それ以上にレベルが上がっているモンスターもいるはずです。

 という大賢者。

 そんなところのモンスターの調査をするのかよ。

 まじか。

 それはやばすぎる。

 難しすぎるだろ。

 そんなのできるかなっ。

 と思っていたら、敵が襲い掛かってきたようだ。

 オレは敵が襲い掛かってきたので、魔法を使うことにした。

 まずは職業を変更させる。

 職業は大魔法使いに変更だ。

 オレの格好が大魔法使いへと変わる。

 魔法の詠唱はしない。

 それは無詠唱の魔法。

「ファイアーボール!!!」

 オレの魔法が、オレの巨大すぎる火の魔法が、敵を一体だけではなく、オーク二体を焼き尽くしていた。

 オレの魔法の威力を見て、紅蓮の炎のメンバーが、エルマ、アレク、エレン、サックの四人が驚いた顔をしている。

 グレアは当然という顔をしている。

「サトウ、お前、いつの間に魔法を覚えたんだ」

「オレ、大魔法使いになったから」

 レベルが1でも魔法を使えるようになったから、というオレ。

「大魔法使いになっていたのは知っていたが、もう魔法を使えるようになっていたのか」

 というエレン。

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