第40話
「サトウさん、私たちのパーティーゴブリンスレイヤーに加入してくれるかしら?」
Eランクの冒険者であり、Eランクパーティーゴブリンスレイヤーのリーダーであるリョウコからゴブリンスレイヤーへの加入の誘いがあった。
よほどオレのことを仲間にしたいのか、リョウコとその仲間たちは次の日もオレの前に姿を現した。
お前らはストーカーか。
いや、オレからの返事を待っているのか。
だがそもそも、そんなにオレのことを仲間にしたいと思う理由がわからない。
オレは期待のルーキーと呼ばれている新人の冒険者ではあるが、冒険者ランクはEランク。
そんな冒険者ランクの低い冒険者に、目を付ける理由がわからない。
それともBランクのパーティーに所属しているオレを、そこから引き抜きたいだけだろうか。
「なんだよ。リョウコ、オレはデイリークエストで忙しいんだよ。紅蓮の炎のメンバーとのクエストで忙しいんだよ。魔法の練習で忙しいんだよ」
というオレ。
リョウコは言った。
「サトウさんってなんの魔法の練習をしているんですか?」
「なんの魔法の練習をしているかって? それはだな」
光魔法。
火の魔法。
水の魔法。
雷魔法。
風魔法である。
全部の魔法を覚えたいなんて馬鹿じゃないか、そう思うかもしれないが、オレはすべての魔法を覚えたい。
ゲームをやったことがある人なら、その気持ちがわかるはずだ。
レベルも99まで上げたい。
ぽこんと敵を叩くだけで、敵に999999のダメージを与えたい。
「そうだな。覚えたい魔法は火の魔法。風の魔法。水の魔法。土の魔法。光魔法だな」
「雷魔法ならわたし、使えるよ! 初級の魔法でいいならできるよ。中級の魔法でいいならできるよ。雷魔法、水の魔法、火の魔法、土の魔法をそれぞれのメンバーで教えてあげられるよ。わたしは雷の魔法が使えるよ。わたしたちみんなで、サトウさんに魔法を教えてあげようよ?」
「なん……だと!?」
魔法を教えてくれるだと!?
よっしゃあ。
オレはその言葉を聞いて、心の中でガッツポーズをした。
リョウコが雷魔法を使えるのなら、ほかのメンバーがほかの魔法を使えるのなら、このゴブリンスレイヤーに魔法の使い方を教えてもらえばいい。
あとは指導の仕方がわかりやすければいいのだけれど、これは指導されてみなければ、この子たちに指導の才能があるのかそれはわからない。
だがオレは嬉しくなって、リョウコの手を引っ張っていく。
ほかのこのことを引っ張ってやる。
「みんなも早くこっちに来てくれ。オレに魔法を教えてくれ」
「もう、そんなに急いでも、すぐに魔法は覚えられないよ」
「いいから来るんだ」
「もう、サトウさんったら」
「本当にサトウさんって戦闘のことしか考えてないんだ」
「魔法のことしか考えてないんだ」
「悪いかっ」
オレはそういってゴブリンスレイヤーのメンバーを地下訓練場へと連れていく。
ゴブリンスレイヤーのメンバーは息を切らしていた。
「地下訓練場かあ」
というリョウコ。
目の前にはトールがいて、またかサトウというような、なんだかあきれた顔をしている。
まあいいけど、という顔のトール。
オレはスルーしてくれたトールのおかげで、地下訓練場をまた使わせてもらうことに成功した。
ゴブリンスレイヤーはといえば、オレの向かい側に立っている。
「さあ、みんな、模擬戦をしよう」
「「模擬戦!?」」
というゴブリンスレイヤーのみなさん。
魔法というのは戦闘中に覚えればいいのである。
だがゴブリンスレイヤーのみなさんは戸惑っている様子だった。
「えっと……模擬戦ってことは……私たちはみんなで……サトウさんを倒せばいいのかな?」
「全力で戦っていいのかな?」
「でもサトウさんがそうしてくれって言うのなら……わたしたちは頑張るけど」
「どうしようか」
というゴブリンスレイヤーのメンバー。
「いいぞ。全員ひとまとめに相手にしてやるっ。かかってこいっ」
「みんな、やろっか。サトウさんのために、サトウさんが魔法を覚えられるように」
「サトウさんのためにわたしたちがここで頑張ったら、サトウさんがゴブリンスレイヤーに加入してくれるかもしれないもんね。よし、やろう。頑張ろう」
「頑張ろうっ」
「うん。わたしたちがもしもサトウさんに戦闘で勝利できたら、サトウさんはわたしたちのパーティーゴブリンスレイヤーに加入してくれるかな? どうだろう? そうだといいな」
というゴブリンスレイヤーのメンバーたち。
だがオレは戦闘に勝利しても、戦闘に敗北しても、ゴブリンスレイヤーに入るかは決めてはいないが。
「おう、こい」
魔法使いは遠くから攻撃してくる。
それをオレは初めて知った。
そういや、ゲームでもそうだったっけか。
「サンダー」
空に暗雲がたちこめ、電撃が空から落ちてきた。
その電撃はオレの身体を貫く。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
という悲鳴を上げるオレ。
これが電撃魔法か。
身体がびりびりする。
こんなのを何回も食らったら……死ぬかもな。
「サトウさん、大丈夫ですか?」
というリョウコ。
そして後ろのゴブリンスレイヤーのメンバー。
「おう。もっと来い。オレはもっとやれるっ。そして痛みも悪くないぜっ」
「ファイアーボール!!!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
痛みも悪くないぜっ。
「ウォーターボール!!!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
痛みも悪くないぜっ。
「アースクエイク!!!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
痛みも悪くないぜっ。
魔法というのを覚えるために、わざとその攻撃を食らってみる。
いつもならまぶしい光を使って、敵の攻撃をよけるのだけれど、今日はわざわざ敵の魔法を食らってみることにした。
ゴブリンスレイヤーの攻撃を食らってみることにした。
これが魔法かあ。
いてえじゃねえか。
でも美少女の攻撃なら、これもまたご褒美だ。
「サトウさん、大丈夫ですか?」
「おう。大丈夫だ。もっとこいっ」
ポーションをごくごくと飲む。
うまい。
ポーションは相変わらずうまいな。
「よっしゃあ。みんな、もっと来い。オレは魔法を覚えてやるぜっ」
「いきますっ」
「みんな、いこうっ」
「うん」
「みんなで一斉に魔法を使うよ」
「「一斉のうで」」
魔法が来る。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「才能がある人って……ちょっと変わってるよね……あんなに魔法の攻撃を受けているのに……顔が苦しんでいるんじゃなくて……喜んでいるよ」
というゴブリンスレイヤーのメンバー。
いや、オレは変態ではない。
オレはただ魔法を覚えたいだけだ。
そしてゴブリンスレイヤーの魔法を食らい続けていれば、何かに目覚めそうな気がした。
それは魔法のスキルだろうか。
何かを獲得できそうな、そんな気がした。
「サンダー!!!」
「ファイアーボール」
「ウォーターボール」
「アースクエイク」
いろんな魔法の攻撃を食らいすぎて、身体に痛みがなくなっていた。
いや、違う。
ヒットポイントゲージが魔法を食らっても減少していない。
減ってはいない。
オレは何かを獲得していたようだ。
魔法の耐性を獲得していたようだ。
いや、魔法の耐性かよっ。
オレが覚えたかったものは、魔法の耐性ではなく、魔法なのだが。
魔法そのものなのだが。
オレはリョウコに言った。
「リョウコー、オレもそろそろ本気出してもいいか? 反撃してもいいか?」
「はい。いいですよ。わたしたちは四人いますし、サトウさんは一人だけ。四人いればサトウさん一人ぐらいなら倒せますよ。ここからは本当の私たちの力を見せてあげましょう」
というリョウコ。
ならリョウコの本当の力を見せてもらおう。
「サンダー」
「ファイアーボール」
「ウォーターボール」
「アースクエイク」
「まぶしい光っ」
オレは今まではすべて食らっていた攻撃を、魔法の攻撃をすべてよける。
「!」
「!」
「!」
「!」
魔法をよけられて、ゴブリンスレイヤーは驚いていた。
「さすがはサトウさん……」
というリョウコ。
オレはかけていき、そして魔法使いへの距離を、一歩ずつ近づいていく。
「っ、サンダー」
「っ、ファイアーボール」
「っ、ウォーターボール」
「っ、アースクエイクっ」
距離を詰められて、焦っているゴブリンスレイヤー。
魔法使いというものは、戦士や武道家に距離を詰められることを苦手としている。
近距離戦闘がむいているものを苦手としている。
だから魔法使いと戦士では、戦士は接近戦にさえ持ち込んでしまえば、勝利が確定する。
オレはまぶしい光だけを使って、一歩一歩ゴブリンスレイヤーとの距離を詰めていく。
相手は四人。
一人一人倒していけばいいだろう。
まずはリョウコから。
リョウコとの距離はゼロ距離になった。
顔がすぐそばにある。
その巨大な胸がすぐそこにある。
「リョウコ、ありがとうよ。リョウコのおかげで、魔法耐性を手に入れることができたぜっ」
というオレ。
「そうですかっ。それはよかったです。すごく嬉しいです。サトウさんのお役に立ててよかったです」
戦闘中なのになぜかとても嬉しそうにしているリョウコ。
オレはリョウコの首めがけて、チョップをする。
リョウコは一瞬で気絶して、地面に倒れる。
「!」
「!」
「!」
ゴブリンスレイヤーのメンバーは一瞬で決着がついたことに、驚きの顔をしていた。
「お前ら、防御がなってないぞ。敵に攻撃されたら、こう、こうやって、防御の姿勢をとって、敵の攻撃をガードする。これは冒険者としての基本だろう。そんなんじゃ敵モンスターにすぐにやられちまうぞっ」
オレはゴブリンスレイヤーのメンバーにそういった。
ゴブリンスレイヤーのメンバーは悔しそうな顔をしている。
くっ、という顔をしている。
だが防御の練習なんてしたとしても、今そのことを言われたとしても、それをすぐに実践できたら苦労しない。
敵の攻撃をすぐに防げたら苦労はしない。
オレの攻撃をすぐに防げたら苦労はしない。
オレが魔法の練習に苦労しているように、防御が苦手なものをそれを覚えるのは、それを獲得するのは大変なのだ。
難しいことなのだ。
オレはゴブリンスレイヤーの残り三人のメンバーも、一瞬のうちに三人に近づいて、そのままその首を狙ってチョップをした。
三人の少女が気絶し、地面に倒れこむ。
オレは地面に倒れこんでいるゴブリンスレイヤーのメンバーを見ていた。
サトウ 40 男
LV:18
STR:200
VIT:200
INT:200
DEX:200
AGI:200
LUK:1900
武術LV5 身体強化LV5
気配感知LV4
光魔法LV2
<スキル>
なし
<固有スキル>
まぶしい光
魔法操作
雷耐性
火耐性
水耐性
土耐性
<加護>
太陽神の加護
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