第39話

 最近のオレは強くなってきている。

 アレクとの戦闘、エレンとの戦闘、そしてBランクモンスター大ガエルとの戦闘をおえて、かなり能力が上がってきたことをオレは感じていた。

 筋肉が成長していることを感じていた。

 これがEランクの冒険者の強さなのだろうか。

 もっとそれ以上の力があるようなそんな気がした。

 オレのステータス画面はこんな感じになっている。


サトウ 40 男

LV:18

STR:200

VIT:200

INT:200

DEX:200

AGI:200

LUK:1900

武術LV5 身体強化LV5

気配感知LV4

光魔法LV2

<スキル>

なし

<固有スキル>

まぶしい光

魔法操作

<加護>

太陽神の加護


 やはり自分よりも高レベルの冒険者と模擬戦をしたことが大きいのだろう。

 高レベルのモンスターと戦闘をしたことが大きいのだろうか。

 レベルの上昇が早い。

 その分敵のレベルも高く、一回一回のモンスターとの戦闘が気を抜けないものであるのも事実ではあるのだが。

 これが強さなのか。

 これがレベルが上がるということなのか。

 これがスキルレベルが上がるということなのか。

 どうやったら冒険者としての強くなれるのか、その実力を得られるのか、それがわかった気がした。

 ただただ強いやつと戦えばいい。

 ただただ強いやつを倒せばいい。

 そして経験値を手に入れればいい。

 それだけだ。

 オレは自分の肉体を見て、さらに美しい筋肉を見て、そう思った。

 さて、今日も魔法の練習である。

 光魔法の練習だ。

 ぷよぷよとぴかぴかと宙に光魔法を浮かばせることに飽きてきたオレは、光の玉の形を変える練習を始めた。

 それは剣の形だったり、スライムの形だったり。

 槍の形だったり。

 光の玉で剣を作るのはなかなか難しい。

 鍛冶師であるドレイクにお願いして、剣の作り方なんてのを見せてもらったが、やはり剣を作るところを一度や二度見たくらいでは、光魔法で剣を作ることは難しいようだ。

 できたのは光の魔法でできたまがい物の剣。

 攻撃力が低いのでこれは失敗だろう。

 失敗作だろう。

 まあ一応できそこないの光の剣とでも名前をつけておくか。

 光魔法ってのは難しい。

 手からどーんと。

 どかーんと。

 ばっかーんと。

 光魔法が出てきて、敵を倒してくれればいいのだけど、なかなかそううまくいってはくれない。

 なんでオレはこんなに魔法の才能がないのだろうか。

 ほかの人はもっと優れた才能があるのに、なんて思いながら、光魔法を作っていると、とんとんと部屋をノックされた。

 魔法に集中しすぎて、朝ごはんの時間を忘れていたらしい。

 ご飯を食べるのが、酒を飲むのが好きなオレが飯の時間を忘れるなんて、こんなことがあるのだろうか。

 珍しいな。

 とはいえ、魔法の練習は楽しかった。

「はい。ユイカ、朝ごはんの準備を頼む」

 と言った。

 ユイカはというと、笑顔になって、

「おっさん、また魔法の練習ですか? いつもいつも頑張りますね」

 というユイカ。

 まあオレにとってはクエストをこなすのが日課だからな。

 光魔法を練習するのが日課だからな。

 これをやめたら、もうこれ以上強い冒険者になれないんじゃないか、とそんなふうに思ってしまうのだ。

「ではおっさん、朝ごはんの準備をしますね。ちょっと待っていてください。顔でも洗ってきたらどうですか?」

「ああ。顔洗うの忘れてた。いけね」

 というユイカの言葉を聞いて、そうだ。

 今日は顔を洗うのも忘れていたな。

 なんだか毎日レベルアップするのが楽しくて、光魔法が少しずつだけど上達しているのが楽しくて、スキルレベルが上がるのが嬉しくて、魔法に、そして自分の肉体レベルの向上に夢中になりすぎて魔法のことばかりを考えていてしまっていたようだ。

 オレは洗面所で顔を洗うと、戻ってきた。

 テーブルの上にはおいしそうな料理が盛り付けてある。

 今日はパンと、オーク肉にステーキ、そして目玉焼きのようだった。

「今日もうまそうだな。いただきます」

 オレはそう言うと、テーブルの椅子に座り、いただきますと料理を食べ始めた。

 うまい。

 異世界の料理は最高だぜ。

 飯を食べ終わると、冒険者ギルドへと向かうことにした。

 なんだか周りの村人が、周りの冒険者がいちいちオレのことを見ては、目を止める。

 なんだろうか。

 最近のオレは、そんなにも注目されている冒険者なのだろうか。

 確かに紅蓮の炎の一員でもあるし、冒険者として活躍しているのも事実ではあるが……。

 Gランクの冒険者と、紅蓮の炎の一員になったEランクの冒険者では、そんなにも違うものなのだろうか?

 まあオレから見た周りの視線は、全然違うものになってきているのだが。

 冒険者ギルドに向かっているその途中で声をかけられた。

 その冒険者は女性だった。

 身長は高め。

 そしてどっしりとした体格で、しかも巨乳。

 お尻もおっきい。

 そんな感じの美巨乳の冒険者四人が、女冒険者の四人が、オレの道を阻む。

 なんだろうか。

 このオレに何か用だろうか?

 なんだか胸がおっきくて、スタイルのやたらいい女性の冒険者ばかりである。

 こんなかわいらしい、美人で、しかも胸の大きい、そんな少女たちが一体オレに何の用だろうか?

 オレのほっぺたにびんたをしてくれるのだろうか?

 でもあいにく、オレにはそういった趣味はないんだけどな。

 と思っていると、おっぱいの大きな女戦士ふうの少女は言った。

「あなたがサトウさんですか?」

 という女冒険者。

「はい。そうですけど、なにか?」

 オレは冒険者ギルドに行かなければいけないのだが。

 そう思いながら、なんかその胸すごいでかいな、どうやったらそんなに胸が成長するんだろうか、やっぱり食べ物が理由だろうか、食べ物をいっぱい食べるとそうなるのだろうか。

 なんてことを考える。

 異世界の飯がおいしいから、自然と成長するのだろうか。

 なんてことを考える。

 オレの身体が成長して、筋肉が成長しているのも、モンスター討伐と異世界料理がうますぎるからなのかもしれないな。

「サトウさん、私のたちのパーティーにゴブリンスレイヤーに入ってくれませんか? 私たちはEランクの冒険者パーティーなんですけど。確かに今の紅蓮の炎には冒険者ランクでは負けているかもしれないけれど、わたしたちも負けてはいません。美しさなら、可憐さなら、紅蓮の炎に負けていません」

 という女冒険者。

 巨乳の女冒険者は自分の名前をリョウコだと名乗った。

 リョウコか。

 胸が大きいな。

 胸ばかり見てしまう。

 胸ばかり見るな。

 胸ばかり見ないようにしよう。

 だがその巨大な胸をつい見てしまう。

 その巨大な胸に魅了されてしまう。

 自分を持て。

 その胸に負けるな。

 そう思いながら、オレは言った。

「パーティーへの加入の話ですか?」

 最近やたらほかのパーティーに誘われることが多くなったな。

 と、そんなことを冷静に思ってしまう。

 Eランクのパーティー、ゴブリンスレイヤーへの加入の話。

 オレはゴブリンを倒すことは好きだけど、ゴブリンを討伐するのは好きだけれど、最初の頃はゴブリンばかりを討伐していたけれど。

 でも今のオレには、紅蓮の炎というパーティーがある。

 大事な仲間がいる。

 だからほかのパーティーとの掛け持ちをするわけにはいかない。

 そのおっきな胸は魅力的ではあるのだが。

 すっごく魅力的ではあるのだが。

 オレはおっきな胸に魅了されながら、ちょっともったいなかったかなとも思いながら、そして美少女四人にここですぐ断るのが申し訳なくて、こう言った。

「はあ。少し考えてからでもいいですか? 結果はあとで伝えるということでいいですか?」

 とまるで面接官のようなことをいうオレ。

「はい! お願いします! サトウさん」

 というのはリョウコ。

 そのセリフを言うだけで、胸がぶるん! と揺れていた。

 オレはその胸から目をそらした。

 まずい。

 まずい。

 まずい。

 胸がでかすぎる。

 っていうかあの女の子、わざとやっているのだろうか?

 それはわざとなのだろうか。

 とはいえ、それに魅了されている情けないおっさんというのも悲しい話なのだが……。

 ゴブリンスレイヤーのメンバーはそれだけを伝えると、去っていく。

 そしてリョウコたち女冒険者たちは、何がそんなに嬉しいのか、去っていったあと、

「私、サトウさんと話しちゃった。わたし、すごいっ」

「ずるい。私だってサトウさんと話したかったのに」

「まあでも……いけるかも……すっごいわたしたちの胸に食いついてたし……」

「でも見ないように見ないようにしていて……可愛かったね」

 とかいう話をしている女冒険者四人。

 巨乳の女冒険者四人。

 おい。

 話がこっちにまで聞こえているぞ。

 つうか、見てたのばれてたのかよっ。

 こっちは見ないようにと、胸を見ないようにと必死に頑張っていたというのに。

 というわけで、ルーキーと呼ばれるようになったら、こんな美少女で巨乳の女冒険者たちに、声をかけられるようになった。

 パーティーメンバーに加入してくれないかとお願いされるようになった。

 そして美少女巨乳の少女たちにそんなことをお願いされて、つい鼻の下を伸ばしてしまう悲しいオレ。

 どうしようかな。

 紅蓮の炎に入っていなければ、オレはゴブリンスレイヤーに入っていただろうけれど。

 ゴブリンの討伐は好きだけれど。

 オレはゴブリンスレイヤーの胸の大きさを思い出しながら、そんなことを思った。

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