第29話
雨の中でのモンスター討伐は上々の出来だった。
LV27のロック鳥の討伐。
LV6からLV12までのゴブリンの討伐に成功した。
ロック鳥は報酬額が金貨一枚なので、たとえ雨の中でもデイリークエストをこなしておいてよかったと思った。
今日の報酬は金貨一枚に銀貨五枚。
日本円にして一万五千円ほどの金額を一日で稼いだわけである。
一日に稼げる金額が増えてきて、オレは嬉しかった。
このままちょっとずつでも日銭を稼ぐ金額が上がっていけば、いずれはエリクサーだって買うことができるかもしれない。
百万円稼げるようになるかもしれない。
エリクサーを手に入れて、髪の毛を復活させるんだ。
そんな日を夢見ながら、オレは宿屋へと戻ろうとした。
今日もまた宿屋で酒を飲み、飯を食い、明日のデイリークエストに向けて、体調を整えようと思ったかけだが、
「あれ? サトウ。こんな雨の日に何してんだ?」
と、声をかけられた。
声をかけてきたのはトール。
トールというのは冒険者ランクがCの冒険者である。
こんな日に何をしているんだ、それは当然モンスター討伐をしてきた帰りというわけなのだが。
だがオレはトールに駆け寄っていくと、言った。
「久しぶりだな、トール」
「おう。サトウこそ。元気にやってたか?」
というトール。
元気にやっていたかというと、まあまずまずである。
Fランクの冒険者にはなることができたが、毎日デイリークエストを順調にクリアしてはいるが、それくらいなものだ。
オレは魔王を討伐もしていないし、魔人族の討伐もしていない。
ただ日銭を稼ぐだけの毎日である。
だがうまい酒を飲み、うまい飯を食い、ミリカさんやユイカのような美少女と毎日話をし、それだけでオレの毎日はそこそこに満たされてはいるのだが。
「まあ。そこそこな。トールこそ、仕事は順調か?」
トールは冒険者ギルドの地下にある、地下訓練場の先生である。
オレもこのトールには鍛えてもらったことがある。
「ああ。まあ順調だな。サトウこそ順調に冒険者ランクを上げているそうじゃないか」
というトール。
この村は狭いようで、そんな話がほかの冒険者やこの村に住むいろいろな人たちにも伝わっているらしい。
「ちょっと酒場に寄っていこうぜ」
とトールに誘われ、オレは異世界にきて初めて酒場へと入る。
異世界の酒場ってのは、エッチな格好をした女性、胸がでかい、がいるのだろうかと思っていたら、そこはむさくるしい場所だった。
冒険者、女の冒険者が、酒をあおるように飲んでいる。
酒くせえ。
なんだこいつら……。
完全に冒険者というよりは、ダメ人間じゃねえか、というくらいにダメな感じで酒を飲んでいる。
トール曰く、冒険者というのはモンスターを討伐するとき以外は、こんなもんだ、という話だが。
オレとトールで酒を飲んでいたら、向こうから何人かの冒険者がやってきて、オレたちに声をかけてきた。
それは女性。
そして男の冒険者複数だった。
「あら、あなたがサトウ?」
ん?
オレのことを知っているのか?
ということは、オレが無能だから城から追放された、ということまで知っているのだろうか?
と思ったが、どうやらそういうわけではなかったらしい。
「あなたがつい最近、Fランクになった冒険者?」
という女性の冒険者。
「私の名はエルマ。で、こっちにいるのがエレン、アレク、サックよ」
「サックだ」
「エレンだ」
「アレクだ。よろしくなっ」
と、次々と握手を求めてくる冒険者たち。
オレはこの冒険者たちと握手をする。
そして握手した瞬間、この冒険者たちがなかなかの実力を持つ冒険者であることを感じ取った。
おそらくだが、冒険者ランクB以上の冒険者なのではないだろうか。
オレはこの冒険者たちがなかなの冒険者だということを感じ取って、しばらくの間、この冒険者たちと握手したままでいたら、サックに冷やかされた。
オレが手をずっと握っていたのは、女性の冒険者、エルマだったのである。
「おい、サトウ、お前、いつまでエルマと握手しているんだよ。エルマは確かに美少女だけどよお」
「あっ……すまん。つい……」
かなり強い冒険者かと思ってね。
これが強い冒険者なのかと思っていたら、ついついつい、その手をじっと見つめていてしまったのだ。
手を握っていたのである。
オレが手を離したら、その瞬間にエルマは言った。
「サトウにお願いがあるの。これはサトウにとってもいい話だと思うんだけど……。サトウ、よかったらうちのパーティーに入らない? うちのパーティー、Aランクのパーティー、紅蓮の炎に」
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