第28話

 雨。

 雨。

 雨。

 雨。

 窓の外は雨が降っている。

 たまに強く風がふき、その風にあおられるように、雨が窓を叩く音がしていた。

 異世界にきてからほとんど毎日日課としてクエストをこなしてきた。

 だが天気の悪い日はどうすればいいのだろうか。

 例えば異世界前の世界なら、雨が降ろうと、雪が降ろうと、雷がなろうと、会社に行かなければならない。

 たとえ空から槍が降ってきたとしても、それは変わらないだろう。

 だが異世界に来ると、別にクエストをやるのは自分の自由だし、クエストをやらないのも自由である。

 こんな日に外に出れば、身体が濡れて風邪をひいてしまうかもしれない。

 髪が濡れて、ただでさえ少なくなってきている髪の毛がダメージを受けてしまうかもしれない。

 モンスターと戦うときに足場が悪くなって、バランスを崩して怪我をおってしまうかもしれない。

 でも毎日毎日日課としてクエストをやってきた身としては、何もせずにただ宿屋で休むというのも気が落ち着かなかった。

 異世界でも飯を食えばお金は減るしなー。

 異世界でも宿に泊まるとお金は減るしなー。

 異世界で武器の強化をすれば、お金は減るしなー。

 やっぱり少しでもお金を稼ぐために、日銭を稼ぐために、クエストをやるべきだろうか。

 クエストをやれば経験値が得られるし、まあこんな日でもクエストをやるか。

 と、朝食の準備ができたのか、ユイカが入ってきた。

 ユイカは朝食の準備をしながら、言った。

「おっさん、今日は部屋でのんびり休んでいるんだよね。よかったら話し相手にでもなってあげる」

 仕事が終ったらね。

 というユイカの誘いは嬉しいが、今日もオレは雨が降っても、モンスター討伐に行こうとそう思っていた。

「今日もモンスター討伐に行く予定だよ」

 とオレが言うと、ユイカは信じられない顔をして、こっちのことを見て、言った。

「ええー。おっさん、外、雨が降っているよ。こんなときにモンスターと戦うなんて危ないよ。危険だよ。モンスターに殺されちゃうかも?」

 というユイカ。

 だが冒険者というものは、たとえ空から雨が降ってこようとも、雪が降ってこようとも、雷が落ちてこようとも、モンスター討伐に行かなくてはならないのだ。

 レベルを上げるために、日課のクエストをやらなければいけないのだ。

 それはレベルを上げるため。

 そして日銭を稼ぐために……。

 まあ雨が降ろうが雪が降ろうが、毎日仕事をし続けてきたオレには、この程度の雨は問題なかったのだ。

「まあ外では確かに雨が降ってるけどね……。まあ、これくらいの雨なら大丈夫でしょう」

 といって、オレはユイカが用意してくれたご飯を食べると、さっそく宿屋を出ていこうとした。

「あ、おっさん」

「なに?」

 振り返るオレにユイカは言った。

「雨にぬれないように、レインコートを持っていったほうがいいよ。レインコートは宿屋の入り口に置いてあるから」

「うん。ありがとう。ユイカ。じゃあレインコートを借りていくね。じゃあ、いってきます」

 といって、オレは宿屋の入り口に置いてあるレインコートを手に取って、宿屋から出た。

 外は雨が降っている。

 オレはレインコートを装備品の上に装備して、そして冒険者ギルド目指して、今日もかけていった。

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