第26話

 モンスターを倒しながら、今日も魔の森を進む。

 最初の頃はモンスターと戦うのも慣れていなかったが、今ではモンスターと戦うのにも慣れてきた。

 それは歩くだとか、走るだとかの行為とあまり大差はなかった。

 まあ相手がゴブリンだから、そう思えるだけかもしれないが、ゴブリンとの戦闘は悪くない。

 ゴブリンを倒すと、ストレス解消にもなるし、運動不足の解消にもなる。

 そしてゴブリンを倒せば倒すだけ報酬がもらえる。

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 森の奥に進みながら、ゴブリンLV10、ゴブリンLV8、ゴブリンLV12を倒していく。

 汗をかきながら、ゴブリン討伐はなんだか気持ちがよかった。

 そしていつものように空が夕焼け色に変わって、今日もまた日課となっているゴブリン討伐をそろそろやめようかと、そう思ったときのことだった。

 ん?

 なんだかとても強大な敵の力を遠くから感じる。

 その気配が徐々にこちらに向かってくる。

 え?

 こっちに向かってくるの?

 オレはもうモンスター討伐は終わりにして、帰る気満々だったんだけど。

 そしてその周りから一緒になってほかのモンスターが三体ほど出現した。

 げ。

 まずい。

 やばい。

 それはさすがにまずいって。

 空は夕焼け色になってきたから、モンスターも強くなるというのに、どうしてこんなタイミングでモンスターが現れるのか。

 だがまあ仕方がないか。

 モンスターが現れたのなら、ただ倒すだけだ。

 モンスターを倒せばお金がもらえる。

 報酬がもらえる。

 手に入れられるお金が増えると思って、まあ喜ぶことにした。

 この強い気配はどんな敵なんだ。

 オレは最近ゴブリンと戦うのにもちょうど飽きてきたところだった。

 どんな強い敵だろうとかかってこい。

 必ず倒してやる。

 このオレが相手になってやる、と思いながら、敵が来るのをわざわざその場で待っていたら、ばっさばっさとその羽をはばたかせて、そのモンスターがやってくる。

 LV25、ロック鳥。

 LV25という文字を見て、オレは思った。

 は?

 LV25?

 それはちょっとまずいんじゃないですかね。

 もうちょっとちょっとずつ相手のレベルが上がってほしいんですけど?

 そんな高レベルのモンスター、オレに勝てるんですかね?

 なんて思っていたら、もうロック鳥は目の前までやってきたようだ。

 そしてその周りにはいつものようにゴブリンがいる。

 LV12のゴブリン、LV11のゴブリン、LV13のゴブリン。

 このゴブリンたちは特に問題にはならないだろう。

 ただ一体だけ問題があるのが、レベル20台のモンスター、ロック鳥である。

 しかしミスったな。

 ロック鳥が来る前に、ポーションを使っておいたほうがよかったのかもしれない。

 ポーションがどれくらいの回復をするのか、敵の攻撃がどれほどの攻撃力を持っているのか、オレのヒットポイントをどれだけ削るのか、ハイポーションを買っておいたほうがよかったのかも、ミリカさんがあれだけハイポーションをすすめてくれたのに、なんて考えがオレの頭の中を駆け巡る。

 失敗した。

 失敗した。

 失敗した。

 ハイポーションちょっと高くても買っておけばよかったかも、なんて今更思っても、後悔しても遅かった。

 もう時間を巻き戻すことはできなかった。

 仕方ない。

 なんとかロック鳥だけでも倒したいところだが……。

 周りのゴブリンたちもボスモンスターのロック鳥がいるからか、その顔はいつもよりも自信があるような顔に見えた。

 なんだかいつもゴブリン討伐しているこのオレに復讐をしようと、そんなことを考えているような、ゴブリンの顔にも見える。

 オレはボスモンスターをまず最初に倒すべきだとそう直感で判断し、一目散にロック鳥に向かって走り出す。

 そしてオレはこう叫んだ。

「スキル・まぶしい光!」

 ロック鳥、そして周りにいるゴブリンたちが、オレの頭から放たれる光に、目を奪われたようだ。

 よし。

 この隙に連続で攻撃を仕掛けてやる。

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 ロック鳥LV25に向かって右のパンチ、そしてその勢いのまま、左のパンチを繰り出す。

 ロック鳥にダメージを与えているという手ごたえはあったが、倒しきったという感覚はなかった。

 くそっ。

 防御力が高い。

 さすがに敵のレベルが25にもなれば、一撃でモンスターを倒しきることはできないようだった。

 本当にほかの勇者たちがうらやましいぜ。

 勇者のように強ければ、オレみたいにいちいちまぶしい光というスキルを使わなくても、敵を倒すことができたんだろうから。

 とはいえ、ロック鳥もまたオレの姿をちゃんと捕らえることができてはいない。

 その攻撃は適当な攻撃だった。

 まるでオレのいないところを攻撃しているロック鳥LV25。

「そんな適当な攻撃……たとえ攻撃力が高くても、当たらなければどうということはないっ。はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 ロック鳥LV25に三撃目をいれんとばかりに、オレはロック鳥の身体に自分の身体を近づけると、そのまま右のパンチを繰り出した。

 どん。

 という大きな音がした。

 だがロック鳥もまた、その攻撃でまだやられはしないというように、何とかその攻撃を耐えている。

 そしてあまりに身体を接近させてしまったせいだろうか、ロック鳥は身体をひねりながら、その大きな体がオレに当たるように、その身体を回転させた。

「や、やべっ」

 よけられない。

 し、しまった……。

「し、身体強化っ!!」

 オレはそう叫ぶと、身体が防御壁をはるように、筋肉がオレの身体を守る。

 だいぶヒットポイントゲージが削られてしまったようだが、半分以上減っているようだが、よかった。

 どうやらオレはまだ死んではいなかったようだ。

 生きている。

 まだオレは生きている。

 オレはアイテムボックスからポーションを取り出し、それを飲む。

 ごくごくごくと。

 うまい。

 本当に戦闘中のポーションはうまいな。

 クエストを終わらせたあとの酒くらいうまいぜ。

 と思いながら、オレはこれからもうまい飯を食べるために、うまい酒を飲むために、少しでも冒険者ランクを上げるために、こんなところで死ぬわけにはいかないと、オレはそう思った。

 そして雄たけびを上げた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」

 最後の力を振り絞ったオレのその攻撃は、ロック鳥LV25のヒットポイントゲージをすべて削り切った。

 ふう、と息を吐き、オレは周りにいるゴブリンたちを見る。

 まだいたのか。

 ゴブリンめ。

 オレは倒しきったロック鳥をアイテムボックスの中にしまうと、言った。

「こいよ、ゴブリン。お前らを倒したら、今日のクエストはこれで終わりだっ」

 ゴブリン三体は一斉に襲い掛かってくる。

 棍棒をもって襲い掛かってくる。

 だがゴブリン三体程度など、もうすっかり倒しなれているオレにとって、こいつらくらいはもう大したモンスターではなかった。

 雑魚モンスターと変わりなかった。

 オレはゴブリン三体をあっさりと倒すと、ゴブリン三体をアイテムボックスの中に入れて魔の森から出た。

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