第22話

 ちゅんちゅんちゅんという鳥の声で、オレは目を覚ました。

 もう朝か。

 モンスター討伐を毎日こなしているせいか、毎日熟睡することができているので、夜寝るといつの間にか朝になっている。

 異世界にきたばかりではモンスターとの戦闘ですぐに疲労がたまっていたけれど、もうその疲れにも慣れてきたようである。

「ふわー。顔を洗おう」

 といって、オレは洗面所で顔を洗う。

 鏡にうつるオレの顔はいつもと変わらぬ顔である。

 だが異世界にきて身体を毎日動かしているせいか、毎日日課のモンスター討伐をしているせいか、顔つきが少し変わった気がする。

 顔が痩せたというのだろうか。

 それとも少し顔が引き締まったと言えばいいのだろうか。

 しゅっとした顔になったような気もする。

 そして腕もまた異世界に来る前よりも、筋肉質な身体になったような気がする。

 身体強化を使えば、その身体の一部分の防御力を高めることができるし。

 また身体強化を使えば、その身体の一部分の攻撃力を高めることも可能だ。

 異世界というのは本当に不思議な世界だ。

 魔法もあれば剣もある。

 そして身体強化なんていう、不可思議なスキルなんてものもあるんだから。

 モンスターもいるし。

 そして今日も変わらず日課のクエストをやろうとオレは思った。

 だがクエストをやる前にいつもやっておくことがある。

 それは朝飯を食うことである。

 そろそろ朝食をユイカが持ってきてくれる時間だなと思っていると、ユイカの声が聞こえた。

「おっさん、朝ご飯をお持ちしました」

「おう。待ってたぞ」

 ユイカはテーブルに朝飯をおく。

 今日の朝飯は、パンにハムエッグである。

 相変わらず宿屋の飯はうまい。

「うめーな、まじで」

 オレは朝飯を食い終わると、そろそろ冒険者ギルドに行くかと宿屋を出ることにした。

 今日も変わらずモンスター討伐である。

 まあモンスターがありえないレベルで強いということもないので、割と気楽にモンスター討伐をしにいける。

 まあモンスター討伐の日給は安いが、それはまあ冒険者ランクが低いから仕方がないだろう。

 いずれはS級の冒険者になれば、もっと稼ぎのいい、そんな冒険者になることができるのではないだろうか。

 それまでの間は、うまい飯やうまい酒を飲んで、それまでの日を楽しみながら、S級になるまでの日を楽しみにしていればいいだろう。

 え? 

 S級になるための努力をするべきだって?

 そう言うのはなしだ。

 なぜならせっかく異世界にきたというのに、なぜ異世界でまで努力をし、S級にのぼらなければいけないのだ。

 せっかく違う世界に来たのだから、この異世界を、楽しむことを優先したほうがいいだろう。

 その結果、S級になる。

 それくらいのほうがいい。

 もしS級になれなくても、それはそれで構わないしな。

 せっかくの異世界なのだから、この世界を楽しまなくちゃ。

 というわけで、宿屋を出る。

 冒険者ギルドに行くまでの道には、今日もまた出店が出ていた。

 いつもは今日も相変わらず出店がにぎわっているなーとか、それくらいのことしか思ってはいなかったけれど、今日はどんな出店があるのか、見ていくことにした。

 今日くらいはいいだろう。

 まあ出店のものを買わなくてはいけない、というわけでもないしな。

 出店はまずは串肉屋の出店だった。

「兄ちゃん、どうだい? うまいよお、うちの串肉」

「そんなにうまいのかい」

 というオレ。

 じゃあせっかくなので、串肉を買っていくか。

「おっちゃん、いくらだい?」

「銅貨三枚」

 銅貨三枚、というのは日本円にして三百円ほどである。

「銅貨三枚か」

 というと、オレは串肉屋のおっちゃんに銅貨三枚を渡した。

「毎度ありー。にいちゃん、落とすんじゃねえぞ」

「おう。ありがとよ」

 オレは串肉を食いながら、ほかの出店を見て回る。

 串肉、うめー。

 ほんと、異世界の食い物はうまいぜ。

「兄ちゃん、いいアクセサリーあるけど、見ていかないか?」

 という声をかけられて、アクセサリー屋の出店を見て回る。

「アクセサリーか」

 アクセサリーの値段は大体銀貨三枚くらいのようだ。

 まあ買えないほどの値段ではないが、オレの日給の稼ぎともいえる金額を、すべてアクセサリーに使ってもいいのだろうか。

 いや、ダメだろ。

 飯や酒に使うのならともかく、アクセサリーにこんな金額を使うわけにもいかないな。

 まあもうちょっと日給を稼げるようになれば、ミリカにプレゼントとしてこう言ったものをプレゼントする、というものありかもしれないが。

「買うのはまた今度なっ」

 とオレはアクセサリーショップの店員に言うと、オレは冒険者ギルドへと向かって駆けだした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る