ソロキャンプ
ピーコ
ソロキャンプ
俺は40代のサラリーマン。最近、ソロキャンプにはまっている。週末は、ほぼ、ソロキャンプに出かけている。家族は妻と大学生の長女、高校生の次女がいる。
皆、それぞれに忙しいようだ。長女は、最近、彼氏が出来てデートによく出かけている。次女は運動部に入っていて部活に忙しそうだ。
妻は、妻で友達とよく出かけている。今日も出かける前に「キャンプ行ってくるな」と声をかけた。すると妻は「あっそ」と愛想なく言った。俺がどこに行こうと興味がないらしい。
去年で結婚20年経った。20年目の夫婦なんて、どこもこんな感じなのかな。
俺は、車を走らせた。しばらく車を走らせると目的地のキャンプ場に着いた。時刻は、15時過ぎ。
湖が目の前に見えるキャンプ場だ。それに、ここは穴場らしく、人もまばらだ。俺は、受付を済ませると、さっそくテントを張って寝床の準備をした。
周りに人もいないし、ゆっくり休めそうだ。1時間経ってから炭火をおこす作業をする。テーブルと椅子を出して、コーヒーを飲みながら、読書を始めた。
俺は、読書に没頭した。ずっと前に買っていたが忙しくて、なかなか読めなかった推理小説だ。なかなか、面白い話だな。
あたりが、だんだん薄暗くなってきた。そろそろ、ランタンをつけよう。
腹も減って来た。ぼちぼち、19時か。晩飯の準備に、取りかかろう。今日の晩飯は、チキンラーメンだ。CMで、見て、真似しようと前から思っていた。ソーセージに卵、最後にネギを散らした。
「あー、うっめー。外で食べる飯ってなんで、こんなに美味いんだろう」
食い終わるとキンキンに冷やしておいた缶ビールをまず一口飲んだ。「あー、うんめー」俺は、思わずつぶやいた。
焚き火を見つめながら、1人飲むビールは格別の味だ。つまみを片手にビールをちびちび飲んで、ボーっとする。至福のひと時だ。2本目のビールを開けた。
子供達が小さい時は、家族でバーベキューに行ったり、キャンプもしたが、最近は、誘っても知らんぷりだ。少し寂しい気もするが、1人の時間も大切だよな。俺は自分で自分に言い聞かせた。
ビールを飲み終わった後、スマホを見た。22時ちょい前か。そろそろ寝よう。食べたものを片付けて、俺は、テントに入った。
寝る前に、一応、LINEを確認した。誰からもメッセージなし。おやすみの一言でも送ってくれりゃーいいのな。俺は、思わず苦笑した。
酒を飲んだせいか、眠気が襲ってきた。俺は、いつの間にか眠りについていた。
それから何時間経っただろう。俺は、蒸し暑さを感じ目を覚ました。「あー寝苦しい。寝れない。」
するとザッザ、ザッザ、外から微かに音が聞こえてきた。動物の足音か❓
ボソボソ……。ん❓声❓「いるの❓」
ザッザ、ザッザ、足音が近くに聞こえる。声がどんどん、近づいてくる。「ねえ、どこにいるの❓」
誰かが、人を探してるらしい。こんな夜中に人を探してる。迷子にでも、なったのか。
俺はテントのジッパーを開け、その人の所へ向かった。
懐中電灯で、その人のことを照らすと、その人は、女性で、頭から足までびちょ濡れ。白いワンピースを着ていて、長い髪の毛から水滴が、したたっている。
俺と目が合うとニターっと不気味な笑みを浮かべた。この世のものでは、ないと察した。俺は逃げようとした。でも足が動かない。体が完全に固まった。
女は話しだした。「ねぇ、ひろゆきさんを知らない❓私、ひろゆきさんを探してるの❓」
俺は微かに動く口で言った「知らない」と。
女は、再び話しだした。「ひろゆきさんに、ここに連れてきてもらったの。とっても綺麗な湖があるから、君を連れて行きたいって。」
「あたし、プロポーズしてくれると思ってた。奥さんと別れるって言ってたから。それなのに、ひろゆきさん、奥さんとは、別れないって言った。」
「奥さんのお腹の中に赤ちゃんがいるって。私に赤ちゃんが出来た時は、今は、そのタイミングじゃないから堕ろしてくれって頼んできた。私、それを信じて、堕ろしたの。それなのに……。」
「ひろゆきさん、私に別れてくれって言った。私は、別れないって言った。そしたら、ひろゆきさん、私の首を絞めてきた。私、苦しくて苦しくて。そのあと、ボートで湖の奥まで運ばれて、捨てられた。最低な男。絶対に許さない。」女は、怒りで体が震えている。
俺は、言った。「俺が警察に、きちんと届ける。その男の本名を教えて。住んでる所と仕事先も。警察に、ちゃんと捕まえてもらうから。俺を信じて」俺は、女の目をまっすぐ見て言った。
女は、その男の情報を事細かに教えてくれた。俺は、携帯のメモに残した。
そして女は「わかった。いつまでも恨んでても仕方ないわね。あなたを信じる。私の話を聞いてくれてありがとう。」女は、それだけ言うと、スーッと目の前から消えて行った。
俺は、すぐに帰り支度をし、その足で警察に向かい、その男の情報を伝えた。
男は、すぐに捕まった。のちに湖で、女性の白骨死体が見つかった。身元も判明された。
俺は、再び、湖が目の前に広がるあのキャンプ場に行くことにした。今日は、1人じゃない。
ダメもとで、妻と娘達を誘ってみた。
「たまには、いいかも」妻がうれしそうに言った。妻が娘達に「ほら、あんた達も行くよ」娘たちも、「わかったよ。今日だけだからねー」と言ってくれた。俺は幸せな気持ちに包まれた。
ソロキャンプ ピーコ @maki0830
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます