第24話、変人だ!!!!



 川原に戻って改めて見渡して思わず苦笑い。


 砲撃にでもあったのかという程に地形が変わっていた。

 生態系を変える前にという以前に、地形が災害レベルで手遅れだった。

 何故ここまでになる前に気が付かなかったのか。

 毎日見てるからか。そうか。


「さーてとー、と」


 適当に座って購入した地図を広げた。


 街の右上ら辺に俺の第二の故郷である海があった。

 単語は知らないけれど、発音はなんとなくわかる。

 この海は、死を記録するメメントモリというらしい。なんとも物騒な名前である。

 とはいえ、あんな牙だらけだったらそうも名付けたくなるか。


 幸いにもスライムだったから食べられずに済んだわけだけど、実は何度か超巨大な生き物を牙達が水の中に引きずり込んで引き裂いて食べていたのを見たことがある。

 人間なんかひとたまりもないだろうな。


 そういえば、牙はヒノコのような特殊な能力は使えるんだろうか?見たことないけど…、そんなことしなくても強かったからなぁ……。


 話がそれた。

 地図の反対側に視線を移す。

 行くとするのならこっちだ。

 道なりに行けばそこそこ大きい街があって、森もある。

 俺はスライムだからそこら辺の物を食べれば良いし、食べずに保存しておく事も出来る。

 水も頑張って取り込んでおけばいけそう。

 寝るときも地面に潜り込んでしまえば防犯バッチリだし、襲われても怪我しない。


 うん。

 なんとかなるだろう。

 あとは、いつ頃──


「旅に出るかぁ」

「へぇ、旅に出るのかい?」

「!!!!!!」


 勇者らしきフルアーマーが隣に座っていた。

 こいつ!!!いつの間に!???

 というか!?ここら辺から居なくなったんじゃなかったの!???


 慌てて立ち上がり逃げようとしたが、手を捕まれる阻止された。

 びくともしない。

 今すぐにでもスライムに戻って地面に隠れたいけれど、きっとそうしたところで無駄な気はした。

 そんな俺の心境は他所に、フルアーマーのその男は何故か軽い口調で話し掛けてきた。


「この前の話の続きだけどさ、君、スライムだよね?」


 こいつはそんなことを暴いてどうしようと言うのだろうか?

 思考が恐怖で回らない。

 その時に、俺の内なるギャルが強制的にログインしてきた。


「は?意味わからないし」


 とりあえずすっとぼけよう。

 そう内なるギャルはそう判断したらしい。

 震えも止まり、むしろこの変態に食って掛かろうとする謎の勇気が沸いてきたらしい。

 表情もきっと変態を見るような引いた顔をしていることだろう。


 なのに目の前の男は自信満々に言い切る。


「私が見間違えるわけがない。高度な擬態能力だ。触感も話し声も表情も、人間そのもの。本当に素晴らしい…」


 一気に鳥肌が立った。

 なにこいつマジもんの変態なの!??

 こいつとはまともにやりあったらダメだと脳が切り替わった。

 やっぱり緩んだ瞬間に全力で抜いて逃げるしかない。

 でもその前に一つだけ確認しておかないといけないことがある。

 手を振り払って逃げたとき、生き延びられるのかの確認だ。


「……仮に、もしスライムだったらどうするつもりなわけ?ころすの?」

「いいや?」


 アーマー越しなのに笑顔になっている気配がする。

 それよりも先程の答えのが気になった。

 殺さない?どういう事だ?こいつは勇者なんだろ?なのにモンスターである俺を殺さない??

 疑問符でいっぱいになっている俺の頭に更なる爆弾が投下された。


「是非とも仲間になって欲しくてね」


 は??


「???」

「それに女の子の一人旅はなにかと危ないし」


 確信した。

 変態ではなく変人だ。


 訳のわからないこいつから一刻も早く距離を取りたくて手を振りほどいた。

 驚くほど簡単に振りほどけた。

 なんだこいつ俺がスライムなの分かっててなにいってんだこいつ。


「キモッ」


 よくわからないけど、良い感じはしなかったので全力で走って逃げた。






 街まで逃げ延びた。

 門番の人に心配されたけど、ごめん、今余裕ないんだわ。

 逃げたあと気付いたんだけど…。


「ヤバイ奴にヤバイ暴言吐いちゃった……、どうしよ…」


 内なるギャルがログアウトした後に残されたのは後悔である。

 そして焦りだ。

 今までは何故か見逃されていたけど、確実に次あったら確実に駆除されるっ!!!


「マジで早々に逃げなければ……」


 なんなら今日中にもだ!!!

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スライムの俺が騙されてギャルになりましたが何か? 古嶺こいし @furumine

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