先生、白衣似合ってますよ

「失礼します」


「はい、どうぞ」


「今日暑いですね、まだ4月半ばなのに」


「そうですね」


「あっつい……こんな暑いのにブレザー着なきゃいけないの嫌だ……」


「脱いでいいですよ」


「は、はひ!?」


「暑いんでしょう。ここにいる間だけ、良いですよ」


「あ……ありがとうございます!」


「そういえば、先生は白衣脱がないんですか?」


「大学の頃からずっと着ているので、脱いだら落ち着かないんですよ」


「へぇ……」


「暑い時は白衣の下に半袖を着ていますよ」


「それならまだマシそうですね」


「はい」


「そういえば、先生が化学を好きな理由ってなんですか?」


「……なんでしょうね」


「わからないんですか?」


「言葉に表すのは難しいですね、好きだから、としか」


「そうなんですか」


「あなたはどうなんです?」


「私……は」


「確かに、マンガも料理も運動も大好きですけど、楽しいからとか、好きだから、ぐらいの理由しか浮かびません」


「そうですか」


「はい」


「先生、また化学のお話も聞かせてくださいね」


「気が向いたら」


「ぶー」


「では今日はこの辺で」


「はーい、失礼しました!」


「ブレザー着るの忘れないように」


「はい! 先生、また来週!」





「先生……無愛想だけど、優しい」

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