23. イーコの決意
セレナは注意深く、ドラゴンが元居た場所へと向かった。
それにスイトとコルトも続く。
「それで?この男は何者だ?」
「コルトだって。鷹の爪?のコルト」
「”鷹の目”な」
間髪入れずにコルトが訂正した。
「そうそれ」
「”鷹の目”のコルトか。弓の名手と聞いた。俺はスイトだ」
「よろしくスイト」
呑気にスイトとコルトは自己紹介をしている。
歩を進めるにつれて、コルトと同行していたギルドのメンバーが横たわっているのを一人ずつ発見していく。
ほとんどが直撃を受けたのか、身体の一部が凍傷になっている。
セレナたちは見つけるたびに、薬液を使用し、助けた。
ストックに余裕があるわけではないが、重度の凍傷も見られ、すぐに治療しないと危険な状態だった。
イーコは、ドラゴンが吐き出す冷気を、向いている方向と反対側へと移動して、余裕をもって回避していた。
ドラゴンの攻撃は長い射程であり、扇状に広範囲に広がるほどの威力を持っている。
しかし、発射地点はあくまでその口であるがゆえに、ドラゴンに近い方が、避けるのは簡単だ。
同じように、コルトと同行していたギルドの一人も、ドラゴンの攻撃を避けて無事の様子だった。
「くそ……俺以外に無事な奴はいないのか」
そう言いながら、男は斧を構え、一人でもドラゴンに挑もうとした。
そこに、今まで身を隠していたイーコはようやく姿を現した。
「なんだ、お前?」
まだ離れた場所から、イーコが腕を振るったと思うと、男は斧を取り落とした。
「なっ?!」
見ると、イーコの手には鞭が握られている。
目にもとまらぬ速さで鞭がしなり、男の手へと的確に当たり、斧を落としたのだった。
「ごめんね。恨みは無いけど、二度と来ないかもしれないチャンスなんだ」
「何言ってやがる!」
男は再び斧を拾おうと身をかがめたが、イーコはすばやく距離を詰めながら、再び鞭を振るった。
男の首に鞭が巻き付き、イーコの方へと引っ張られ、斧を拾えずに前のめりによろめく。
そして男が顔を上げた次の瞬間には、イーコの膝蹴りが男の顎へとヒットし、男は吹き飛ばされた。
「ぐぁッ!」
男はそのまま二度と立ち上がらなかった。
そんな光景を、まるで道にいる虫には興味がないかのように、ドラゴンは見向きもしていなかった。
そしてイーコは、ドラゴンへと近づいた。
自らの首に魔法を唱え、契約を申し出ようとしているのだった。
女剣士なら負けんし! @rin-mi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女剣士なら負けんし!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます