わたしはぬいぐるみ in UFOキャッチャー KAC20232

ながくらさゆき

お兄さんと一緒にいたい

「おはよう、うさちゃん」

おはようございます、お兄さん。

「今日もフワフワだね」

うふふ。

お兄さんも今日も髪型キマってますね。


わたしはうさぎのぬいぐるみ。

UFOキャッチャーの機械の中に住んでるの。

UFOキャッチャーと言ってもゲームセンターのじゃなくてスマホアプリの。

ぬいぐるみを手に入れたい人達が遠隔でアームという下に伸びた爪を操作してるらしいわ。

機械の穴に落とされたら箱に詰められてその人の元へ送られるの。

わたし取りづらいみたい。

いつのまにか古株に。

工場で作られて他のぬいぐるみ達とここへ来た。

皆は早々にアームに引っ掛けられて穴へ落ちていった。

毎日アームではさまれたり、長い耳をはじかれたり、タグが付いてる輪っかに引っ掛けられて逆さ吊りにされたり、いろんなことをされたわ。

それでもわたしはしぶとく落ちないでいる。

今日もアームで体のあちこちをはさまれる。


お兄さんがやってきた。

「うさちゃん、全然取れないって苦情きちゃったよ」

うふふ。

「取りやすい位置に移動してあげなくちゃ」

えっ、そんなことしたら。

お兄さんともう会えなくなっちゃう。

そんなの、やだ。

毎日お兄さんが話しかけてくれるの嬉しかったのに。

お兄さんはいつも優しい。

他の人は無言で定位置に戻すけど、

お兄さんはわたしの体についたアームのあとをそっとなでて毛並みをととのえてくれて

「フワフワだね」って笑いかけてくれるの。

穴に落ちたらもうお兄さんと、さよならしないといけない。

なのに、わたしは穴の近くに配置された。

アームが何度もわたしをはさもうと近づいてくる。

あっ。

足をはさまれて倒された。

うつぶせになった。

穴が見える。

アームがわたしのおしりを何度もかいてくる。

おしりを押して穴へ落としたいみたい。



あっ。

落ちた。



「うさちゃん」

お兄さんがわたしの顔をのぞきこむ。

そしていつものようにわたしの毛並みをととのえてくれた。

さよなら、お兄さん。わたしは誰かのおうちに送られる。















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わたしはぬいぐるみ in UFOキャッチャー KAC20232 ながくらさゆき @sayuki-sayuki

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