447 シヴァより強い人は誰?

「あーさっぱりした。あいつらをぶっ飛ばせなかったのは残念だったけど、こき使われるのは確定だからいい気味だし」


 キエンダンジョンマスターフロア。

 シヴァは肉や野菜を鉄串に刺し、炭火焼きのバーベキューコンロに載せながら感想を述べた。

 面倒事が片付いた後はもちろん、宴会である!

 いつも賑やかに宴会しているような気がするが、いつでもやっていいものが宴会だ。


「ようやく事情が分かったしね」


「あれもこれもそれもアカネのおかげ。さすが、頼もしい奥様!さすおく!」


「はいはい」


 もふもふ二足歩行猫ゴーレムのにゃーこたちも、食材を焼いたり、神獣二体と従魔のバロンに給仕したり、と働いてくれているので、シヴァたちもゆっくり食べる余裕があった。

 フェンリルぬいぐみゴーレムの一号も、食材運びのお手伝いをしてくれているいい子である。何かとお手伝いしたがるので、【重量軽減】付与したリュックを作ってプレゼントしたのはシヴァだが。


 コアたちとの打ち上げは、また改めて、ということになった。

 知的生命体は飲み食い出来ないので、シヴァとアカネの知識を提供した方が遥かに喜ぶし、労いにもなる。


【むずかしいことはわかんないけど、シヴァとアカネさん、もうこきょうにかえらないってことでいいんだよね?】


 ぱかっと開いた貝にバターと醤油を入れながら、デュークがそんな確認を入れる。ふわりといい香りが漂い、シヴァも食べたくなったので、こちらのグリルにも貝を追加する。


「そう。手紙のやり取りは出来るみたいだから、それでいいかな、と」


 あちらとは時間の流れが違うので、こちらはまったりペースになるが、その程度でいいだろう。

 いずれはちゃんと調査して法則を知り、時間の流れに関係なく、こちらの都合のいい時間で連絡が取れるマジックアイテムを作ろう。


『そもそも、シヴァはもう半神の域に入ってしまってるから生身では帰れん。我が神も勧誘しとけとおっしゃってたぞ』


 熱いのがまったく平気なカーマインが、デュークが切って分けたバター醤油貝を嬉しそうにクチバシでついばみながら、そんなことを教えてくれる。


「まっぴら。神様って制限がたくさんありそうだし、つまらなさそう」


「最終的に責任を取るのが神様だしね」


 イディオスのお椀にご飯を盛り付けながら、アカネがあっさりそう言う。


「確かに。今回も結局、そうなってるし」


『アカネは物事の本質を見抜くのが得意だな』


「自慢の奥様なんで」


「ふふん♪」


『本当にアカネはすごいな。全然、思いもよらなかった方向から解決するとは思わなかったぞ』


 パクパク料理を食べながら、イディオスもアカネをベタ褒めした。


「色々と考えてたんだよ。シヴァ自身は自分の価値をよく分かってない所があるから、狙われた理由はその辺かな、と目星は付いてたしね」


『あるある、分かる!そこまで力があるのに、何故、いまだにまだまだ自分より強い人が、とシヴァが思っているのかよく分からんし』


 食べ頃の肉串をわしっと前足で掴みながら、カーマインが大いに同意した。


「世界って広いだろ」


 シヴァはご飯を盛った丼に、焼き野菜と焼き肉をたっぷり載せ、特製タレをかけて美味しく頂く。


【なんか、かんかくがズレちゃってるの?シヴァって】


 今度はパリパリに焼いたエビを食べながら、デュークもそんなことを言い出す。


「育った環境が規格外の巣窟そうくつだったからね…」


 アカネが少し遠い目をするが……。


「それ、アカネも入ってるからな?」


「端っこの方にちょっとだけでしょ」


「アカネも自分自身を過小評価してるじゃねぇか」


「そうでもないって」


『いやいや』


『シヴァに一票』


【アカネさんもそうとうだよ…やっぱり、そばにいるとかんかくがズレちゃうんだね…】


 たっぷり飲み食いし、ちゃんとデザートにフルーツ乗せアイスを食べてから、今後、【ぐーるぐる】で何を探すかの優先順位をコアたちも含めてみんなで話し合って決めた。

 二台あるし、何なら更に増やせるので自由度が高い。

 上位に来るのは当然、食材である!

 穴子の美味しさにデュークも大賛成していた。


【あ、ねぇねぇ、【ぐーるぐる】でシヴァよりつよいひとって、さがしてみたらどう?このせかいで】


 ふと、デュークがそんなことを言い出した。


「そんなん【ぐーるぐる】を使うまでもねぇって。アカネだ」


「あ、やっぱり?」


 アカネも自覚があったようだが、苦笑じゃなく、いたずらっぽい笑顔だった。可愛い。


『当然だな。今回のことでもよく分かったし』


『世界の命運を握ってるのはやっぱりアカネか。頑張れ!』


 イディオスが頷き、カーマインが気楽に応援した。


「ものすごく軽く応援するし~」


 まぁ、それは仕方ない。

 シヴァの奥様をやっているのだから。


 『快適生活の追求者』の妻もまた『快適生活の追求者』なので、この先、どれだけ大きな力を得たとしても、世界征服なんてまるで考えず、生活に密着したことに力を使うことだろう。


 世界のバランスが崩れそうなトラブルがあった場合は、しょうがなく解決しつつ。

 そうじゃなければ、神々もあっさりと加護をくれるワケがなかった。



             ―――――――――――――完!







――――――――――――――――――――――――――――――

ここまでの大長編、読んで頂き有難うござました!

…と言っても、シヴァたち視点の話が完結なだけで、現地主人公のスピンオフの方にも出て来ます(^^)v


「快適生活の冒険者~禍福転変かふくてんぺん~」

https://kakuyomu.jp/works/16817330658550287434


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快適生活の追求者2~珍味佳肴時々ゲリラ~ 蒼珠 @goronyan55

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