436 被験体として色々と使えるのでは?

 ギレンの使い魔妖精、蝶の羽を持つ小さい人型のマルティカは、色んな有益な情報を持っていた。


 「それ、話していいのか?」という所も無邪気に話してくれるので、まぁ、悪用はしないでおこう、とシヴァは思った。


 妖精と精霊の違いは、妖精は物質化していて食べ物も必要、精霊は基本的に魔力があればよく、気分次第で物質化も出来て高位精霊は寿命がない所が違うらしい。

 太古の昔は妖精と精霊の区別はなく、どちらも精神生命体だったらしいが、詳しくは知らない、とか。


『でね。昔のエルフはかなり酷いのよ!ほとんど強制的に若い精霊を捕まえて使役して、使い潰して消滅させちゃったりしてたし!【精霊魔法】とか言うの、作ったのも昔のエルフなのよ!』


『今はそこまで強力な魔法じゃなさそうだけど、誰かが滅ぼした?』


『今もエルフはいるんだから滅んでないでしょ。減らすのはいいけど、滅ぼすのはダメみたいよ。水の精霊王が怒って、大半のエルフたちの水分を抜いて殺したって聞いたわ』


 生きたままミイラか。

 中々えげつないが、激怒するのも当然だった。


『そりゃ怒るわな』


『そうよね!エルフたちの力を削ぐのは他の精霊王も協力したみたい。でも、まだ気持ち悪い昔のエルフが生き残ってるのよね。半分精神生命体とかで…あ、これはギレンに『黙ってろ』って言われてたんだった』


「いや、とっくに知ってたから。神獣と友達なんで」


 慰めじゃなく、本当だった。有用な情報がないかと片っ端から話を聞いたので。

 ほら、食えよ、とマルティカ用にとアカネが顕微鏡より細かくズームアップが出来る【ドラゴンアイ】を装着し、小さく小さく米粒サイズに作ったミニミニチョコをシヴァはすすめた。

 マルティカは手のひらサイズの大きさなので、通常サイズのお菓子では大きいのだ。色んな種類が食べたいマルティカとしても不本意なことに。

 通常の器具でも爪楊枝でも大きいので、アカネが錬成している。通常サイズ同様に味も形も損ねないように、というのはシヴァにも無理だった。要修行である。


『うん、ありがとう。でも、友達の神獣様ってフェニックスの?』


 ティアマト国からはまだブルクシード王国の方が近いので、マルティカも知っていたのだろう。


『フェニックスもフェンリルもどっちも。それで、その長生きエルフって『ハイエルフ』って言われるヤツら?』


『そうそう、それよ!自ら名乗ったらしいわ。何が『ハイ=格上』よ、誰も敬わないから自称するのねって妖精たちにも精霊たちにも大笑いされてるわ』


『た、確かに』


 マルティカの容赦ない言い方にもシヴァも笑わせてもらった。


 そんな笑える話はともかく、エルフの里の場所も知っていたので教えてもらった。

 代価は髪飾り型時間停止のミニマジック収納。ミニミニお菓子をたっぷり詰めて、だ。外観が小さいだけで容量は100m四方。それ程、価値がある。ピアスサイズぐらいなら、シヴァにもミニサイズの作成は可能だった。


 マルティカの契約者のギレンに気付かれないよう、というのは多分、無理なので、正直に「ある錬金術師兼魔道具師に情報の対価でもらった」と伝えるようマルティカに言う。


『本当に言っていいの?そこまで言えば、この前の病気の子の件で、わたしがどこから情報をもらったかバレちゃうよ?こんなに小さいマジック収納なんて、シヴァ以外に作れる人なんていないだろうし』


 妖精のマルティカでも、ギレンの使い魔をやっているだけに人間の魔道具レベルをそこそこ知っていた。

 確かに、シヴァ以外にミニマジック収納…小さめのピアスサイズで作れるのは、ダンジョンコアたちぐらいだろう。知的生命体であって人間じゃない。


『問題なし。もう終わった話だしな』


 むしろ、『にゃーこや関係』と匂わせた程度の方が真実味が出る。

 「騙してごめんな~」とシヴァが軽くネタバラシすると、ギレンは怒り狂うタイプだろう。シヴァにとってギレンは脅威にはなり得ないが、相手にするのも面倒臭い。


 …いや、でも、ギレンは霊薬で若返ってるので被験体として色々と使えるのでは?

 ステータスもそこそこ高い。

 召喚士としてのノウハウも教えて欲しい。

 ギレンとしてもメリットは大きい。協力してくれるのなら、貴重でレアな霊薬が使いたい放題だし、装備も最上装備を揃えられるのだ。

 もちろん、どういった協力か、で報酬は変わるが。


『…うん、くれぐれも『にゃーこや』の敵に回らないよう言っとくわ』


 シヴァとマルティカとは念話で話しているので、感情が伝わり易い。不穏な雰囲気を感じたのだろう。


『ギレンが協力してくれると嬉しいんで、また改めて挨拶に行くけどな』


 依存されるのもウザイし、成長をはばみそうなんである程度の距離は取るが。


『え、いいよ、そんな。ギレンも会いたくないと思うな!』


『遠慮せずとも』


『遠慮じゃないから!…じゃ、またね!』


 そそくさとマルティカは飛び去って行った。

 またね、という辺り、『怖い』<『アカネのお菓子』でハマっているのだろう。



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