416 わたし、からくり屋敷が作りたい!
何事もなく進み、夕方までにハイマ村に到着して一泊。
宿はなく村長の家で有料で泊めてもらえるが、数人限定でベッドもない所での雑魚寝なので格安だ。
ソウザたちだけ泊まり、シヴァたちは空き地で野営。
最初から野営なのは聞いてるし、その方がいい。時間停止の収納に入れてある食材が好きに使えるので。
春とはいえ、日が落ちるとかなり気温が落ち、肌寒いを通り越して少し寒いぐらいである。
寒暖耐性持ちのシヴァとアカネは全然平気だが、リミトとサーシェはそうではないので、温まるものにした。
ピリ辛キムチ鍋である。
少し辛い程度でも温まる。
皆で鍋をつつく文化はないのだが、リミトとサーシェはホテルでもやっているので、大鍋で問題なかった。
味変でとろけるチーズも用意。これまた合うのだ!
具は肉、魚介両方の贅沢さ。
「みんなにズルイって言われそうだよ~」
リミトがそんな風に嘆いた。
「話さないっつー選択肢はないワケだな」
「にゃーこに頼んだら出て来るんじゃないの?」
サーシェが不思議そうに言う。
「キムチ鍋なら出て来る。具はここまで豪華じゃねぇけどな。そこは仕事上の役得で」
「シヴァが持ってる食材ばっかりだしね。たまに差し入れてるんだから、それでいいでしょ。それでも文句言うようなら…あ、シヴァ、五ヶ月過ぎたよ?」
「うん?…ああ、調子に乗って来る頃合いか。能力を制限する『封印の腕輪』は作ってあるから、孤児院に打診しとかねぇとな」
「え、本当にやるの?前に言ってた『研修』ってヤツだよね?」
さらっと話しただけだが、リミトは覚えていたらしい。
「そう。ホテルも軌道に乗って来た所だけど、全員いなくてもいいしな。交替で一週間ずつ。既に冒険者のリミトとサーシェ、登録はまだ出来ねぇけど、十歳で時々冒険者もやってるマシューとリオンは免除。慢心はしてねぇし、抜けたら回らねぇこともあって。ラリーも十歳で苦労して来たから大丈夫だけど、みんなと研修に行きたいかもしれねぇし、本人次第で」
虐待されていたラリーを保護した時は七、八歳にしか見えず、かなり、衰弱していたこともあり、中々健康と言えるまでにはならず、教育も遅れ勝ちで、ようやく、最近、ホテル従業員として働けるようになった。
同い年のマシューとリオンと一緒に行動させるのは、ラリーはまだまだ戦えないので。
「行きたがるかな?孤児院ってぼくたちがいた所なの?」
「全然別の他国にしようと思ってる。ついでに内偵。酷い待遇なら上からの命令で改善させる。ウチの子たちなら生活魔法程度しか使えなくても、頭使えば大丈夫だろうし」
一石二鳥だ。
「それいいね。どうしても探り切れない所もあるし、やる気のある子のスカウトもしてらっしゃい、で」
「一石三鳥だな。で、スカウトした子たちが来年は研修に行って、毎年恒例にすると、一挙両得。従業員が増えたら他国にもホテル作るか」
「いいね!わたし、からくり屋敷が作りたい!」
「だったら、忍者の里風じゃね?」
「忍術も教えて?魔法やスキルとどう違うのってのも色々あるよね!」
「
「水蜘蛛で池を渡るアトラクションも…ううん、アスレチックも作ろうよ!」
「だったら城は?忍者は御庭番だろ。いっそ体験型テーマパークにして、炎上する城も再現したいな。内部が曖昧過ぎるけど」
「…そういったノリでホテルにゃーこやが出来たんだね」
「全然、言ってることが分かんないけどね」
「結構、自制してるって。簡単にマネ出来そうで使い方次第では危ないものは出してねぇし。ジップラインとか熱気球とか」
「熱気球は平気じゃない?そういった原理を研究してる人って全然いないし」
「価値に勘付いた人がこっそり研究者を集めて研究してるかもしれねぇだろ」
「えー?買いかぶりじゃないかなぁ」
従業員たちとスカイランタン遊びをしたことがあるので、リミトとサーシェは懐疑的だった。
「で、ジップラインって何?」
「遊びにも脱出にも使える」
シヴァは紙にイラストを書いて説明してやった。
別に滑車を使わなくても、滑りのいいロープと丈夫な布でも滑ることが出来る。
まぁ、魔法を使った方が早いワケだが、魔法を使わなくても高所から速く移動出来る手段は目から鱗だろう。
リミトとサーシェも考えたことがなかったらしく、驚いていた。
まぁ、忍者のテーマパークはともかく、研修で従業員を増やす計画はありだろう。
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関連話「番外編53 君が君でいられるように」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093080232955183
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