367 大勢の部下たちがいねぇと、怖くて話も出来ません?

 翌日。

 シヴァたちが学校へ行くと、見張りが待ち伏せていた。

 数は減ってはいるものの、まだ付いていた。

 いくら公主直々の命令でもバレなければ問題ない、と考える人もいるのだろう。


 午前中の講義は問題なく終え、また昼食に誘われたものの、移動時間を考えるとゆっくり出来ないので断り、さっさと冒険者ギルドに影転移して報酬をもらうと、さっさと市場に移動した。


 今日の昼食は裕福な商人やお忍び貴族向けの、予約が出来て個室もある少々お高めの食堂で食べる。マクグリーンから聞いて一昨日、予約しておいたのだ。

 評判がいいだけあって美味しかった。バリそばみたいなものまであった。


 愛想のいいデュークのおかげで、サービスのデザートまでもらった。店員の質までいい。今度はアカネとまた来よう。


 大満足の昼食後、市場から巡回騎獣車が出ているのはちゃんとチェックしてあり、時間も調べてあったので、それに乗って空獣騎士団の詰め所まで移動した。

 並走させるのもすれ違う人たちを驚かせるので、デュークとバロンは小型化、幼獣化して。


 予想していたのか、停留所の近くで空獣騎士が二人待っていた。

 一人はアンリファン、もう一人も先日来た騎士だ。


「シヴァ殿、わざわざご足労頂き感謝する。……え?今日は別の従魔なのか?」


「いや、一緒」


【こがたかスキルをつかってただけ】


 デュークはシヴァの腕から降りると、ポンッと通常サイズに変更した。

 じゃあ、とばかりにバロンも腕から降りて幼獣化を解いた。


「スキル……ええっ?グリフォンってスキルを使うのか?」


「個体差はあるだろ。たまたまスキルオーブを手に入れたんで。こちらはデューク、こちらはバロン」


「改めて、おれはアンリファン、こちらはヌサカーン。スキルオーブを従魔に与えるというのは初めて聞いた。中々ドロップしない貴重な物だろう?」


「そうか?ダンジョンにもよると思うぞ。そもそも、『小型化』スキルなんて人間が使っても使い所がないと思うが?」


 不便なだけだと思う。


「あーまぁ、それはそうか。では、早速だが、こちらへ」


 アンリファンとヌサカーンが先導し、詰め所の建物へ入り、その裏手にある従魔がいる広場へと案内された。

 そこには従魔たちだけじゃなく、大勢の騎士たちが待っていた。

 ガタイのいい男たちが大勢いれば、威圧的になるので、有利に交渉を進めたい、というのもあるのだろう。


 出て来た扉にはさり気なく騎士二人がたたずみ、他の出入り口は広場の向こう側ぐらいか。

 空を飛ぶ従魔ばかりなので不便はないし、貴重な従魔の警備の関係でも出入り口は少なくしているのだろう。


 囲まれたと言ってもいい状況だが、シヴァたちはまったく平気だ。

 当然、愉快ではない。


「わざわざご足労頂き、感謝致します。わたしは空獣騎士団団長ベルサス。Cランク冒険者のシヴァ殿ですね?」


「ああ。しゃべるグリフォンが見たくて集まったのか?」


「いやはや、申し訳ない。噂は色々聞きますが、本当にしゃべるかどうか、半信半疑の者が多くて」


【しゃべるけどね。にんげんのことばをりかいしていて、ねんわもつかえないと、しゃべらせられないよ】


 おおっ!と驚きの声が上がる。


「見世物かよ。暇なんだな。空獣騎士団って。そんなに暇ならせっせとダンジョンに潜って腕を磨けばいいのに」


【しんらつ~。だけど、いいたくなるよね。おおぜいにかこまれてるし、そのまえもみはりをつけられたりしてるしね!きしだんだけじゃないけど】


「口先だけで謝って敬語使うだけで対等に交渉する態度じゃねぇだろ。大勢の部下たちがいねぇと、怖くて話も出来ませんってか?こっちは手ぶらなのに、あんたらはフル装備だし?」


 どこが『くれぐれも失礼のないように』な態度なのか、教えて欲しい。


「いや、それは、万が一があってはならないと…」


「まぁ、一瞬で無力化出来るワケだけどな」


 【見せしめ】を更に改良して派手に音を鳴らし、騎士たちだけに大型雷を落としてやった。

 あくまで【幻影】でパラライズを打ち込んだだけである。

 シヴァたちと空獣騎士団の従魔たちにはしっかりと防音遮光結界は張ってあった。罪のない従魔には優しく、だ。


 幻影雷に目がくらんで痺れてしばらく動けない騎士たちは放って置き、空獣たちに『脱走したいのなら手伝うぞ』とシヴァが念話で持ちかけたが、ここで生まれ育ったものが大半で『散歩を多くして欲しい』程度で特に不満はないらしい。

 皆が皆、念話が使える程知力が高いワケではなかったが、何となくでも意思疎通は出来た。


 このまま帰ると、何だかんだと話を盛るなり冤罪をかけるなりで指名手配されるだろうから、話を付ける必要があった。


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関連話「番外編52 「君を愛することはない」と言われましたが、どうでもいいですわ。え?もう撤回したいのですか?知りません。わたくしに関わらない所で幸せになって下さい」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16818093079421752807

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