235 そんなにすなおにいうこときく?
宿に戻って、しっかりと宿の朝食も食べた後、シヴァとデュークは冒険者ギルドに顔を出した。短時間で終わりそうな依頼があれば、受けようと。
デュークに驚かれはしたが、珍しい従魔連れは時々いるらしく、そこまで騒がれはしなかった。ちゃんとスピーカーは切っている。
今日は時間が早いので掲示板前も混雑していたが、170cmぐらいのアルではなく190cmオーバーなシヴァなので、掲示板が余裕で見えた。
抱っこされてるデュークは見えないので、片眼鏡の【ドラゴンアイ】を装着。人が前にいても素通りして千里眼で見えるのだ。
ダンジョンのない街で、国境の近くだと、商人護衛依頼より魔物討伐依頼の方が多かった。
隣国から来てすぐ魔物に襲われる、となると、国の印象も悪くなるからだろう。森が近くだと森の恵みも多いが、それだけに魔物が増えるのもしょうがない面もあった。
『街道整備のための資材運びは?』
『ホントにはこぶだけなのもさぁ』
『じゃ、地道に常設依頼の薬草採取は?こっちは植物分布がかなり違ってるようだから、楽しめそう』
『…SSランクのシヴァにそんないらいって、いいのかなぁ…』
『いいに決まってるだろ。じゃ、ついでにトレント討伐依頼も受けるか』
Dランク依頼だが、依頼が出た日付は数日前で、残っているということは人気がないということだ。Cランク冒険者でも構うまい。
『のこってるってことは、なんかあるんじゃないの?』
『受付で訊けば分かるだろ』
シヴァはトレント討伐の依頼票を持って受付の行列に並び、順番になってから訊いてみた。
「ああ、この依頼は森の奥の方で、トレントに遭遇する前に色んな魔物に遭遇するので、割に合わないからですよ。トレントはその素材が結構いい価格で売れるので定期的に依頼は出ていて、割が合わないのも広まってるんです」
正直に教えてくれる受付嬢である。事前に言わないと文句を言われるのもあるだろう。
「色んな魔物も討伐するだけじゃねぇの?その魔物の素材も売れるワケだし」
「そう言える冒険者も少ないんです。シャドーパンサーもいるようですし」
シャドーパンサーはBランク魔物だ。
群れならAランクになるぐらい、連携を取って来るが、それはダンジョン内のことで、ダンジョン外ではそこまで数がいない。餌になる魔物がそれ程いない、ということだろう。
「そりゃいい。討伐せず、従魔にしてもいいんだよな?」
『便利そうな魔物がいたら従魔にしたら?』と言い出したのはアカネである。ホテルの従業員としてでもいいし、と。
従魔契約を破れないので人間より余程信頼出来るし、争いが起き難いこともあって。
人間の魔法を使った雇用契約は他言無用は厳守されるが、それ以上、となると意志を縛ってしまう。
ちなみに、テイムは魔力に左右されるので魔力が少なければ、低ランク魔物が一匹だけだが、シヴァだと足切りなしだ。
神獣すらテイムして神格を奪ったことすらあるのだから。
「シャドー種を、ですか?」
「便利そうだし」
『ぼくがいてもまだじゅうまがほしいの?』
デュークが念話だけで不思議そうに質問する。
「シャドー種はその名の通り、影魔法が使えるんだって。つまり、影収納に入れて放置しといてもいい」
シヴァはデュークと受付嬢に、シャドー種の従魔が欲しい理由を説明してやった。
『いや、ほうちはダメじゃない?』
すかさず念話でツッコミを入れるデューク。
「影収納ってことは、あなたは影魔法が使えるんでしょうか?」
「ああ。だからこそ、捕まえるのは造作もない」
『どのまものだって、シヴァにはかんたんだとおもう~』
『シヴァ言ってるし』
『マスター』
『子供たちの護衛と収納係にもいいだろ。影に潜ませとけばいいんだから。それに影転移も出来るから、鍛えて距離を伸ばせば、ちょっとしたお遣いに出すことも出来る』
『あ、それはべんりだね。でも、そんなにすなおにいうこときく?』
『そこは説得して』
『ぶりょくで?』
『色々使って』
シャドーマントヒヒはバカ過ぎて却下だが、Bランクのシャドーパンサーならそこまでバカじゃないだろうし、従魔に出来そうな目算があった。
「受注よろしく」
「分かりました」
従魔と何らかやり取りはしたのは分かったらしく、受付嬢はすんなりと依頼受注手続きをした。
では、張り切って討伐に、とシヴァたちは冒険者ギルドを出て街を出てバイクで走り、森に入って薬草採取もしつつ、半ばぐらいまで来た所で、またテンプレに遭遇した。
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一周年記念SS「番外編34 爆誕!呪われた村」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330669449266458
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