148 うちの基本はちゃんと食って寝て遊ぶ

「その連想が怖い」


 アカネがツッコミを入れた。

 太らせてから食べようとお菓子の家を作ったのが悪い魔女だ。


「そう簡単に信用するな、子供を捨てるな、という警鐘にもなるだろ」


『えほんてなに?』


「あ、見たことねぇか。絵がたくさん付いた本。子供向けだな。話の内容はおとぎ話、夢のあるお話や教訓話。文字が分からなくても何度も読み聞かせをして行くと、読めるようにもなる。デュークは読み書きの教科書からだな」


 これ、と読み書き小冊子の教科書を出した。


「デュークには小さ過ぎない?前足で押さえたら隠れちゃうし」


「そうだな。大型版を後で作ってあげよう。ついでに、グリフォン版タブレットも。その前足では文字覚えても文字が書けねぇし」


「そういえば。タブレットもどこかに固定出来ないと使い難いよ。腕時計タイプ?」


「どっちかというとコミュニケーター?首輪にアイテムボックスと【チェンジ】を合体させたような収納を付けたから、出し入れは不便ねぇし」


「それはすごい。画期的だね。…あ、わたしはマジックバッグで間に合ってるんで。影収納もあるし」


「言うと思った」


 不便なんて全然ないし、手ぶらだと余計に目立つということもある。なので、アルも武器の装備はしてなくても、マジックバッグだけは持っている。


『やっぱり、かなりすごいものなんだね。で、たぶれっとって?』


「多機能便利ツール。思念操作出来るし、音声でも文字に変換して表示してくれる。紙に書くのと違って何度でもやり直しが出来るのが便利な所。表示したものを紙に印刷…紙に写すことも出来るから、手紙も書けるようになるってワケ。届けるのはおれの転移になるけど、移動してようが閉じ込められてるだろうが影に潜ってても、ファルコの首輪が目印になってて、そこに届く。狩りしてる最中だと迷惑なんで連絡取ってから送るってことになるな。ファルコは文字は?」


『よむのはできたよ。すうじはかけた』


「鳥の足だしねぇ」


「ファルコにタブレットを渡すのはかなりマズイ。念話は通じるようになってるんだから、ベレットさんに代筆してもらえばいいだろ」


『なんかぼく、ものすごくとくべつになってない?』


「おうよ。うちの子だから当然な。危険遭遇率もそれだけ上がるし」


「シヴァがついてるからまず大丈夫だけどね。人間はいい人ばっかりじゃないワケで。そのぐらいは知ってる?」


『うん』


「万が一のため、収納に入れる食べ物を後で用意するけど、勝手に食べ物をあげるのはダメね。ウチの食べ物は美味し過ぎて欲しがられてキリがないから。デュークが食べるのは全然いいよ。食べ過ぎなければ」


「お腹壊すからな。食べ物は豊富に用意するけど」


『うん!おやつまであるのってすごいよね!おなかへっててもたべられないときもあったし』


「旅してるとそんな時もあるだろうな。うちの基本はちゃんと食って寝て遊ぶ、だから」


「で、物作りも基本で、たまに依頼を受けたりたまに人助けしてるワケね」


 その通りだ。


『おしごとは?』


「依頼を受けるのが冒険者の仕事だろ。一応、副業がにゃーこや…カップラーメンや小冊子を自動販売魔道具で売ってる商会。ダンジョン下層のセーフティスペースにカップラーメンの自販を設置する予定だったんだけど、立て込んだんで中断してるな。被災地に差し入れてもよかったんだけど、無駄に争いが起こりそうなのがちょっと」


「あーだよねぇ」


『ダンジョンかそう?もうそとではうらないの?』


「売るだけの食材がねぇんだよ…ということになってる。既にたっぷり収穫貯蔵済。採算が全然取れねぇんで商売じゃなく、道楽なんでこっちの好きにやってこそ。保存食なんで相応の場所で売る、ってことで、食料が乏しくなる下層ってワケだ。そもそも、カップラーメンは一般人向けじゃなく、冒険者向けなんだよ。一般人は普通のラーメンでいいだろ」


『ふつうのってどんなの?』


「まぁ、今度食べさせてやるって。麺類食い難くはねぇの?」


『へいき。なんでもたべるよ~』


「夕食にミニラーメンを付けるのはどう?デュークの歓迎会と収納に入れる料理を兼ねて、色々作って」


「いいな、それ。じゃ、決定で」


 デュークは食べ過ぎ注意だと思い知ることになるだろうな、と思い、シヴァもアカネも笑った。



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新作☆「番外編28 主様(ぬしさま)の花嫁は幸せを掴む」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330667208086573


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