147 「茹で鳥?」「低温調理だな」
「デュークが自分で狩りが出来るようになった時、獲物がでか過ぎて全部は無理、ということがなくなるし、しばらく入れておいても腐ることもない。結構、大容量だからな」
Sランク魔石が豊富にあるので200m四方で作っておいた。『大は小を兼ねる』だ。
『って、シヴァ。ものすごくたかいんじゃないの?』
「国宝より性能がいいのは確実」
『……そうなんだ。ちょっとこわくなってきた』
「おれの庇護下にあって何が怖いんだか。転移を何度も体験しただろ?連絡出来ねぇ状況でも、デュークがステータス異常の場合、おれにも連絡が来るようになってるから、一瞬で駆け付けられるし、引き寄せることも出来る。何があっても大丈夫」
『あ、そっか。それもすごい。でも、いまのぼくにこんなにようりょうのおおきいしゅうのうもらっても…』
「輸送の手伝いもしてもらうからだって。復興途中なんだし、重いのもかさばるのもいくらでもある。グリフォン特有のスキルでデュークはたまたまあった、とか言っとけば、納得するだろうよ。生態が分かってねぇんだから」
『…それでごまかせるの?』
「余裕だろ。ベレットさんにも黙っとけよ。ファルコなら言わねぇだろうけど。大容量収納、しかも、時間停止なんて言ったら、目の色変えて当然だし。特に商人は」
マジックバッグは持っていたベレットだが、資金に問題なかったとしても大容量のマジックバッグ自体、数が少ないので中々入手が難しい。
『あー…だろうね。おじさん、シヴァ…いや、アルがここまでおおがねもちで、いろいろふつうじゃなさすぎだって、そうぞうしてないだろうし』
「規格外って言うんだよ。実質、世界一の大金持ち。魔道具の完成度の高さとかレア素材とかレアイテムとかは除いても。おれがマスターやってるダンジョンは19ヶ所あるからな」
『……ええっ?』
「ダンジョン間を転移魔法陣で繋いであるから、デュークが一匹で行動出来るようになったら使えるようにしてやるよ。転移魔法陣っていうのはだいたいはダンジョンに設置してある転移装置で、わずかな魔力で移動出来るようになってる。ほとんどのダンジョンは10階ごとに設置してあるから、そこで地上に戻って、食料や消耗品を補給したり休んだ後に続きから、が出来るワケだな。ダンジョン間を繋いであるのは仲間用なんで、登録してある人や神獣しか使えねぇ。ヘタに作動すると危ねぇからな。
…あ、そうそう、イディオスっていうフェンリルの神獣が、こっちにたびたび遊びに来るから。フェニックスの神獣のカーマインは時々。デュークの方がドキドキだろうな。格が違って
そろそろ、おやつ時間なのでシヴァはデュークと一緒に家に帰り、アカネを誘っておやつにした。
今日のおやつはドーナツ。生クリームが挟んであるものも、豆腐を練り込みもちもちしたものも、チョコレートをかけてある物もあり、食べ応え抜群だ。
『シヴァたちって、いつもこんなおいしいものたべてるの?』
夢中で食べて一息ついてから、デュークがそう訊いた。
「うん♪」
「そう。食にはこだわってるからな。特に食文化が優れている国から来てるし、色々作ってたからこちらの材料でも何とか作れる物も多いワケ」
重曹は岩塩を水に溶かす、或いは海水を電気分解して炭酸ガスを添加すると結晶化するか、炭酸水素ナトリウムを含んだ鉱石を溶かし、炭酸ガスを添加して結晶化すると取り出せるが、錬金術で細い成分に分けた時にあっさり見付かった。
そういえばそうだった、とシヴァは思い出したぐらいである。
重曹とクエン酸とデンプンを混ぜて乾燥させれば、ベーキングパウダーの出来上がりだ。
まぁ、混ぜる比率で試行錯誤したが、それはしょうがない。
重曹は過去の転生者が広めようとした形跡はあるが、一部だけで全然広まってない。
いくら、細い操作が苦手な錬金術師が多いとはいえ、鉱石から鉱物を取り出せるのだからやれるだろうに、「後は使えないもの」という思い込みもあるのだろう。
重曹よりクセのない用途も広いベーキングパウダーを広めてもいいのだが、パンや菓子を膨らませるのはパンに使う天然酵母が主流になってるので、それはそれでいいと思う。
『そうなんだ』
「生活レベルは中々落とせないよねぇ。シヴァが頑張ってくれたおかげで、わたしは最初から温泉付きの快適安全生活してるけど」
『おんせんって?』
「あ、まだ見てないんだ」
「見せたけど、何が温泉か分かってねぇな。気持ちのいいお風呂」
「簡略過ぎ。身体にいい成分が入ってるお湯が温泉。…って、デュークはお風呂自体がよく分からない?」
『うん。からだをあらってから、おゆにはいるってのはきいた』
「…茹で鳥?」
「低温調理だな。…って、アカネ、デュークを食材として見てるじゃねぇか」
「シヴァもね。失礼しました。デュークは頭が鳥なんでお風呂ってどうなんだろう?とちょっと思って。…カーマインは普通に大好きだね」
「色のせいか、性格のせいか、神獣だからか、カーマインはあまり鳥って感じはしねぇけどな」
『…た、たべないでよ?』
「食べねぇって。…今度の絵本は夢のある『ヘンゼルとグレーテル』にしよう」
「その連想が怖い」
アカネがツッコミを入れた。
太らせてから食べようとお菓子の家を作ったのが悪い魔女だ。
――――――――――――――――――――――――――――――
関連話「番外編29 いつか一緒に空を翔けよう」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330667752233489
*四コマまんがあり!
https://kakuyomu.jp/users/goronyan55/news/16817330669257542457
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます