123 神獣の面汚しはいらん
「神獣は受け継いだら剥奪はされねぇの?」
シヴァはちょっと思ったことを訊いてみた。
イディオスとカーマインが神獣らしい神獣なので、出来の良し悪しなんかがあるとは、まったく思っていなかったのだが、こうも
『…どうだろうのぉ?』
『…その考えはなかった』
「多分、おれがテイムすると自動的に剥奪になると思うぞ。あり得んだろ。既に神様に仕えてる神獣が人間の従魔になるのって」
『まぁ、確かになぁ』
「いいよ、シヴァ。テイムしちゃえ。で、すぐ従魔契約破棄。それが罰ってことで。席が一つ空けば、神様だか超越者だかが調整して新しい神獣を選ぶかよこしてくれるでしょ。もういなくていいなら、そのままだろうし」
「スゲェ名案。そうか。破棄すりゃいいんだよな。さすが奥様」
シヴァはヴェスカから神獣を剥奪したくても、テイムはなぁ、と躊躇していたのだが、そこに気付かなかった。
「でしょ。せっかく、神獣様の評判をイディオスとカーマインが上げてるのに、事実知ったら石投げられるだけじゃ済まないし。…ってことで、なかったことにしよう。神獣のホワイトタイガーなんて見付からなかった。縄張り争いがあったようだけど、詳細は分からないってことで」
『賛成。賢いの、アカネ』
『我も賛成。神獣の面汚しはいらん』
『ま、待て!もっと話し合おう!我が取り返しのつかないことをしたのは…っっ!』
賛成多数で可決!善は急げ、とシヴァはガシッとヴェスカの頭を再び鷲掴み、すぐにテイムした。
ステータスからやっぱり神獣が消え【種族:黒虎】になり、【職業:従魔(マスター・シヴァ)】になり、
【称号:神の愛し子】→【称号:罪を
となった。
【罪を
ほうほう。神罰も食らったということか。
うっすら光ってる間に、ヴェスカは色も白から黒になり、目の色も金から赤になっている。
シヴァはさっさと従魔契約を破棄した。
呪われているから破棄出来ない、といったことはなかった。
ヴェスカの職業表記がなくなっただけで、ステータスは従魔だった時と同じく、神獣だった頃の一割ぐらいしかない。
つまり、アカネと同等ぐらいである。
スキルや魔法はそのままなのだから、戦闘力としては十分以上だ。
ステータスは同等ぐらいでも、ヴェスカは戦い慣れていないようだから、戦えばアカネが余裕で勝つだろう。飛び道具を使わなくても。
「色だけじゃなく、神罰も食らってるね。やっぱ、神獣にあるまじき振る舞い過ぎだったワケで」
アカネの鑑定でも普通に見えるようになったらしい。
『しっかり回復してやってる辺り、神の慈悲はあるようだがな。さぁ、どうする?ただの魔物のヴェスカ。罪を
フェンリルなのにニヤリと笑うイディオス。案外表情豊かなのだ。
『ただの魔物は腹も減るぞ?しかし、誰かさんのせいで、この辺りは食料も足りんしなぁ?』
「こんな大きな黒い虎が出たら、討伐依頼が出るよね。念話で話しかけて来るって?高ランクの魔物は全部そうなんだけど~」
「言葉で騙す厄介さだよな。騎士団が大張り切りかも。贖罪中なんだからこの国の人間や救援隊に攻撃が出来るワケがねぇ。死なねぇんだから切り付けられても腹減ってても別に問題ねぇだろ。
…さ、中断してた作業に戻ろうぜ。あー無駄な魔力と労力使ったなぁ」
「二ヶ月も探してたもんね。色々情報集めたりもして、そのためにダンジョン攻略もして」
「ダンジョン攻略はいいんだけどな。新しい仲間も増えるし、拠点にもなるから。…さて、おれは宿舎を作りに行くか」
通信バングルで何度も呼ばれていたりした。物資や素材を持っているのが本体だからである。並列思考があるので、念話通話で「ちょっと待て」と返していたが。
「じゃ、わたしは街道の整備の続きに行くね」
『わしは焼却と乾燥の続きじゃの』
『我は川の浄化の続きを。じゃ、また後で』
それぞれ、持ち場へ散っても、ヴェスカはその場に呆然としていた。
自業自得なので誰も世話なんか焼かない。
十分に世間の厳しさを知るといい。
シヴァは一応【黒い虎がいるけど、誰にも害はないから構わねぇように。殺せねぇ呪われた存在だから】と分身たちに連絡しておいた。虎という時点で察するだろう。シヴァの分身なので。
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新作✩「番外編26 文字は縁(えにし)を結ぶもの?」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330666433475345
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