110 常識を破壊して、新たな常識を再生する

 夕食後、シヴァは軽くシャワーを浴びてから仮眠を取り、深夜になってから起き出し、アカネのテントから外には出ず、王都側にあるティサーフダンジョンの前に直接転移した。

 魔力はもう回復しているので、気を配る必要はない。


 シヴァはダンジョンに入り、適当に邪魔な魔物を斬り捨てて奥へ行くと、大剣をしまい、古竜刀にチェンジ。斬るのはダンジョンの床だ。

 魔力を通し、くり抜くように調整して古竜刀のスキルである【飛斬ひざん】を放って、その穴から下に降り、【飛斬ひざん】を放って、その穴から下に降り…二回で最下層に到着した。

 着々と魔力が上がってるらしい。


 ティサーフダンジョンのダンジョンボスはアトラス。

 巨人族の中でも一番大きく20mはある。

 棍棒による物理攻撃だけじゃなく、魔法ももちろん使って来るのだが……くり抜くついでに仕留めてしまっていた。

 またしても!

 あーあ、ボスだけは別に討伐するつもりだったのに。

 斬れ過ぎる刀はこれだから。


 当然、十七回目のダンジョンエラー。

 最下層フロア以外からの攻撃で討伐、なんて想定しているのなら先読み能力の持ち主だろう。


 はいはい、とシヴァは合金刀にチェンジして、魔力を通して壁をくり抜き、コアルームへ侵入。毎度のことながら台座しかない殺風景な部屋だ。

 いつものやり取りをしてエラーが回復するまで待ってダンジョンマスターになり、通信バングルと新米コア用資料書類、で、飛行カメラとタブレットとプリンターその他一式を渡した。

 ティサーフダンジョンのコア、ティーコの誕生である。



 シヴァはボスドロップを収納した後、こちらの事情を飛行カメラの動画も見せつつ話し、ティーコにこの国の情報を教えてもらった。

 竜については、本当にたびたびサファリス国に侵入して、迷惑なことをするらしい。下位種の竜に国境なんていう概念はないだろうが。


 水害被害も王都の方はそこまで酷くないので、ティーコも酷い被害が出ていることを知らなかった。すぐ使い魔のレイスを放って情報収集を始める。レイスはやはり使い勝手がいいらしい。


 シヴァはコアルームをもっとオシャレに整えた。壁や床はティーコに変更してもらって。

 何となくプールバーな感じにしてみる。

 ビリヤード台セットを作って設置。

 よく遊んでいたのでサイズはほぼ正確だと思う。後日、キエンダンジョンの自宅にも作ろう。

 ビリヤードの球と一緒にコアを混ぜてビリヤード台に置いたら面白いが、コアの方が大きいのですぐ分かるか。

 コアたちで流行っている見せかけのマントルピースを作って、その上に台座を作ってコアを置いた。


 そして、登録者しか入れない仕掛けのある小部屋をティーコに作らせてシヴァが転移魔法陣を描き、ティサーフダンジョンとキエンダンジョンを繋ぐ。


【…マスターがすご過ぎて、こんな時に言う言葉が思い浮かびません…】


「シヴァっておれの故郷では『破壊と再生』の神の名前で、本名の音の響きがこの世界にそぐわないからってだけだったんだが、気が付けばその名の通りの行動をしてるな。常識を破壊して、新たな常識を再生する」


 文明の進んだ異世界人なので、こちらの常識とはあい知れないワケだが。


【常識を破壊…ダンジョンの床を抜いて最下層まで来た方、マスターが初めてではないでしょうか。普通は攻撃しても傷付く程度で抜けませんから】


「おれが普通、と言うと笑われるぐらい、規格外なんで。じゃ、また新しい情報が入ったら連絡入れて」


 食材ダンジョン計画は後ほど、だ。

 ティサーフダンジョンは50階だが、一度もマスターがいたことがなく、ティーコの性格も堅実らしく、魔力消費の高い凝ったフロアは少なく、魔力はたっぷり蓄えられている。

 今ある魔力だけでも、十何年以上、この国を支えられるだけの食材と物資提供が可能だった。


【分かりました。しかし、マスター、こんな深夜にどこへ行くんですか?】


「妻の元へ。空間転移が使えるから問題ねぇよ」


 じゃな、とシヴァは手を挙げてアカネのマジックテントへ転移した。

 反則技だが、短時間で攻略出来、ティーコの性格もよさそうで何よりである。

 これだけ個性豊かなコアたちなのだから、性格が悪かったり、邪悪だったりするコアもどこかにいることだろう。

 邪悪ならダンジョンを潰すだけだが。



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名前:シヴァ(英樹) / アル

年齢:24歳

状態:良好

職業:冒険者(SSランク / Cランク)、

   ダンジョンマスター(キエン、アリョーシャ、パラゴ、トモス、フォボス、ミマス、クラヴィス、エレナーダ、ガンザル、サルタナ、ルタルデ、ブエルタ、レーゲン、オクリール、ラングザ、インセ、フレール、イリューガル、ティサーフ)

   『こおりやさん』店長(アルのみ)

Level:240

HP:38000/38000

MP:543000/543000

攻撃力:SS

防御力:SS

魔法防御力:SS

素早さ:SS

器用さ:SS

知力:SS

幸運:B

スキル:多言語理解、物理・魔法・状態異常全耐性、魔力自動回復、浮遊魔力利用、剣術、錬金術、鑑定、体術、魔力操作、念話、速読術、並列思考、投擲術、行列優遇(シヴァのみ)、気配察知、ナイフ投擲術、アイテム創造

魔法:生活魔法、空間魔法(収納、転移、次元斬)、属性魔法(火・水・風・土・雷・氷)、身体強化、結界魔法、付与魔法、探知魔法、重力魔法、回復魔法、飛行魔法、影魔法(影転移、影拘束、影収納、影分身、影斬撃)、ボイスチェンジャー、変幻自在、隠蔽魔法、チェンジ、スリープ、パラライズ、細胞壁除去スペシャルヒール、診断

称号:転移者、時には虐殺もする快適生活の追求者、ロンリーバイカー、知的探究者、ディメンションハウスの所有者、フェンリルの友、フェニックスの友、界渡りの有資格者、常闇の光明EX

ソロ攻略(アリョーシャ2、パラゴ3、キエン、トモス、フォボス、ミマス5、パーチェ、クラヴィス、エレナーダ、ガンザル、サルタナ、ルタルデ、ブエルタ、レーゲン、オクリール、ラングザ、インセ、フレール、イリューガル、ティサーフ)

ダンジョンマスター(アリョーシャ、パラゴ、キエン、トモス、フォボス、ミマス、クラヴィス、エレナーダ、ガンザル、サルタナ、ルタルデ、ブエルタ、レーゲン、オクリール、ラングザ、インセ、フレール、イリューガル、ティサーフ)

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 翌朝。

 そういえば見てなかった、と朝食後のお茶をしつつ、シヴァがステータスボードを表示させてみると、MPが5万も上がっていた……。

 分身八人で魔力を使いまくり、雑魚魔物もついでに狩る、となると経験値も半端なかったらしい。


 ティサーフダンジョンではアトラスと雑魚魔物しか倒してないので、レベルがそう上がってないのは納得だ。

 唯一SSじゃなかった魔法防御力も、レベルが240になったからか、SSに。


 魔法に【細胞壁除去スペシャルヒール・細菌の細胞壁を壊し病気の回復をする】と【診断・病気怪我をスキャンし、原因を探る】というのが増えていた。かけまくったので当然だが、回復魔法でくくられるワケではないらしい。


 んん?


【常闇の光明Extra・人、神獣、知的生命体、を数々助けた者に付く称号。絶望の中の一筋の光、希望。停滞したこの世界に新しい風を起こす。探しものの遭遇率大幅アップ。魔力消費軽減→魔力消費大幅削減。【アイテム創造】スキル取得】


 称号のランクが上がったようだ。


【アイテム創造・今までにないマジックアイテムを作ることが出来る。魔力だけで作成可能。相応ふさわしい素材があれば魔力消費を抑えられ、安定する】


 ……え?これは実質、神の力では……。



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新作☆「番外編25 文字は縁(えにし)を繋ぐもの」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330666240462061

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