109 そんなに大量に支援して大丈夫なの?
炊き出しを一通り配り終わると、シヴァは分身たちと一緒に影に入り、記憶を共有してから分身を解除した。
服や装備がその場に落ちるので、【クリーン】をかけて収納しておく。明日も分身たちには大いに働いてもらわないと、だ。
一番魔力が多く、魔力回復も早い本体が送迎するのは確定だが、やることはまだまだたくさんあるのだ。
【シヴァ、どこ?わたしたちもご飯食べようよ】
アカネから通信バングルに連絡が入ったので、シヴァはアカネの側に影転移で出た。
天幕の側の外にテーブルと椅子を出していた。焚き火は見える位置だが、温かくも明るくもなく、焚き火の側は他の人たちに譲ったらしい。ステータスが高いし、装備も優れているのでまったく寒くはないし、夜目も効く。
「お待たせ」
「あ、解除してたんだ。魔力平気?」
「ああ。もうちょっと経たねぇと自力で長距離転移は無理だけど」
「景気よく魔法を使ってたもんねぇ」
シヴァたちの夕食も炊き出しと同じ芋煮汁と丸パンだ。
自分たちだけ違う物を食べるワケにも行かないので。
もちろん、美味しいので文句はない。
「そういえば、シヴァに経験値が入るの?何人もいると」
曖昧にボヤかしつつ、アカネが質問する。
「多分な。気にしたことねぇけど」
「レベル上げにはいいかもね。って、あれを作れる魔力量じゃないと意味ないか」
アカネは「分身」という単語をボカす。魔法のある世界なので、風魔法で言葉を拾う人もいるだろう、という用心だ。
「一番効率的なやり方はボスクラスだけ、リポップしたら何度も倒させることだな。なら、短時間で50とか軽くレベル上ががるんじゃねぇの」
「…それ、シヴァにしかやれない方法で、シヴァのサポートがないと無理だから。それに、レベルだけ上がってもねぇ、だし」
「だから、アカネは弱い魔物から段階を踏んだんだろ。…それにしても、この国にも拠点が欲しいな。時間が惜しいから反則技使うか」
転移魔法陣で繋げば、魔力消費がかなり抑えられるし、地元民…地元コアの方が情報豊富なので。
「…クラッシャーとか破壊王とか称号が付きそうだね。とっくに名前が名前だけど」
「今更だって話だな。狙うなら王都ティサーフ。50階だから手頃だな」
「この近くにはないんだっけ。…穀倉地帯だもんね、この辺って」
「穀倉地帯の一つであって、もう少し東の方が大きいけどな。あっちの方も被害は出てるだろうし。…そうそう、アカネ、水に浸った植物でも復活させるのって酸素を送る薬だっけ?」
「あ、はいはい。酸素供給剤、或いは土壌改良剤ね。
アカネもダメになった畑のことを色々考えていたらしい。
「さすがに、超促成栽培は秘密だろ。デメリットもでかいし。普通に畑を作り直して、まずは収穫が早い葉野菜育てて、荒れ地でも育って成長が早い蕎麦や芋類を植えればよくねぇ?後は食材ドロップに期待。ウチも支援するから飢えることはねぇんだし。何でもかんでも面倒見てやる必要はねぇって」
シヴァがマスターになれば、食材ダンジョンに出来る。
「そうだね。そっちの方がいっか。でも、そんなに大量に支援して大丈夫なの?こういった災害っていうか竜災?って続くかもよ?」
「ちゃんと普段からたっぷり備蓄してあるし、おれの縄張りに敵が入ったら悪いことをしでかす前に駆除してるって」
「駆除…そうだよね。シヴァにとってはそんな感覚。スズメバチの方が小さくて物陰に隠れる分、返って厄介、な感じ?」
「そうそう。…おれは食ったら仮眠するけど、アカネはどうする?」
「後片付けしたら寝るよ。明日も忙しいだろうし」
「賢明」
「でしょ。ドームハウス出す?わたしのテント?」
「お邪魔していいんだ?」
「何故かベッドはキングサイズだしね?」
シヴァがそう作ったからである。見た目はどこにでもあるティピーテントだが、中身は空間拡張してあって二十畳程あり、ソファーセット、ベッド、バス・トイレ、キッチン付きである。
登録した人以外は入れないようになっているので、防犯対策も万全だ。
「じゃ、堂々とテントにお邪魔しよう」
シヴァがそう言うと、アカネがクスクスと笑った。
コソコソしていた試しがないからだろう。
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新作☆「番外編25 文字は縁(えにし)を繋ぐもの」
https://kakuyomu.jp/works/16817330656939142104/episodes/16817330666240462061
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