111 期待してなくてすみませんでした!

 んん?


【常闇の光明Extra・人、神獣、知的生命体、を数々助けた者に付く称号。絶望の中の一筋の光、希望。停滞したこの世界に新しい風を起こす。探しものの遭遇率大幅アップ。魔力消費軽減→魔力消費大幅削減。【アイテム創造】スキル取得】


 称号のランクが上がったようだ。


【アイテム創造・今までにないマジックアイテムを作ることが出来る。魔力だけで作成可能。相応しい素材があれば魔力消費を抑えられ、安定する】


 ……え?これは実質、神の力では……。


 シヴァが困惑していると、アカネが声をかけて来た。


「どうかした?」


「称号がランクアップして、何かすごいスキルをもらった。【アイテム創造】魔力だけで作成可能なんだとさ」


「え、それはすごいね!どんなのが作れるの?」


「それはまだ検証次第。相応ふさわしい素材があれば魔力消費が抑えられて安定するそうだし」


「じゃ、早速、昨日の水竜で何かお役立ちの物を作ってみたら?川を使っての輸送に使える丈夫な船…シヴァの騎竜みたいに人工騎竜でもいいかも?」


「いやいや、待て待て。そんな画期的な物を与えてしまうと、人間の技術が発展しねぇだろ。…あ、瞬間冷凍するマジックアイテムが作れるんじゃね?すると、食材があれば工場で量産可能に」


「それも同じくじゃない。誰にでも作れる魔道具ならまだしも。高度な技術は人材を育ててからだって。やっぱり。でも、こんな緊急時なんで、復興に役立つものならいいんじゃないの。貸与で」


「耕運機とかトラクターとか?」


「わたしが乗りたい!」


「はいはい。土壌改良も同時に出来るといいな。…あ、その前に、昨日もらったドロップを見てなかった」


 収納に放り込んだままで。

 ダンジョンボスのアトラス討伐ドロップは、魔石と木箱二つだった。一つはお馴染み本サイズの木箱だが、もう一つは長細いので武器っぽく、興味が失せてたワケで。


 まず、本の入った木箱を開けると、予想通り【植物図鑑13~15巻】だった。毎週定期購読しているような感じになっており、割と楽しみ。

 もう一つの細長い箱は……。


【大地の杖・植物の成長を早めたり、土壌改良をしたり、水脈や温泉、鉱物を探したりも出来る便利な杖。土魔法の強化、魔力消費削減も出来る】


 ……期待してなくてすみませんでした。

 大地の杖は150cmぐらいの長さで、古くからある絵本の魔法使いならこれ!とばかりに、上がくるりと巻いているだけで、装飾なんてまるでない質実剛健な杖だった。

 その辺に置いて置けば、切って薪にされてしまいそうな程、単なる枝に見える。

 …魔力が分からない人にとっては。


 シヴァでもちょっと怖くなるぐらいの魔力が込められていた。

 魔力タンクとしても使える仕様らしい。

 フルチャージ済なのは、ティーコの粋なはからいなのかもしれない。

 鑑定も育って来ているアカネも唖然としていた。


「何かスゲェのが出たな。正にぴったり。…ボスドロップってやっぱ、攻略者の思考を読むのか。希望に添えるかどうかは別にして」


「…いやぁ、すごいわ。シヴァ様様だわ。尚更、拝まれちゃうね」


「幸運Aのアカネもいるからだと思うぞ。おれはB止まりだし」


「え、そうなんだ?それにしては、色々発見って称号だけでってこと?」


「多分な」


 シヴァはマジックテントから出ると、人目のないことを確認してから、「では、今日もよろしく」と大地の杖を持ったまま分身八人出した。

 確かにかなりの魔力軽減だった。

 いつもの半分ぐらいに抑えられたのだ!

 …いや、これはレベルアップした【常闇の光明】称号のおかげもあるのか。


 シヴァは【大地の杖】を【チェンジ】で空間収納の方へしまおうとしたが、考え直してやめた。

 杖が浮遊魔力を自動で集めてチャージしているので。


 分身七人には昨日の分身たちの装備入りマジックバッグを渡し、後一人はシヴァ本体が変幻魔法をかけてアルに化けさせ、アル用装備を渡す。

 そして、アルはティサーフダンジョンの、ダンジョン間転移魔法陣がある小部屋に転移させた。これで、かなり魔力消費軽減だ。


 アルが眠らせた救助隊を影収納に入れ移動するので、帰りも同じ道筋で全然大丈夫だ。ここまで戻って来るのはシヴァ本体が引き寄せても、バイクを使ってもいい。

 バイクはアル装備なので、ちゃんとマジックバッグに入れてあった。バイク内の魔力タンクで余裕で保つだろう。


 キエンダンジョンを経由するので、その時に『にゃーこや』店長としての炊き出しや支援物資、カップラーメンの自動販売魔道具、カップラーメン在庫を空間収納に入れればいい。

 普通に炊き出しが出来るのにカップラーメンって、と思わなくもないが、アルの身分証明にもなるワケだ。王族や貴族に食べさせて、主導権を握るのもいいだろう。

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