ある甘い朝の出来事

御厨カイト

ある甘い朝の出来事


「よいしょっと……それじゃあ、そろそろ行ってきます」



俺は靴紐を結び、鞄を持つ。

忘れ物は……多分無いはず。



「はいはい、行ってらっしゃ……ってちょっと待って!」


「うん?何?」


「ちょっと忘れ物してるよ」


「あ、ホント?ごめんごめん。ちゃんと確認したんだけどな……」


「うふふ、おっちょこちょいだな~。そうだ、何を忘れてるか当ててみてよ」


「えっ?……うーん、そうだな……なんだろう?」


「ヒントはね~、毎日必要なものだよ!」


「毎日……?……あっ!」



あぁ、なるほど、そう言う事か。

彼女の言葉を完全に理解した俺は彼女の顎をクイッと上げる。



「ん?」



そして、自分の唇を彼女の唇へと近づけ……




「んっ……!」




離す。




「どう?これで忘れ物無いでしょ!」


「……ちっ、違うよ!忘れ物はお、お弁当だよ!」


「えっ?」


「もうー、まったく……朝から何してんのよ……」


「ご、ごめん……」


「……まぁ、いいや。今日も気を付けて行ってきてね」


「うん、分かった。安全運転で行ってきます!」



僕は微笑む。

彼女もそんな様子に微笑み返す。



「じゃあ、行ってらっしゃい」


「行ってきます」




そうして、僕は玄関のドアを開け、仕事へと向かうのだった。

ちゃんとお弁当を持ってね。










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