20人目 『隠し事は得意なんだ』

すごく突然な話にはなるんだけど私には好きな人がいる。

付き合いの長い数人の友人グループ内の一人がその相手だ。意識し始めたのはいつだったのかなんてことはもう覚えてないけど、それなりの年数が経っていることだけはわかる。


それなりの年数片想いをしていると周りにはやっぱりバレるもので、その片想い相手以外のグループ内全員に気づかれてしまっている。

もちろんそれが原因で数えきれないくらいにからかわれているし、告白してしまえと何度も急かされている。


何を言われても今まではそのままでいい、と思ってたんだけど今年はそれがちょっと変わってしまった。


というのも、私達は今年高校三年生になった。

そこに絡むのは当然進路の話だ。

学校という区切りが変わるのは中学から高校に進学するときに経験している。その時はグループ内全員が同じ学校、ということはさすがになかったけど住んでいる場所は変わらないから関係の変化というものを意識しなかった。

でも、今回はそのときと話が違う。

まず、全員が次の進路で進学を選ぶ保証がない。そして、進学を選んだとしてもよくて全員が同じ県内の学校。誰かが遠くの学校へ進学することだって考えられる。


そこまで意識したときにほんとにこのままでいいのか、そう考えて出た答えはNOだった。

今までは一緒に過ごしているだけで近くにいられたからそのことに甘えてたんだと思う。

でも、そんな簡単な関係はもう確実なものじゃない。


来年になったら離れ離れになっちゃうかもしれない。

それでも、今のままそうなるよりはいい。



そこまで決意したのはよかったんだけど、いつ実行しようか悩んでいる内に何ヵ月か経ってしまった。

今まで何気なく一緒にいたせいで、いざ特別な状況を作ろうとするとどうにもイメージが沸かないから……って言うのは言い訳なのだろうけど。


でも、そんな私に絶好の機会がやってきた。

もうすぐ彼の誕生日がやってくるんだ。

そのときは例年通りにみんなで集まってパーティーをするからそこを告白のタイミングにすることにした。


そして、自分を追い込むために彼以外の友人たちに相談もした。

そこまでやって逃げなんて言ってからかわれるか予想もできないし考えたくもない。皆はすごくにこにこ、と言うよりはにやにやしながら手伝ってくれた。




そして迎えた誕生日当日。

パーティーは彼の家でやることになったから、集合時間に間に合うように行ったんだけど……他には誰も来ない。


一人二人遅刻するならまだわかる。でも、誰も来ないのは明らかにおかしい。そう思ってメッセージアプリを見てみればグループトークで来てない全員が遅れる、とだけ連投。そして私個人宛には結果聞いたら行くから終わったら教えて、とのあまりにも雑なメッセージ。

気を利かせて二人きりにしてくれたんだろうけど、こんなことするならせめて事前に教えてほしかった。


どうしようかと悩みながらスマホから視線を上げると、そこには私を見つめる彼の姿があった。


そのことに思わず動揺していると、彼の方が口を開く。

それは―――



後から聞かされた話によると、逆ドッキリのような形で私にだけ内緒にする形で色々進められていたらしい。

ネタばらしをされた時に彼が隠し事は得意なんだ、と笑っていたのはもう忘れられないだろう。


「もう!皆、こんなことするなんてずるいってば!」

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どこかの誰かの物語 蒼雪 玲楓 @_Yuki

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