第7話 地球から見た私の故郷

 地球から見たベテルギウスは、まだ元のまま美しく輝いていた。


 しかし私は知っている。

 ベテルギウスはすでに超新星爆発を起こして、私たちの故郷もろとも死んでしまった。


 地球から見えているのは、ベテルギウスが600年以上前に放った光だ。

 ただの残像だ。

 もうそこには何もない。


 ダイヤモンドダストを見た、あの朝の光景が脳裏に蘇る。

 あの景色はもう二度と、見られない。


 輝く空気も茂る植物も歌う鳥も、もうそこにはいない。


 ああ、気の毒な植物たち。

 ああ、気の毒な鳥たち。


 人間はあの惑星から逃げ出したけれど、彼らは何もわからないまま置き去りにされた。

 もう今頃・・・・・・。


 せめて写真くらい撮っておけば良かった。

 なんという種類の生き物なのか、調べておけば良かった。


 でも私はそうしなかった。

 だから、名前も知らない植物たち、鳥たちにはもう二度と会えない。


 胸が苦しくて仕方がなかった。


『いつか地球に行って見てみたいね。冬の大三角』

 自分が言った言葉が頭の中で響く。


 見上げた冬の大三角は、何事もないかのように正三角形を保っている。


 私は目を閉じ、小声で呟いた。

「さようなら。私の大好きな故郷」

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最後のダイヤモンドダスト world is snow@低浮上の極み @world_is_snow

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