第6話 死別

 日がすっかり高くなりダイヤモンドダストも消えてしまってから、ようやく私たちは家に帰った。


 帰ってきた私を出迎えた父は、深刻な顔つきをしていた。


 何があったのかといぶかしむ私に、彼は言った。

「フランセス。僕たちは地球に引っ越すことになったよ」


 急なことに、私は驚きを隠せなかった。

「なんで?」


「アルザスの太陽は、もう寿命が尽きる寸前なんだ。太陽は死ぬとき、超新星爆発という大爆発を起こす。そのせいで惑星アルザスも吹き飛ばされてしまうから、避難しないといけないんだよ」


「太陽が、死ぬの?」

 私が聞き返すと、父は悲しげに頷いた。


 にわかに信じられない話だった。

 ついさっき、美しい朝日が昇ってくるのをこの目で見たというのに。


 それに、太陽が爆発するせいで、生まれ育ったこの星が吹き飛ぶなんて言われても。

 そんなこと想像もできなかった。


「幸い、地球がアルザスからの避難民を受け入れてくれるらしい。数日後には地球から、避難用の宇宙船が派遣されてくる」


「いつ出発なの?」

 私はなんとか平静を保とうとして、尋ねた。


 父は言う。

「来週の水曜日。それが最終便だ」


 そんなにすぐに。私はめまいにも似た感覚に襲われた。

 あと10日もしないうちに、私は故郷に永遠の別れを告げるのだ。


 またダイヤモンドダストを見に行こうって、さっき話したばかりなのに。


「なんでもっと早く教えてくれなかったの」

 私の言葉は震えていた。


「本当は昨日の夜、話そうかと思った。でもこれからアメル山に遊びに行くってときにこんな話をしたら、楽しい気持ちに水を差してしまうような気がして、黙っていたんだ。ごめんよ」


 父の申し訳なさそうな顔を見て、さらに胸が痛んだ。

 こんなことで父を責めても、何も変わらないのに。


 私は思わず自分の部屋に駆け込んでドアを閉めた。

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