4月

4月5日(水)その2

    ♢

 「ねぇ、今何時?」

「もうすぐ9時ってとこかな」

「式もう始まってるね」

「今から出てもなんかあれだから教室行かない?」

「まぁそうだな」

そして僕たちは学校の玄関で教室を確認して、靴を履き替えて教室に向かった。

「おんなじ教室だったね綾人くん」

「そうだね、しかも俺たち席順も連番だし」

「よかったじゃん、近くに知っている人が近くにいるのって安心するし」

「まぁ」

そして僕たちは1年2組の教室に入った。

後ろの窓が少し空いていて、春の暖かい風と共に桜の花びらが教室に入ってきた。

「いいねここの教室、2階だから桜がよく見えていいよね」

「散っていくときは少し寂しいけどな」

「足音聞こえてきたし、座って、、、」

少し強い風が吹いて教室全体を包み込んだ。そのときこちらを振り向いた咲希は、まるで消え入りそうなほど儚く、散り行く 桜の様に見えた。

「ねぇ、どうしたのぼーっとして」

「いや別に、、、」

「そ?大丈夫なら早く座ろ」

    ♦︎

 少しして他のクラスメイトが教室に戻ってきて、最後に先生が入ってきてそれと同時に、先生がこちらを向いた。

「おいおい入学式初日から遅刻とはなかなかだなキミは」

「いや、えーっと」

「先生!あんまり綾人くんを責めないであげてください。私が途中で呼び止めてしまったので、、、」

「可愛い子にそんなふうに言われたら先生責めれないな」

と、先生は女性の割に豪快に笑った。

「まぁいいや、初日だから目は瞑ってやろう」

「自己紹介が遅れた。私はこのクラスを担当する芹澤だ、一年間よろしくな」

ということで、クラス全員自己紹介をする流れになった。

僕の番が来た

「えー櫻川 綾人ですよろしくお願いします」

パラパラと拍手がなった。

まぁこんなもんだよな。そして次の咲希がガバッと立ち上がった。

「清水 咲希です!みんな仲良くしてくれたらと思います!」

クラス全員からの大きな拍手があった。あのビジュアルであの性格なら、クラスの反応もいいのも当たり前だ。

「ねねもうちょっとフレンドリーに自己紹介できないの?」

後ろから突かれながら小声で言われた。

「いや、別に話すことないし」

「あと、みんな見てるから」

「気にすることないじゃん。私が話したいだけなんだから」

「俺が気にするの!」

「おーいそこ、独身の先生への当てつけかぁ?」

「いや、うっ」

「まぁいいや花の高校生だもんな」

そして初日からクラスの男子から敵意を向けられる僕だった。

   ♢

 「はぁー」

「そんなにため息ついてると幸せが逃げてくぞぉ」

「誰のせいだと思ってるんだよ。僕は普通に過ごしたかったのに」

全員の自己紹介が終わり、諸連絡が終わってもうみんなが帰る準備をしているところだった。

「ねね清水さん、インスタ交換してくれる?」

「いいですよ」

ここには僕はお邪魔なのでと思い、荷物をまとめ教室を出た。

 昇降口で靴を履き替えていると、後ろから駆け足で咲希が降りてきた。

「先に行くなら言ってよ、あとLINE交換しない?」

「僕のLINEなんているのか?」

「いるよ、高校入って最初の友達なんだからさ」

「いいよはい、これ」

「ありがと!」

“SAKI” 高校に入って最初の友達がまさかこんな形で、、、

「ほら、一緒に帰ろうよ」

僕は無抵抗で連れて行かれた。

しかし、桜の花びらがなんだかいつもより鮮やかに見えた。

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桜の花の散りゆくように 櫻木骸 @mukuro_sakuragi

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