桜の花の散りゆくように
櫻木骸
4月 序章
4月5日、今日から高校最後の一年が始まる。
病室の窓の隙間から春の風が舞い込んでくる。部屋中に花びらで埋め尽くされ、僕は骨さえも残らず消えていく。キミの優しさに包まれて、、、。
♢
生まれた瞬間私は涙が出ず、花が溢れてきた。『先天性桜花症候群』そう宣告された。『先天性桜花症候群』は先天性のものと後天性のものがあるが、先天性のものは1000万分の1で突然発症するもので、いまだ治療方法は見つかっていない難病と言われている。基本的に外傷はなく生まれたその時から、体の中で芽が生えゆっくり成長して、20歳になる前に生涯を終えると言われている。
♦︎
4月5日(水)
「最悪だ、入学式当日から遅刻とかやばいだろ」
今日から花の高校生だというのに、、、。
僕の家は親が2人とも朝早くから仕事に行くので、基本的に朝は1人なのだ。
なぜか大事な日の前日は緊張して朝まで起きてしまうのだろうかと考えながら通学路を走っていた。こんな時に限って何故か踏切に引っかかるのは何故なのだろうか。
そんなふうにぶつぶつと心な中で文句を言っていると、隣に自分と同じ制服を着た女子生徒が、息をあげながら走ってきた。
「4月なのに暑いねぇ、キミも一年生?」
「いや、まぁそうだけど、急に話しかけるとか、、」
「何?もしかして出会って早々私に惚れちゃったわけ?」
「いやそんなことは」
しかしその彼女はそれを否定できないほど綺麗で、桜の咲く今この瞬間を切り取ったらなんか賞でも取るんじゃないかってほどには、綺麗だった。
「ところでキミ、名前は?」
「僕は、櫻川 綾人(さくらがわ あやと)だ」
「それじゃあ綾人くんだね」
「初っ端から名前呼びかよ、、」
「ところでキミは?」
「そのさ初対面の人にキミってどうなの?」
「いやだって名前、」
「私は、清水 咲希(しみず さき)よろしくね」
「よろしく清水さん」
「ちゃんと名前で呼んで綾人。恥ずかしがらずにさ、ね?」
「咲希、さん」
「いいよ呼び捨てで、咲希で」
「ほら踏切上がったし行こ、しっかり遅刻だけど」
そして僕たち2人は諦めて歩いて学校に向かった。
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