正蔵のいいわけ【後編】

 正蔵は二人の美女に挟まれ歩いている。二人共、正蔵の腕に胸をくっつけており、耳元で何かささやいていた。


「これは効くぞ。おっぱい+耳元攻撃だ」

「正蔵さま。もしかして、もっこりしてませんか? してたんでしょ?」


 しかし正蔵は黙っている。彼がもっこりしていたかどうかはこの映像では判別できなかった。


 そして、夏目雅子似の美女と山口百恵似の美女と正蔵はとあるマンションへと入っていき、その最上階の部屋へと向かった。ドアを開いて出迎えたのは柴田理恵似の巨乳熟女だった。彼女は正蔵をぐぐぐっと抱きしめた後、室内へと案内した。再び映像が切り替わり、室内の監視カメラ映像となった。


「ところでララ様。この動画はどうされたのですか? 外はともかく、屋内の監視カメラ映像など入手不可能だと思いますが……」

「姉さまだ。何を企んでいるのかは知らないが、この動画で正蔵をとっちめてやれとな。昨夜、逃げられたのが相当腹立たしかったらしい」

「なるほど……法術ですね」

「そうだ。恐らく小型の盗撮ドローンを四次元化し、壁をすり抜けさせている。高等な術式だよ」

「これはまさか? 麻雀台」

「うむ。全自動で積んでくれるやつだ」


 部屋の中央には全自動の麻雀台があり、そこには老齢の男性が一人座っていた。彼がこの部屋の持ち主なのだろう。柴田理恵似の女性は奥様のようだ。彼は立ち上がって正蔵と握手を交わし正蔵を席へと案内した。そして、正蔵を連れて来た美女二名も席に着く。


「正蔵さま? 麻雀だったんですか? それならそうと言ってくれればいいのに」

「そうだな。大学生が麻雀をしても問題はない。賭け麻雀でなければだが」


 椿とララが助け舟を出した格好になるのだが、それでも正蔵は黙っている。完全黙秘を決め込んでいるようだ。


 老齢の男性と正蔵、そして美女二名で麻雀が始まった。奥様はおつまみや飲み物を用意しては皆に運んでいた。


 勝負がどうなっているのかはカメラ映像では判別できないが、一局が終わるごとに負けた者は衣類を脱いで勝った者へと渡していた。正蔵は夏目雅子似の美女からマフラーを受け取り、クンカクンカと匂いを嗅いでいた。


「正蔵さま。破廉恥です!」

「脱衣麻雀のリアル版か?」

「不潔です! 信じられません!!」

「このまま続けたのか? 衣類が無くなるとどうなる? どんなルールなんだ?」


 正蔵は黙ったままだ。そして動画は早送りで再生される。最初は正蔵が有利に戦い、夏目雅子似の美女のブラまで取っていた。そのブラを頭に被り意気揚々と麻雀牌を握る正蔵だったのだが、起死回生の一撃を喰らう。


 東南西北が三枚ずつ揃って白の単騎待ち。字一色ツーイーソウ大四喜ダイスーシイ四暗刻スーアンコウ。一生に一度見ることができるかどうかの五倍役満を正蔵が振り込んでいたのだ。


 衣類を全て剥ぎ取られた正蔵は、全裸のまま柴田理恵似の巨乳熟女に連れられ奥の寝室へと消えた。また、美女二名は老年の男性と連れ添い別の部屋へと消えた。


「なるほどな。負けた者は何をされても文句を言えないルール。正蔵。あの熟女は巨乳だったな。どうだ? 何発抜いてもらった? くくくっ」


 結末を知ったララは笑い転げているのだが、椿はというとあきれ顔で正蔵を見つめている。


「正蔵さま。何か言う事はありますか?」

「ありません。見たまんまです」


 やっと口を開いた正蔵だが、土下座して額を床に擦り付けていた。


「椿さん、ごめんなさい。麻雀の代打だと聞いていたんです。賭け麻雀じゃないって聞いていたんです。だけど、リアル脱衣麻雀だなんて知りませんでした。勝ったら好き勝手出来るルールも知りませんでした」

「正蔵さまは勝ってあの夏目雅子似の美女と思う存分エッチするつもりだったんでしょ。ブラジャーを被ってニヤニヤしてましたし」

「ごめんなさい。あそこまでいくと期待しちゃうんです。残りパンツ一枚になったから頑張ったんです」

「あべこべにやられちゃたんですね。あー最低です」

「反省してます」

「反省しても許しません。もう最悪。幻滅しました。巨乳熟女とイチャイチャしてればいいんです」

「ごめんなさい。許してください」


 正蔵の謝罪といいわけが執務室に空しく響く。その後、椿の機嫌が直るまで一ヶ月もかかったらしい。その間、何体もの未確認攻勢生物が出現したのだが、怒り狂う絶対防衛兵器の前にその全てが一瞬で木っ端微塵となった。


 結果として正蔵の「いいわけ」が地球を救ったのだ。


【おしまい】 





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萩市立地球防衛軍☆KAC2023その⑦【いいわけ編】 暗黒星雲 @darknebula

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