萩市立地球防衛軍☆KAC2023その⑦【いいわけ編】
暗黒星雲
正蔵のいいわけ【前編】
ここは萩市笠山の地下、地球防衛軍本部である。
ララの執務室の床で正座をしている若者は綾瀬正蔵。その眼前で仁王立ちし、正蔵を睨みつけている女児が二名。
一人は小学生体形で金髪ツインテのララ。もう一人は三歳児体形で黒髪おかっぱの椿だ。
「正蔵さま。昨夜は何処でお遊びになられたのかしら? お帰りの時間は午前九時でした」
「二十四時間招集に応ぜよとの約束を忘れたのか? 貴様は学生なので講義とゼミ関係では免除していたが……深夜は除外だ。どこに行っていたのか? さあ、洗いざらい白状しろ」
椿とララが正蔵を問い詰める。しかし、正蔵は固く口を結んでおり説明するような素振りを見せなかった。
「強情な奴だな。これを見ろ」
ララがリモコンを操作すると、壁に設置してある50インチのモニターが点灯した。そこには学園の制服であるブレザーを着ているミサキ総司令が映っていた。ミサキは豊かな胸元を揺らしながら話し始めた。
「正蔵君ですね。昨夜は一緒に合コンへ行きました。私と長門さんとビアンカさん、それに正蔵君の四名で出かけたの」
次に登場したのは金髪ロングヘアでスリム美女の長門だ。
「私、今夜こそ正蔵様を射止めてやろうと思って狙ってたの。ぐでんぐでんに酔わせて正気を失わせて、介抱するって感じでラブホに連れ込んで、気づいた時には素っ裸でベッドインしてた……みたいな作戦ね。正蔵様はミサキ司令の揺れる胸元が大好きだって事は知ってます。でも、時々は私の太ももに視線が釘付けになってることもあるの。でも、正蔵君は途中でいなくなった。随分探したんだけど見つからなかったわ」
長門の証言の後、当然の如くララと椿が正蔵を睨みつける。しかし、正蔵が口を開く気配はない。
「はいはーい! ビアンカちゃんですよ。合コンの途中で正ちゃんを連れだしたのはワタシ。私だってね、恋人募集中なんです。正ちゃんの目線がミサキ総司令の胸元とか長門さんの太ももに釘付けなのは知ってます。でもね、私だってスタイルは良い方なんだよ。だから、ワンチャンあるかもって思って合コン抜け出してゲーセンに行きました」
すかさず突っ込んだのはララと椿である。
「それは違うだろ」
「違います」
まあアレだ。恋愛成就の場としてはゲーセンは不適格だよな。
「私たちが向かったのは『Starship Breakers』よ。このお店はバーチャロンが置いてあるの。古いけどロボの格ゲーね。他にも古い格ゲーがあって、スト2とか初代バーチャとか初代鉄拳とかね 。でも、私がゲームに夢中になってたら正ちゃんいなくなっちゃった」
画面が切り替わり、次の証言者である黒猫が登場した。
「ああ、俺が焼き鳥屋に行こうとしてたら正蔵を見かけたぞ。ゲーセンがら飛び出て来た。セーラー服の最上が手を引いてたな」
正蔵をゲーセンから連れ出していたのは最上のようである。画面が切り替わり最上が証言を始めた。
「私は大学の先生に依頼されたのです。正蔵様を連れて来て欲しいと。そして迎えに来た女性二名に正蔵様を引き継いだのです」
続いて正蔵を迎えに来た美女二名の顔写真が映る。若き日の山口百恵似のショートヘアの美女と、若き日の夏目雅子似のロングヘアの美女だった。
「これは間違いなく美女だな」
「超綺麗な人です。正蔵さま。このお二人と何をしたのですか? まさか……モザイクを入れないと発禁になってしまうような事を?」
執拗に、椿の突っ込みを受けている正蔵なのだが、何故か必死に黙りこくっている。
「怪しいな」
「怪しいですね」
モニターの画像が切り替わった。今度は背広姿の中年の男性だった。
「私はマクロ経済学を専攻している
ララと椿は腕組みをしながらモニターを睨んでいる。
「この不良教授が正蔵の担当教官なのだな」
「そうみたいですね。自分の用事を学生に肩代わりさせるとか、ちょっと信じられません」
「正蔵、そろそろ吐いたらどうか? 証拠の証言がすべて出揃う前の方が好印象だと思うぞ」
「そうです。正蔵さまはいい加減に諦めてください」
ララと椿に催促されてもなお、正蔵は口を開かない。
再びモニター画面が切り替わった。今度は監視カメラの映像だった。
【続く】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます