第5話 暗黒物質
レオンが暗黒物質を発動すると、黒い粒子が集まり、服の形を成していく。
「へー、3Dプリンタみたいだね」
単純な刃や槍なら即座に生成が可能だが、クロエの体型に合わせてサイズや肌触りなどを微調整しているので、時間が掛かっていた。
数分後、レオンが暗黒物質で創り出したのは、黒いフード付きのパーカーだった。
「ほら、出来たぞ!」
黒いパーカーは柔らかく、伸縮性まで兼ね備えていた。
「凄い、クオリティ高!」
クロエは、尻尾をブンブンと振りながら、口元が緩んでいた。
早速着てみると、身長160cmのクロエには、オーバーサイズで、裾がミニスカートくらいの高さまである。
「似合う?」
クロエは、レオンに見せつける様にクルクルと回って見せた。
「うむ・・・悪く無い」
レオンは、少しだけ恥ずかしそうに目を逸らした。
「レオン様〜、出来れば、パンツと靴も欲しいんだけど・・・」
クロエは、上目遣いで猫撫で声を出して、レオンにおねだりする。
「全く、注文の多い従魔だな」
そう言いながらも、レオンは同じ様にホットパンツとブーツを作ってくれた。
ホットパンツは、ちゃんとお尻の位置に穴が空いており、尻尾が出せる様になっている親切設計だ。
ブーツもクロエの足のサイズにジャストフィットしており、完璧だった。
「ありがとうレオン様!」
クロエは、嬉しさの余り、レオンに思いっきり抱きついた。
(・・・いい香り)
レオンの何とも言えない良い香りに、クロエは心が落ち着く。
「全く、暑苦しいから離れろ」
レオンは、鬱陶しそうに言うが、満更でも無さそうに、尻尾をブンブンと振っていた。
「服があるって、サイコーね!やっと人間らしくなれた気がするわ!」
クロエは、すこぶる気分が良さそうに、ふんふーんと鼻歌を歌っていた。
狐色の尻尾は、フリフリと嬉しそうに振っている。
それを見ながら、レオンは理解できないと言わんばかりに首を横に振る。
「そんなに服を着る事が嬉しいのか?」
「当たり前でしょ!女の子に取ってオシャレは命の次に必要なものよ!それに、私が裸で歩いてたらただの変態か痴女よ!」
「ならば、俺様は変態なのか?」
「まあ、変態犬と言っても過言では無いわね」
クロエは、レオンに全身を舐められた事を思い出して、頬を赤く染める。
「言い忘れていたが、暗黒物質の服はいつでも消せるからな、街中で全裸の変態になりたくなかったら、口には気をつけろよ?」
「はい、すみませんでしたレオン様!」
クロエは即座にレオンに土下座して謝った。
「分かれば良い!俺様がクロエの飼い主である事を忘れるなよ?」
「はいはい、私はレオン様のペットですよーだ!だから、ちゃんと私の面倒も見て下さいね!」
(もう、この際、レオンに飼われて、私の世話を全部任せるってのも一つね!犬に養われてニート生活とか最強じゃない?)
クロエは、家でグータラして餌だけ貰って可愛がられる家猫を想像してニヤけた。
「働かざる従魔には、餌は抜きだからな!」
「えー!?愛玩動物の仕事は飼い主の側でゴロゴロしている事じゃん?」
レオンは、やれやれとため息を吐いて、カメレオンバジリスクの死体に近付いた。
「ふむ、コイツの死体は価値があるかも知れないな」
「確かに、テンプレなら魔物の死体とか魔石は高く売れたりするよね」
「ならば持って行くか、闇収納」
レオンがスキルを発動すると、カメレオンバジリスクの死体が闇の中に沈んでいき、亜空間に収納された。
「レオンって、いくつスキルを持っているの?」
(鑑定眼に暗黒物質と闇収納で既に3つだし、多くない?)
「さあな、数えるのも面倒だ」
「うわぁ・・・」
(あーあ、私もレオンみたいにスキルがあればチート無双が出来たのになぁ)
クロエは、レオンのチートぶりに嫉妬して頬を膨らませる。
「さて、時間を使い過ぎたな、そろそろ先に進むぞ!」
カメレオンバジリスクのせいで、2時間近くも足止めを食らってしまった。
今日中に森を抜けたいレオンは、再び歩き始めた。
転生したらウェアウルフだった件 @kamisama27
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