第6話 保育室
高嶋紀文は、照明交換工事の最終日に大越百貨店にきていた。
昨日のトラブルの事は、工事責任者に引き継ぎ済みで、「手間かけました、ありがとうございます」と労いの言葉をもらっていた。
高嶋は、蛍光ペンのセットを二つ昨日買った。
一つは、無くなってしまった自分の為で、もう一つは、約束どおり藍にプレゼントするためだった。
「しっかし、不思議なんだよな?立て続けにペンがなくなるのは」と、最後の一本の〝緑〟で、〝鉛筆回し〟をして待機時間を過ごしていた。
今日は、この工事の最終日であったので、帰りに保育室へ寄り、藍に蛍光ペンを渡すつもりでいた。
そんな、〝鉛筆回し〟を下手をして最後の〝緑〟を転がしてしまった。
転がった〝緑〟のペンは、廃品を入れるカゴの下に転がってしまった。
「あっ!しまった!でも、見たぞ!緑はそのカゴの下だ!これでなかったら、嘘だ!」そう言って、カゴを動かした。
そこには、
〝紫〟〝赤〟〝青〟〝黄〟〝緑〟の五本の蛍光ペンが転がっていた!
「嘘だろ⁈」と高嶋は、考えたがどう考えても説明がつかない!
大体、ホームに落とした〝青〟がここにあるのは、
明らかにおかしい。
高嶋は、そこに一枚の〝紙〟が落ちている事に気づく。
その紙を手にとり、広げるとそこには、5色で書かれた〝ママと娘が手を繋いでいる〟幼子が描いたであらう絵があった、
そこには、百貨店らしきビルも描かれてあった。
高嶋は、まさか、藍ちゃん?と今回の蛍光ペンがなくなり続けた、〝犯人〟が藍であるかと一瞬疑ったが説明がつかない事にすぐ気づいた。
高嶋は、戻ってきた、五本の蛍光ペンと、〝絵〟を
バックパックにしまい。
引き上げる準備をした。
「保育室であおいちゃんにきいてみよう」
そう言って、バックパックを背負い、保育室に向かうため、9階の店内を通過しようとした。
「なんだ⁈これは!」
店内は、いつもの5倍はいるお客さんで大賑わいであった!
「どうしたんだ、このお客さんの数は?」
高嶋は、盛況ぶりを不思議に思いながらも、従業員エレベーターで、いつも、鍵を返す防災センターに向かった。
防災センターに着き、警備の老人に、
「鍵、返却します‥あのう、最後に保育室にいきたいんですが?」と保育室の場所を聞いた。
老人は、「保育室?そんな場所、この百貨店にないぞ?」と不思議な顔をした。
「え⁈だって、あの、赤いパーカー着た〝あおい〟ちゃんて女の子知ってますよね⁈いつもチョロチョロしてる」
警備の老人は、「女の子⁈そんな小さな子が、うろうろする訳ないだろう!アンタ、夢でも見たのと違うか?‥あっ!そりゃアンタ、
「そんな!」
高嶋は、しばし立ち尽くした。
高嶋紀文は、東京駅に向かう地下街を歩いていた。
「座敷童か‥」
高嶋の横を一陣の風が吹き抜けた。
不可思議な百貨店 霞 芯 @shinichi-23
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