blow the whistle ー口笛ー
マコンデ中佐
第1話 blow the whistle
――――――♪
――――――――♪
「スパイン−1。口笛を止めなさい」
「数分後にはお
「無駄口を叩くな。レンジ内に
暗闇の中にモニターが点ると、表示されるレーダー画面には五つの機影がある。高速でこちらへ接近するそれは、数分後にはこちらをミサイルの射程に収めるだろう。
「こっちはずっと
「無駄口はいい。復唱を」
「フッ……スパイン−1了解。これでいいんだろ」
オペレーターが肩を
低く唸るコンプレッサーがエンジン内の圧力を高めていくのを感じながら、フラップやラダーの稼働を確認した。
今日も俺の
トレーの移動が停止して、エレベーターが上昇を始める。
流れるような
「スパイン−1。テイクオフ」
XFA−27。試作戦闘攻撃機「
文字通り弾かれたように加速し、ショックコーンを置き去りにして音速の五倍の速度に達する。
「スパイン−1
機首のレーダーを照射すると、敵機を示す五つの三角形がターゲットコンテナに囲まれる。
「スパイン−1。
同時に十二の目標を追尾できるゲイ・ボルグ空対空ミサイルが、白い尾を引きながら飛翔していく。
一拍遅れてミサイルを発射した敵編隊が回避行動に移るが、俺はそんなトロい真似はしない。加速してミサイルの隙間を縫うようにすり抜け、大きく旋回してゲイ・ボルグから逃げる敵機の背後を取った。
三つの爆発が空中に花を咲かせた。残った二機はそのまま撤退するようだが、そうは問屋が卸さない。
「
まずは一機を短距離
残る一機の
二〇ミリバルカンが軽快なモーター音を響かせ、高速回転する銃身から通常弾と徹甲弾のミックスを吐き出した。曳光弾が描き出す曲線が敵機に吸い込まれ、残弾カウンターが二割減る頃には、敵は蜂の巣になっている。
「フッ……手応えの無い野郎だ」
人工知能には意地も根性もない。そして何より
「スパイン−1、ミッションコンプリート。RTB」
欠伸が出るのを堪えながら、俺は母艦へ機首を向けた。
「ねえ主任。こんな事、もう止めませんか」
喋っているのは俺の専属整備員だ。愚痴っぽいのが玉に瑕だが、ポニーテールとソバカスがチャームポイントのかわい子ちゃんだ。
彼女は台車を押しながら、隣を歩く上官に不満気な顔を向けている。
「仕方ないだろう。上層部からの通達だし、実際にコイツはウチのエース様だ」
「だからって……」
顔をしかめた彼女は、台車の上の《俺》を見る。
「戦闘機の人工知能にネットフリックスを接続するのは良くないですよ!」
「フッ……可愛い顔が台無しだぜ。ベイビー」
「くだらない『キャラ』の演算にリソースを食われて、熱暴走寸前じゃないですか」
「フッ……俺に触ると、火傷するぜ」
「もうヤダァー。うるさい!」
台車に乗せて運ばれる、俺のファンはフル回転している。
「前回のエディー・マーフィーみたいのよりは良いだろう?」
主任が肩を竦めると、彼女は深い溜め息をついた。
blow the whistle ー口笛ー マコンデ中佐 @Nichol
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