トラック転生した話

Tempp @ぷかぷか

第1話

 気が付いたら異世界に転生していた。

 そして俺は馬車になっていた。

 これも何かの運命に違いない。


 馬車というのも妙なものだ。俺の魂は一体どこにあるのだろう。

 心臓も脳もなにもなく、木の板に鉄のくぎ、鉄の車輪に皮の幌。

 ぐるぐると車輪を忙しく回すところはなんだか懐かしい。

 自動車であればエンジンとかが心臓っぽい気がするんだけど、馬車だとどうなのかな。自立して動けないから足は馬の向くまま。ゴロゴロと舗装されていない道を動く。

 空にぷかぷか雲が浮いている。


 俺の馬車の中には3人のパーティが乗り込んでいる。

 勇者・僧侶・魔法使い。

 その3人とも転生者だ。

 今は自分が死んだ時のことの話をしている。


「俺さ、トラックに轢かれて気が付いたらこっちの世界にいたんだ。ちょっとテンプレすぎるよね」

「私も。大きなトラックが突っ込んできた」

「自分もトラックでした。しかもなんか派手なデコトラ。上に黄色いトサカみたいなのがついて光ってた」

「えっまじで? 俺もデコトラ。正面に大漁旗みたいなでかい鯛の絵があって電球みたいなのがフレームに大量についてて」

「えっ私もそれ。じゃあ2人ともあそこにいたの!?」

 3人は顔を見合わせる。

「そうか……あのトラック、繁華街に突っ込んできたんだもんな」

「あの時トラックに轢かれて死んだ人がこの世界に転生したってことなのかな」

「なんだか不思議な話だね。俺らはこの世界でも生まれたところは違うけど、転生者同士の魂が引き合って出会えたのかもしれないな」

「そうね。そう考えるとすこし運命的。ドキドキする」

「せっかく会えたんだし、こちらの世界では仲良くしようか」


 そんな話を聞きながら俺はもの凄く申し訳なくなる。

 なんか、申し訳ない。本当に申し訳ない。心が痛い。

 あそこで死んだのはもう1人いた。それは俺だ。

 俺はその暴走トラックの魂だ。運転していたのは乗ってた酔っ払いとはいえ、本当に申し訳ない。俺は3人を轢いたあとに建物にぶつかって大破してエンジンが再起不能になった。そして何の因果か馬車に転生した。3人に何か報いることは俺にできるだろうか。

 せめて少しでも3人のために今世で役に立つことを願っている。

 俺はゴロゴロと車輪を動かした。

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